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口承及び無形遺産「百劇の元祖」昆劇の魅力

 

完璧な芸術体系

1917年に昆曲『牡丹亭・驚夢』を演じた希代の芸術家・梅蘭芳
昆曲には成熟した芸術としての表現の型がある。明朝の天啓年間(1621~1627年)元年から清朝の康熙年間(1662~1722年)末までの百数年は、昆曲が盛んに発展した時期である。この時期、昆曲の公演は活発になり、表現芸術はますます成熟し、唱(うた)・念(せりふ)や身段(しぐさ)、衣装、道具により工夫を凝らすようになった。役柄も細分化され、「生(男役)」「旦(女形)」「浄(敵役、暴れ者)」「丑(道化役)」などに分けられた。昆曲の芸術的な発展に伴い、役柄が細分化されたことで、より生き生きと人物が描かれるようになった。しかし、流派の違いによって、役柄の分業も異なる。昆曲の表現のスタイルは優美であり、最大の特徴は叙情的な色彩が強く、動きには舞踊的な要素が求められる。唱、念、做(しぐさ)、打(立ち回り)が一体となり、しぐさは唱・念と巧みに結びつき、調和のとれたものになっている。昆曲は歌、舞、せりふなどの表現手段が互いに寄り添いあう総合的な芸術であり、完璧な表現体系を作り出した。宋・元以来の表現芸術をまとめ、系統的に「歌いながら踊る」という謹厳な表現スタイルを形成している。

昆曲の音楽と節回しにも特色がある。昆曲の音楽は「連曲体構造」、いわゆる「曲牌体」である。大まかな統計では、昆曲の曲牌(さまざまな曲調の総称)は1000種類以上あるという。よく使われるものとして、「憶秦娥」「山坡羊」「金梧桐」「二郎神」「点絳唇」「掛枝児」「転調貨郎児」などが挙げられる。曲牌は主に古代の歌舞音楽や唐の時代の大曲、宋の時代の唱賺(語り物演芸の一種)、諸宮調(宋・金・元代に流行した語り物演芸の1種)、漢族と少数民族の民謡などから形成された。また「借宮」「犯調」「集曲」などさまざまな創作方法がある。昆曲の曲調は繊細かつ滑らかで、「水磨き調」と呼ばれ、心地よい節回しでしみじみと心を打ち、柔らかく悠々と響きわたるのが特徴である。

もっとも古い昆曲の脚本である『浣紗記』
伴奏の楽器は曲笛を主とし、笙、簫、チャルメラ、三弦(蛇皮線)、琵琶などが用いられる。歌うときには声をコントロールし、リズムに抑揚や緩急をつけ、正確に発音することが求められる。拍子は一般に使われる「一板三眼(4拍子)」「一板一眼(2拍子)」「流水板(4分の1拍子)」「散板(自由な拍子)」のほか、「贈板曲(4分の8拍子あるいは2分の4拍子)」などがある。発音に対する要求は厳しく、平声、上声、去声、入声の1つ1つにこだわり、非常に工夫された音となっている。さらに、実際に上演される際には、人物の性格や感情にあわせての変化も求められる。

昆曲には独自の舞台の様式がある。舞台の美術設計は簡潔かつ変化に富み、情趣を重んじたもので、装飾効果の高いものとなっている。衣装は華やかで、「間違った着付けをするくらいなら、破れた衣装を身に着けるほうがましである」という言い方があるほど、着付けにも一定のきまりやこだわりがある。さまざまな隈取りや兜、冠、靴のほか、舞台用の旗、テント、扇子、ハンカチなどの道具もある。また、役者は衣装の袖口につけた長い白絹の「水袖」でさまざまな踊りの動きを描き出すことで、舞台における表現力を高めることができる。

 

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