雲南省怒江リス族自治州瀘水市の老窩村は年間気温の年較差が小さく、一日の気温差が大きく、日照が強く、乾期が長いので、成熟時期が異なる特色のある柑橘類の栽培にとても適している。しかし、以前の老窩村には現代農業技術を知る人がいなかった。「当時、私たちの耕作は『穴を掘って、苗を植えて、水をやって、ゆっくりと成長するのを待つ』だけでした。育苗シートとか、点滴灌漑とかは、何も知りませんでした」と村民の張李栄さん(ペー族、33歳)は回想する。

怒江
2019年2月、雲南省農業科学院熱帯・亜熱帯経済作物研究所の李進学副所長(39)がこの地に派遣され、貧困脱却難関攻略の支援活動を展開した際、彼はチームを率いて、特色ある柑橘類栽培をしようと考えた。
しかし、村民の伝統的な栽培方法を変えるのは容易ではなかった。
「ほら吹きめ! 酒を飲まないうちから、酔っ払いのようなことを言う」と、李副所長の提案を疑う村民が少なからずいた。
これに対し、村の共産党支部の左雪鋒(ペー族、43歳)書記は自ら先陣を切って村民の手本となることにした。
現代的ミカン栽培は左書記の想像以上に多くの投資が必要だった。しかし、李副所長が左書記に自信を与えてくれた。
「私は李博士のような人を見たことがありませんでした」。李副所長も、左書記に感服していた。「一日中畑を歩き回り、仕事もとてもしっかりしています!」
ある時、李副所長は会議のため町へ出かけ、夜になって戻って来た時、その日に予定していた水やりの仕事をしていないことに気づいた。彼はすぐに懐中電灯をいくつか借りて、みんなを引き連れて、懐中電灯を手にしながら水をやり終えたことを左書記はよく覚えている。
「彼には『ほぼ』という観念がなく、どの栽培過程も正確に計画をたて、その日それが終わるまで帰りません」と左さんは感嘆する。
2019年5月、李チームによる手助けのもと、左書記の30ムー(2㌶)のミカンの植え付けが完了した。その年の7月、拼多多(中国の新興ECプラットフォーム)が老窩村の左書記のミカン畑を視察にやって来て、9月に225万元を寄付して、村の132の登録貧困家庭が協同組合を作るための資金援助を行い、標準化柑橘栽培基地「多多農園」を設立した。

多多農園の一部
李副所長によると、現在ここのミカン栽培面積は300ムー(20㌶)に達している。収穫期になると、1ムーあたりの生産量は3トンに達し、低めに見積もっても1ムーあたりの純利益は1万元余りとなる。「1万ムーの畑を作るより、1ムーあたり1万元の収益があがる果樹園を作るほうがはるかに良いです」と左書記は笑って言う。

多多農園の農業用ドローン
経済効率以外に、老窩村の最大の変化はやはり、村民たちの現代農業に対する認識が変わったことだ。今後、「多多農園」は現代的生産技術や経営管理能力をより多く身につけた新農家とEC農家を育成し、産業の発展を絶えず推進し、千ムーの柑橘栽培模範基地を建設する予定だ。

協同組合の水・肥料一体化システム。スマホ上で水やり、施肥、病虫害モニタリングなどが行える。
(文・写真/李家祺)
人民中国インターネット版 2020年10月9日