日本人の「小さな美」

汪冰慧 大連外国語大学

 

日本人が描いたカルチャーショックを題材にした「亮仔在中国」という漫画を読んだことがある。中国で暮らす日本人が大家さんにお土産としてプレゼントが入った小さな袋を送った。日本人の考えでは大きすぎなくて相手に迷惑をかけない適切なプレゼントだが、中国人の大家さんから見ると粗末にされている感じがしたというカルチャーショックを描いた漫画である。

日本と中国の文化は源は同じだが、それぞれ独自の発展をしてきたとよく言われる。「百聞は一見に如かず」という諺があるが、私は自分自身で日本文化を体験したいと思って日本に行った。

確かに日本人は小さなものが好きなような気がする。

ご飯を食べるとき、日本の箸は中国で使われる箸と比べ、先が細いことに気づいた。箸の太さは同じだが、先端が細すぎて私は使いこなせなかった。先を細くすれば、魚の骨などの小さなものが挟みやすいからかもしれない。本屋に並んだ小説などの本も、中国の規格と違い、半分ぐらいの大きさしかない。軽くて携帯しやすくなって、中国にもこのサイズの本を導入すれば通学などの荷物も軽くなると思った。

中国では大きければ大きいほどよいという観念が多くの人の心の中にある。大きな屋敷に住みたいし、携帯のスクリーンも大きいほうがよい。なぜならば、中国は「大」という言葉は「強い」ことを意味し、誇りを表す。「大唐」「大宋」などの王朝名からもそれがわかる。それに対して、「小」は時々「弱い」という意味になり、「小店」「小女」など謙譲語として自分に関係ある物事によく使われる。

日本の「小さな美」 という美意識はどのように発展してきたのかちょっと考えてみた。

この美意識は地理と関係があると思う。日本は小さな島国なので、資源も有限だ。そのために、資源を無駄にしないように心掛けて、少しずつ使えるものや繊細な物が好きになったのだろう。近代に入って経済が発展すると、都市の人々は生活する範囲が限定され、日常生活に使う道具もそれに応じて小さいものになったのだろう。

一方、日本人が自然に親しんで、常に細かい点を気にする特徴はよく知られている。「古池や 蛙飛び込む 水の音」というのは、中国人にとってくだらない景色だが、日本人はその美しさを捕らえて記録したのだ。よく細かい点に美しさを発見し、注目するのは「小さな美」を好むからなのだろう。

「大きいものが好き」でも、「小さいものが好き」でも、違った風土で育った結果である。同じ源から発展した文化にも独自の特色があるのは当然だ。確かに好むことの違いによってカルチャーショックがよく起きるが、もし日中両国がそれぞれの特徴を認めれば、お互いに交流しやすくなるのではないだろうか。

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