日本の格差社会における絆

李若蘭 四川軽化工大学

 

  家族とは一体何なのか。

多くの人間は、血縁とは絆として人々をひとつのまとまりに形成したものだと考えている。確かに血緣は大切だという考えには欠点がない。だが、「万引き家族」という映画には、血の繋がり以外にも絆はあり得るというセリフがある。その絆とはいったいどういうものか。

映画の舞台は今にも崩れそうな平屋で、お祖母さんの柴田初枝、夫婦の治と信代、長女の亜紀、長男の祥太、次女のリンの6人が転がり込んで暮らしている。みんな一緒に囲んで座ってラーメンを食べるシーンを観ると、彼ら家族には血緣関係があると誰もが信じて疑わなかったが、実はもともと、血のつながりがないのだ。

 彼らはそれぞれもともとは全く違う家族で、「万引き家族」としてそれぞれの役を演じていた。一家は主に祖母のわずか月6万円の年金に頼って生活している。だから、足りない食料や生活用品は万引きするしかなかった。しかし結局、「万引き家族」はバラバラになってしまった。また、映画の登場人物の中には、この家庭の問題を指摘したり不満を示した人も多かった。しかし、彼らのもともとの家族は、万引き家族よりもいいものだっただろうか。祥太を車に閉じ込め、もう少しで窒息死させるところだった両親、リンに虐待を与えた両親、娘を大切にしなかった亜紀の両親、彼らは血緣上は家族だが、義務と責任の面から見ると、かつてあった家族の絆を失っており、家族とは既に名ばかりで実質がない。

社会格差の拡大は、家族のあり方にも影響を及ぼす。日本の社会では下層階級はもう900万人に達した。特に今年は、新型コロナウィルスの影響で、格差拡大が加速するという問題も深刻になってきた。社会の下層に位置している労働者階級の生活が最低限に満たされなかったら、人間関係に衝突が頻繁に起きたり、犯罪が増加したり、精神的ストレスが高まって健康状態が悪化したりするおそれもある。それが現実になり、格差社会が生じてきた。この映画には冒頭からいろいろな社会問題が次々と描かれている。例えば、DV、児童虐待、貧富格差、独居老人などの問題が深く掲げられた。様々な理由で彼らは実家から逃げ出し、もう一度新たな家族を作った。すなわち「万引き家族」は格差社会の産物だといえるだろう。

とはいえ、彼らは乏しい家計で共に暮らしていたにも関わらず、笑って過ごしていた。とても印象的なシーンは、浜辺で皆が遊ぶ楽しそうな姿を見ながら、おばあさんが「ありがとう」と言ってほほ笑んだシーンだ。このシーンは日本の格差社会における「絆」は一緒に過ごす時間から感じる愛だと私たちに伝える。この家族は、最終的に離れ離れになったものの、その絆はすでに彼らの心に深く根付いていた、私は信じている。

社会が進歩する反面、格差はますます拡大してきた。しかし、愛による絆が生まれたら、たとえ生活が貧しくても、生きる勇気を持つことができると思う。そして、このような絆の力を真に理解してもらえるように、互いに理解しあって愛の種を蒔こうとすることが大切なのだ。

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