知られていない「世界」

孫盛梅 延辺大学

 

 世の中にはみんながよく知っている世界もあれば、あまり知られていない世界もある。「桃太郎」の昔話は日本人なら知らない人はいないと思う。「桃太郎は侵略の物語である」と日本人の多くは言っているがしかし、多くの人に知られていない温かい「桃太郎」の話もある。大学の授業で、五味太郎の「ももたろう」を読んだのがきっかけで、今まで知らなかった新しい桃太郎と出会うことができた。

 私が読んだ「ももたろう」はオリジナルの昔話とは少し違うエンディングだった。ももたろうは宝物を盗んだ鬼を退治に行くが、鬼を倒して宝物を持って村に戻ったのではなく、鬼たちと仲良くなって、鬼と一緒に村に戻る。五味太郎の「ももたろう」は鬼と仲良くなるハッピーエンドである。

  その村はいまも大賑わいの村であると言われている。 

多くの人は、鬼は宝物を盗んだので「鬼は悪い」という先入観を持っている。従って桃太郎たちが鬼を倒すことがハッピーエンドだと思いがちである。しかし、鬼と仲良くなって一緒に幸せに過ごすことも一つのハッピーエンドではないかと思う。オリジナルストーリーを被って、鬼と仲良くなる作者の発想力は素晴らしいと思う。五味太郎の「ももたろう」は、鬼と「桃太郎」へのイメージが変わるきっかけとなり、固定観念を捨ててものを考える道理を教えてくれた。

 人々は自分が見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞いたりする。常にある人、あるものに対して固定観念や偏見を持っているのではないか。大学の専攻を選ぶ時も周りの人から日本語は発展スペースが狭いので「日本語はだめ」と言われた。これも一種の日本語に対する偏見ではないか。言語は学ぶ人によるもので、日本語だといって発展スペースが狭いとは言えない。日本語に限らず、昔の歴史的な問題で日本という国、日本人という人に偏見を持っている中国人は少なくない。しかし実際会ってお話したら分かる。日本(人)は情熱的で、差別なく優しくしてくれる。短い期間ではあるが、私は交換留学を通して、心の中からその温かさを感じた。学校はコロナの影響で家計が厳しい留学生を対象に特別支援金を給付したり、寮費も免除してくれた。また市民たちは私たちにお米やおにぎりなどの食べ物もくださった。何か苦境に遭ったら心から解決策を考えてくれるのが全部感じられる。

 私がこの目で見て心から感じた日本の温かさを今まで日本のことに偏見を持っている中国人にも分かってもらいたい。また、私ももっと日本語の勉強を頑張って日本語で成功する姿をこの世に見せたい。中日は重要な近隣国で、交流や協力を強め、より仲良くなることを願っている。

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