細部を重んじる心から考えたこと

丁智揚 上海甘泉外国語中学

 

日本語には「痒い所に手が届く」という慣用表現がありますが、日本に行くたびにこの言葉の意味を実感します。日本では駅や学校、そして公園に至るまで様々な場所で非常に細やかに利用者に配慮されたインフラが整備されており、人々の生活に便利さを提供しています。例えば、乗り降りの際に車高を上下させる機能を備えたバスが多く運行されています。これは、体の不自由な人やお年寄りでも楽に乗り降りできるように配慮されたものだそうです。私はいつもこの「細部を重んじる心」に感動しています。                       

しかし、このような細部へのこだわりは利用者にとっては大変有難いものですが、その一方で整備を行う側にとっては負担が大きく、なぜここまでしなければならないのかという疑問を抱くようになりました。そんな時、ある一冊の本に出会いました。『日本の細やかさ』(蒋豊『日本的细节』)という本です。「日本の細やかさ」とはお互いを尊重し、相手の立場に立って物事を考えるということです。これは日本文化に深く根付いてる心の真髄です。この本は私に日本の「細部を重んじる心」をどのように理解するかを教えてくれただけでなく、そこから何を学ぶべきかを考えるきっかけを与えてくれました。

近年、経済の発展に伴い、中国でもインフラ整備や公共サービスの水準が飛躍的に向上しています。しかしその一方で、人々のニーズにそぐわないインフラ整備が行われることもあります。なぜ中国のインフラは発展しているにもかかわらず、依然として人に対する配慮が足りないと感じることがあるのでしょうか。この原因の一つとして、「細部を重んじる心」が不足してることが挙げられると思います。中国が物心両面でより豊かな社会になるためには、この精神を大いに学ぶ必要があります。しかし、単純に形式的に真似るだけではこの精神を理解し自らのものとして消化吸収して行くことは難しいです。中国に「糟を取り除き、精華を取り入れる」という諺があるように、「細部を重んじる心」を中国の国情や、独自の文化、精神と融合していくことが重要であると考えます。

一衣帯水の隣国である中日両国はお互いの精華を謙虚に学び合い、その本質を理解し自分たちの文化に相応しい形で消化吸収していくことが必要です。その為には、中日両国のあらゆる面での文化交流が必要不可欠です。私も微力ながら力を尽くしていきたいと思います。

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