生活の味わい

張荊晶 河北大学

 

最近、ある物語に感動された。この物語に出てくる主人公マイが学校の生活がうまく行かなくて、両親に勧められ、田舎に暮らしているおばあちゃんの元へ行って、自然の中で一ヶ月ぐらい過ごしていた。マイは生活を愛するおばあちゃんのおかげで、本当の自分を見つけ、また元気になって元の世界に戻ったが、もう二度とおばあちゃんに会えないことを知らなかったマイは、帰った前におばあちゃんと口げんかをして、最後の最後までおばあちゃんに「ごめんなさい」も言えなく、心にしこりが残っていたまま、二年後のある日、ついに、かけがえのないおばあちゃんを失ってしまった。

これはクリスマスの時、プレゼントとして友達からもらった『西の魔女が死んだ』という小説の内容であった。この本を初めて広げた時、自然を愛し、自然に囲まれていたおばあちゃんの姿が、私の心に焼きついていた。また、思春期の女の子の特有な繊細な雰囲気を持つマイとの出会いは、まるで昔の自分に巡り会ったような懐かしさがこみあげながら、すっかり読みふけってしまった。おばあちゃんがマイに施した魔法は、特別なものではなく、人間が長い間、自然からの教わりを受け継いできた知恵や心から生活を愛する魂というものに他ならない。この小説の中の手順どおり野イチゴジャムを作るシーンや洗ったシーツを咲き乱れたラベンダーの上に広げるシーンなどに、なにげなく、生活の息が感じられる。

「サボテンは水の中に生える必要がないし、蓮の花は空の中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、誰がシロクマを責めますか。」とおばあちゃんが言っていたように、自分が自分らしく自由に生きていることは何も悪くない。だから、今自分が置かれている場所に縛られるのではなく、もっと自由に生きていければいいのかもしれない。特に、生活のペースがどんどん速くなってしまっている今頃、速くなりすぎている足を止めて、周りの景色を見てみる余裕を持ってもらいたい。また、人間は生きてさえいれば、日々の生活の中で、常にどうにもならないことに縛られ、思い切って陶潜のように自然の懐に帰るわけにはいかないが、何かうまくいかないことに遭って、落ち込んだら、心を込めて生活のぬくもりを味わってもらいたい。

現在、東京大会が先延ばされ、世界中の人々は不安の中で日々を送っているが、そこまで神経を張りつめないなら、太陽のぬくもり、草木の気配、家族と共にいられる時間、たとえたまゆらでも幸せを感じることができるだろう。

 母からの電話を置いてから、部屋の窓をあけて、郷の方を見渡している。重く垂れこめた雲の層をようやく潜り抜けてくる日差しに草木が映え、目に染みるような草の海が風にうねっている。

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