日日是好日:典子から学んだこと

謝家歓  南京工業大学浦江学院

 

 今年の夏休みに、郷里の寧波で日本映画「日々是好日」(監督:大森立嗣)を鑑賞した。コロナ禍が漸く落ち着いた穏やかな日だった。

寧波は東中国海に面した浙江省にある。秦の始皇帝の時代に徐福が日本へ船出した「徐福伝説」が残る親日的な街である。

映画の前半は茶道の話題が中心で、リラックスした雰囲気だった。

しかし、ストーリーの展開に従って、私はヒロイン典子の心の動きが気になり出した。典子は不器用なごく普通の東京の女子大生で、卒業後の進路に迷っている。

ある日典子は、母と従妹・美智子の勧めで茶道を習うことになった。習い始めたころ、典子は儀礼的な作法が多くて煩わしいと思った。

そして就職面接の失敗、10年間交際した彼との別れ、父の急逝などと、相次ぐ不幸に見舞われた。

その典子を支えたのは、実は茶道だった。茶室の壁に吊るされている額縁の「日日是好日」という五文字を自然に親しみ、理解できる心境に変化して行く。

一方、美智子は典子と対象的である。活発な性格で行動力があり、優秀な日本女性の典型である。大学入学のために田舎から上京した。卒業後は東京の生活をやめて帰郷し、結婚を考えている。自分の将来に若者らしい目標を持って生きる活動的な女性である。

私は大学三年生である。卒業後の進路が定まらずに悩んでいる。活動的な美智子の性格が羨ましいと思った。私のクラスメイトたちも、美智子のように目標に向って頑張っている。私はどうしたらいいのだろうか。

典子や美智子を私と比べてみると、私は典子に似ている。行動力がなくて不器用で、何をやってもなかなか捗らない。典子と瓜二つと感じた私は、典子が就職面接に失敗したことに同情し、茶道の練習で後輩に追い越されたことを悲しんだ。典子に対する同情というより、自分自身のことのように心が痛んだのである。

生活に挫折し、同じことを何度繰り返しても失敗する。どんなに頑張っても友人に追いつかない。自分の気持ちが落ち込んだときは、何をしても上手く行かないものだと、いつも悩んでいた。

そんな私に、この映画はヒントを与えてくれた。

『雨の日は雨を聴く。雪の日は雪を見て、夏には夏の暑さを、冬は身の切れるような寒さを。』この台詞が私の心に響いた。

何度も失敗し、進歩がない私だが、「今を楽しみ、あるがままの春夏秋冬に真正面から向き合おう!」と教えてくれた。

私たちが世界を変えることはできないだろう。しかし、私たちが大きな心を持てば、変わるのは世界であり、変わらないのは心である。そして「好い日」を迎えることができるのである。

このような思想は、日本の茶道の世界だけではないと思う。私達の人生にも普遍的に存在しているはずである。

自分の将来に悩むことは、もう止めよう。

大切なことは、前を向いて、日々を乗り越えて生きることだ。

そうすれば、必ず明るい「明日」が来る。

「日日是好日」なのである。

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