周潔儀 嶺南師範学院
「私のところへ悩みの相談を持ち込んでくる方を迷子に喩えますと、多くの場合、地図は持っているが見ようとしない、或は自分のいる位置が分からない、という状態です」。これは、東野圭吾が書かれた『ナミヤ雑貨店の奇跡』の中に、最も深い印象を残された一言だ。
この話の始まりはこのようだ。幸平、翔太、敦也三人の男は盗んでいるところ、だしぬけに戻る主人を襲ってから、慌てて逃げる途中で見付けた古い雑貨店に身を隠すことにした。そして、この店で変なことにぶつかった―親の世代の手紙を受け取ることができた。
五つの手紙に五人のストーリーを描いた。まずは、寿命の長くない恋人のために夢を放棄しようかについて悩んでいる女のこと、次は、家業を継ごうかミュージシャンになる夢を追おうかについて悩んでいる男のことである。それに、所帯持ちの男との子どもを生むかどうかで悩んでいる貧乏な女のことである。第四は、破産した親たちと一緒に逃げるかどうかで悩んでいる中学生のことである。最後は、生活が立たない恩人に恩返しをするためにホステスになるかどうかについて悩んでいる若い女のことである。
この五人は進退両難の窮地に落ち、誰かに助けてくれてほしいので、何度もナミヤさんに手紙を書いた。返信を読んだ後、アドバイスをフォローした者もいるしない者もいた。実は、悩んで悩んでいたあと、結局、最初から彼たちも知らないうちに心底の思いをフォローしたのだ。だから、「迷子」は地図を持っているが見ようとしないというような人間を言った。
文章のもう一つの一言を引かれば、「多くの場合、相談者は答えを決めている。相談するのは、それが正しいってことを確認したいからだ。だから、相談者の中には、回答を読んでから、もう一度手紙を寄越すものもいる…」ということだ。
常に、誰もこういう経験もあるんだろう。ショッピングする時、どの商品を買おうかで彷徨う時、もしある人が「それはいい」と言うなら、それを買おうと決めるところが多い。これは、他人のアドバイスが自分と意気投合するのだ。
もし他人のアドバイスは自分の思いと違うと、やはり自分の思いに従うと決めている。例えば、大学院に進学しようか就職しようかと分からない時、「やめろう、さっさと就職しよう」と親が言うと、やはり自分がもっと進学したいと見つかった。
それなら、他人のアドバイスは役に立たないではないかと疑う人もいるだろう。
そうだと思わない。アドバイスは心中の火を燃やす助燃剤だと思う。つまり、このアドバイスは私たちの本心を見つけ、或は決心を固めることに役を立っている。
そのゆえに、「迷子」と出会ったら、惜しまないで誠にアドバイスを出してください。誰かを不幸にしたことを心配しないでください。彼たちの人生が左右できるのは彼たちの心の地図しかない。地図を持たば迷わず、誰かに励んでくれたいだけだ。