欠かせない自分の考え

李聡  大連外国語大学

 

"Let's think."

 これはドラマ『3年A組』の一つのセリフです。それを聞いて、私は深く考え込んでいました。

卒業式の前日、柊一颯先生は生徒の澪奈が自殺した原因を調べるために、クラス全員を人質にして、ネットで生放送しました。澪奈は優秀な水泳選手でしたが、SNSでドーピングをしたという動画が曝されてから、ネット上でも罵詈雑言や中傷が絶えず、真実を知らなかったクラスメートに孤立させられました。このような暴力は高校生にとって身体上の傷害にも劣らないほどつらいものです。柊一颯先生は極端な方法を選んでいましたが、人質になった学生たちとネットユーザーに教訓を与えていました。スクリーンの前でそれを見ていた私も強くショックを受けました。このドラマはネット暴力を生き生きと表してくれました。これはインターネットが発展してきた今では、人々が最も注目している話題の一つでもあります。              

我々人間は何か道徳に反することを見たら、ほぼすぐに反射的に非難します。しかし、その目で見たことが本当に事実なのか?澪奈は本当にドーピングをしていたのか?誰にも胸を張って断言する権利はありません。本人にしか発言権はないのです。

『オックスフォード辞典』によって2016年度のその年を最もよく表す言葉として"post truth"という言葉が選ばれました。"post truth"とは「客観的事実を述べるよりも感情と個人の信仰に訴える方が民意に影響を与える状況」という意味で、事実はもう前ほど重要ではなくなっています。私達はいわゆる「事実」に基づいて善悪を判断しているわけではありません。「真実がまだ靴を履いている間に、うそはもう市内を駆け巡った」というチャーチルの名言があるようです。今のような情報社会では、ネットを通してなんでも手に入れることができます。文字も絵も短い動画もなんでもあります。しかし、それは必ずしも真実を表してくれるものではないのです。

私が言ったその言葉で、言われた人がどれだけ傷ついたのか、自分ではわかりません。さらに、自分が言ってしまった言葉が自分の本心ではないこともあります。我々はただ多数派の視点から、自分で何も考えずに勝手にこんなにも人を傷つける言葉を言ってしまいます。ですから日常生活でもネットでも、もっと自分で考えれば、世の中で澪奈のような悲劇はなくなると信じています。

「うわべだけで物事を見るな、本質から目を背けるな、よく考えるんだよ!」と柊先生が言ったように、ネット生活の中でどんなことに出会ったとしても、よく自分で考えて、自分の見解を持たねばならず、人の話を受け売りしてはなりません、人の心を傷つける「ナイフ」を突き刺してはいけません。"post truth"の世界にならないために、ネット暴力をなくすために"Let's think."

 

 
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