京杭大運河の東岸にあるクラウンプラザ揚州ホテルで、一人のかくしゃくとした高齢男性が片手で鍋を振り、材料の投入から味付け完成まで一気呵成の動作で仕上げていた。「81歳だけど、鍋を振る腕は、若い者に負けないよ」。コックの居長竜さんは誇らしげに言った。居さんは淮揚料理の省レベル無形文化遺産の伝承者で、19歳の時に蘇北農学院の食堂で調理を学び始めてから、今でも厨房の第一線で活躍している。

淮揚料理は、「精緻さ」で知られる。その一つは包丁細工を重んじることだ。最も極められた包丁技では、一切れわずか5㍉幅でも切り分けられる。二つ目は、素材選びと調理法を重視する点だ。例えばエビは必ず水から揚げたばかりの生きたものでなければならず、料理によっては、出来上がるまでわずか3回半しか鍋を返さないものもある。中国人なら誰でも知る揚州炒飯を例に取ると、具材が10種類という多さに、ご飯の硬さと分量にも厳しいこだわりがある。
改革開放後、作り方が丁寧で、食感も優れた淮揚料理は中国の主流料理の一つとなり、たびたび政府主催の宴会に登場した。「富春茶点」を代表とする料理関連の無形文化遺産は52件に及び、これにより揚州は「世界の美食の街」との評判を得ている。