水中の月、鏡の中の情

張紅雪 南京工業大学

 

 「鏡花水月」は中国人によく知られている成語だ。詩の中ではつかみどころのない空霊の境界を指すだけでなく、しばしば幻の鏡像として用いられる。「水月」は中国の伝統的な文化色彩に満ちたテーマだが、川端康成にタイトルとして使われ、東方文化の情緒に満ちた日本小説が残された。

  その小説は、京子と病気で療養していた元夫の家庭生活を描いている。そこで、夫が部屋のベッドに横になって、手鏡をもって遠くの山、浮雲、すずめ、庭で一生懸命働いていた妻を見ていた。京子さんも夫が手鏡で自分を見ていることに気づいた。彼女は未来に希望を持っていた。残念なことに、京子さんの夫は病魔の手の平から逃げられなかった。彼女も家族に迫られて仕方なく再婚した。  

  京子さんの二つ目の結婚は前回の「精神恋愛」と違って、物質と欲望に満ちていた。京子さんが妊娠した時、異常な恐怖を感じた。元夫とずっと住んでいた小屋に戻るまで、彼女の気持ちはやっと少しずつよくなった。来る途中、彼女は吐き気がして、めまいがして、自殺したいと思っていたが、慣れた土地に触れると、まるで悪魔を追い払って蘇ってきたかのように、全身がすっきりした。それは自然の力で、彼女の心の中のすべての曇りを洗い流した。

「水月」は川端康成が繊細な筆致で描かれた愛情体悟りと思索に関する小説だ。全体の小説は東方色に満ちていて、タイトルから内包まですべて東方芸術情緒を表している。中国の読者として、読んでみるととてもすっきりしている。

また、小説は優雅で純粋な日本風の憂え悲しむ雰囲気に浸る。しかし、中国の古代に提唱された貞潔を守るための保守的なタイプとは違って、京子の社会的家庭環境は京子に結婚を強く求めている。当時創作した社会背景を結び付けると、戦争を経験したばかりの日本は、外国資本が狂って日本市場に流入し、自国市場に衝撃を与えている同時に日本人民が長年守り続けてきた伝統を次々に押し流されて、多くの人が名利を追い求めた。

  実はこの問題は今の社会に依然として存在している。川端康成は文章の中で実は私達に解答をあげた。小説の中の菜園は自然の力の象徴であり、京子も一度にとどまらず菜園から生きていく原動力を得ている。もちろん、自然の中から力を吸い上げるのは簡単に農耕生活に戻るのではなく、自然に親しむこと、自然と調和して共存することのではないか。これは当時においては非常に先進的な観点だと言える。この観点の一番早い体現は古代中国の天人合一思想であり、このような巧みな無謀さこそ中日両国の長年にわたる文化交流の結果である。

  似ている文化伝統に基づいて、中日は更に手を携えて共に進むべきで、新しい時代にこれらの共通の理念について力を合わせて協力する。共通の目標を見つけてこそ、より純粋な未来がある。その時、中日の友情と発展は小説の中で書いた「鏡花水月」ではなくて、真の明るい未来になれると思われる。
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