孤独ではないグルメ

詹鑫  大連外国語大学

 

  ある日、「NHKスペシャル無縁社会-新たなつながりを求めて」というドキュメンタリーが、私の目を引いた。「無縁とはなんだろうか」と思いながら、そのドキュメンタリーを見ることにした。

 「極当たり前の人生を送ってきた人達が、一人孤独に亡くなっていく姿を描いた-無縁社会」というナレーションと音楽で始まる。画面には主人公たちの姿が映る。両親に死なれ、一人ぼっちの吉澤さんは、NHK放送センターに遺書を送った。同じマンションに住んでいた女性が誰にも気づかれずに亡くなった。自分も彼女のように独りで死んでいくではないかと考え、彼は自分が生きた証しとして遺書を綴ったのだ。番組が連絡を取り、相談に乗った後、吉澤さんは社会とのつながりを見つけようとする。彼はコンミュニティの掃除をしたり、近くの小学校の子供達にプレゼントをあげたりする。そんなある日、吉澤さんの手に子供から感謝の手紙が届いた。「この手紙を見て、本当に一人じゃないなって思いましたね」と吉澤さんが言った 

  ドキュメンタリーを見るうちに、私はなんだか暗い気持ちになった。死別、離婚やリストラなどで社会から切り離されるなんて、あまりにも辛いと思う。家族や友達に支えられて生活している私は、無縁社会の中で生きていることを実感することはできなかった。しかし、だからいって自分と無縁社会は全く関係ないとも思えない。主人公たちもかつて様々な繋がりを持って生きていたが、意外なことに遭い、無縁になってしまったのだ。何かをきっかけにして誰でも無縁の状況に陥る可能性があると強く感じた。私は周りの人との絆をもっと大切にしたいと思った。

  ドキュメンタリーの終わりに、「人と人が生きていくのは頼って頼られて、それでいいじゃないか」と、取材班の人が言った。抑圧的な映像の最後、この一言の優しさに感動し、何だか救われたと思った。確かに、無縁社会を有縁社会に戻すことは難しい。だが、NHKの取材班、各地のNPOの関係者のように、状況の改善のために努力している人も多くいる。その人たちの姿を見て、ほんの少し手を伸ばすことできっと何かを変えられるかもしれないので、私も自分で何かがしたいと思った。

  今、日本では未婚率離婚率の向上に加え、少子高齢化も進んで、無縁社会が拡大しつつある。内閣府によると、2017年、他人との絆がなく引きこもった人の人数は54万を超えたという。一方、2017年タオバオが発表した調査によると、中国では異郷で一人暮らしの若者が5000万人に達した。これから中国は無縁社会の道に踏み込むことになるのではないかと心配になる。我々はこの問題に無関心なら、将来さらに孤立した無縁社会を作り出してしまうかもしれない。どうやって無縁社会に歯止めをかけるのか、中日のすべての人が考えなければならないことだと思う。

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