広い世界へ

  南京信息工程大学 朱偉俊 

  

「彼」は狭い部屋に閉じこもっていた。 

意識が彷徨っていた。 

次に浮かんだの「彼」がキャンパスで忙しく走り回ている姿だった。彼は授業が終わると、部活へ駆けつけた。寮に帰って、ルームメートと遊んだ。すべてが順調に進んでいるようだった。しかし、だんだんと自分の専門の味気なさ、部活のつまらなさ、ルームメートとの生活の疲れを実感していた。三年前、彼はその大学を中途退学した。 

二年前、の姿は別の大学に現れた。彼は興味のある専攻を勉強いた。部活に参加していなくて、キャンパスの外で一人暮らしている。部屋で、今まで興味があっても行動に移せなかったことを試して、内なる世界を広げていく。学校の授業以外での人とのコミュニケーションは少ないが、このような生き方を楽しんでいる。いつの間にか、彼は自分を包んでいた静寂な世界に、恐怖を感じた。そして、自分がした選択に疑問を持ち始めた。そして目の前のことに興味を失い、狭い部屋に閉じこもって何もしない日々を送るようになった。 

はぼくだ。 

当時、たまたま『四畳半神話大系』というアニメを見つけた。主人公はバラ色のキャンパスライフを送りたいと願う大学三年生で、異なるパラレルワールドで異なる選択をする。物語では様々な選択肢の可能性が示されているが、そのどれもが主人公にとって、満足できない。主人公は四畳半の部屋に籠もって暮らすことを選択するが、四畳半が続くパラレルワールド空間に閉じ込められてしまう 

『四畳半神話大系』の原作小説では、「我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々もつ不可能性である」と語っている。パラレルワールドの主人公たちは、いつも「もし他の選択肢を選んでいれば、私は全く別の二年間送っていただろう」と嘆く。主人公は、現状に対する不満の解決策を、すでに過去の選択に求める。すでにした選択を変えるのは不可能だ。 

四畳半は、主人公が生きている世界の象徴だ。同時に、四角く凝り固まった考え方だ。主人公はある四畳半の部屋から出て、また別の同じような部屋に入る。主人公は「あの時こうしていれば」という無益な考えに囚われて、同じことを繰り返す。結局、主人公が過去の選択にこだわるべきではないことを悟って、無数の四畳半の部屋から脱出して終わる。 

私も自分の「四畳半」の部屋に閉じ込められていて、同じような考え方に囚われていることに気づいた。三年前、私は大学生活に飽き足らず中退した。今の大学で人とコミュニケーションを欠くため、不満に思って、この選択に疑問を持ち始めた。しかし、大学生活を無限に選び直すことはできない。取り返しのつかない過去のことに囚われず、自分が影響を与られる現在や未来のことを考えるほうが生産的だ。私も「四畳半」の部屋から出て、人とつながりたいという気持ちに向き合うべきだろう。 

今、小さな部屋にいる。 

同時に広い世界にいる。 

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