『盗まれた家族、断ち切れない絆』

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日本人の友達に薦められて、『万引き家族』という映画を観た。最初にその題名を聞いたとき、何となく冒険的なアクション映画だと思ってしまったが、実際はそうではなかった。『万引き家族』は是枝裕和監督による劇映画で、様々な原因によって社会から孤立した血縁のない6人が家族になったことを物語った作品である。この映画には波瀾に富んだストーリーや迫力のある場面はなく、ただ一つ一つの心温まるシーンを通して、家族の絆とはいったい何なのかと観客に考えさせる。 

映画の最初は社会の底辺で暮らす柴田家の日常を描いているが、ストーリーの展開に伴い、柴田夫婦は警察に連行され、この家族の本体も明らかになった。家族6人には実は血縁関係がない。それに、皆傷つけられた過去を背負いながら、今を生きている。祖母・初枝は浮気した元夫と離婚して独居老人になった。母・信代は元夫に暴力を振るわれて、治と誤って元夫を殺した。父・治は信代を庇うために、罪を一人で背負って逮捕された。治の妹・亜紀は家出して初枝に引き取られた。息子・祥太は幼い頃親から車に捨てられて、治に救われた。そして、娘・じゅりは母に虐待され、信代に守られてこの家族の新しい一員になった。信代とじゅりがお風呂に入るシーンは最も感動的だと思う。同じく虐待された経験を持つ二人が相手の傷跡を見て、微笑みながらそれを撫でる。傷だらけの人々でありながら、癒し合いかけがえのない家族となった。法律的にはこの家族は盗まれたものだと言えるが、彼らの間にある感情は決して嘘ではない。 

夏を迎え、家族6人が海辺に出かけるシーンも印象的である。これはこの家族の最も幸せな時だと思う。その後に変化が生じた。初枝は亡くなり、信代は逮捕され、祥太とじゅりは実家に返された。盗まれた家族はとうとう破滅した。これまでの思いはまるで夏の花火のような幻で、短い存在だった。しかし、すべて消えてしまったのだろうか? 私はそう思わない。この家族はすでに彼らの心に刻まれ、一瞬だった幸せも、永遠の絆となったのだ。 

一昨年の秋、私は仕事で日本に出張した。冬になって、中国で新型コロナウイルスが感染爆発し、国内外はパニック状態に陥った。心配しつつ、周りの中国人社員や留学生たちと支援活動を行おうとした時、「私にも参加させてください。できることがあったら、ぜひ!」と日本人の友達が言ってくれた。すると、周りの日本人学生や社会人もどんどん支援活動に参加してきた。私たちは一緒にマスクや消毒液などの防疫物資を集め、中国に届けられるようにいろいろ努力した。その時、家族の意味をより深く理解した。たとえ国籍が違っても、一緒に支え合いながら闇を乗り越え絆があるこそ、家族になることができるのである。     

 
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