出会いは奇跡

陳瑶 煙台大学

 

 

昨年末、日本の大物歌手MISIAさんが中国の大人気番組「私は歌手」に参加した。彼女の素晴らしい歌声に、私は涙が出るほど感動した。もう少し早く出会っていたならと悔やみつつも、さらに調べてみると、そのうち、彼女の素晴らしい人格にもっと魅了されてしまった。それを教えてくれたのがドキュメンタリー番組「MISIA Return to Nairobi 10年の奇跡~」だった。

  MISIAさんが10年間支援し続けたナイロビというアフリカ最大のスラム街にある学校を再び訪れ、人生を大きく変えた子供たちと再会する内容だった。「出会いと縁を大切にしてください」これは支援を受けて、スラム街から抜け出し、日本へ留学し、夢を追い続ける女の子がスラム街の子供たちに送った言葉だ。MISIAさんとの出会いはスラム街の子供たちに希望と奇跡をもたらしたのだ。

  こんな大きなスケールではないが、私にも背中を押してくれた出会いがあった。二年前に赴任してきた新しい日本人の先生との出会いだ。「何度も中国に来たことはあるが、先生として授業をやるのは初めてだ」と、正直でとても明るく親切な方で、すぐに大人気の先生になった。私は幼い頃から引っ込み思案で、劣等感を感じやすく、誰にも注目されないまま、いつまでたっても自信の持てない子だった。それで、自ら進んで先生と日本語で会話することもなかった。

 ある日の授業中、先生は私のところへ来て、私の水筒を手にし、「ここには3分の1の水しかない。或いは、まだ3分の1残っている。君はどっちだと思う」と聞いてきた。突然のことで緊張し過ぎた私は、「まだ33分の1残っている」と答えた。「前向きな人ですね」と言ってくれた。うまく理解できず、私はただ3分の1の水をじっと見ながら、考え込んでしまった。

  しかし、その日から私の中で何かが変わっていることに気づいた。「うまく行ける」、「やってみればできるかも」と何事もポジティブに考え始めるようになり、いろんなことにチャレンジしていこうと決めた。新たな生き方の発見に少し自信を持てるようにもなった。

  帰国前の最後の授業で、先生は「君と出会えたことは素晴らしい」と言ってくれた。悲しくて何も言えなかったが、じつは「私こそ先生に出会って光栄です。先生、ありがとうございます」と伝えたかった。私はこれからもいろんなことにチャレンジしていくだろう。結果がどうであれ、それが次の希望へ、次の奇跡へきっとつながると信じて。

  日本語には「一期一会」という言葉がある。しかし、私はその意味を深く考えることも、身をもって実感することもなかった。ある人に出会うまでは。
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