鳩山由紀夫元首相にインタビュー
聞き手=于文 写真=呉亦為

2014年11月25日から28日まで、人民中国雑誌社と東京中国文化センターの共催による「宜興陶磁器展 共鋳大器」が開催される。このイベントは、中国の無形文化遺産・宜興の陶器「紫砂」(※)の「茶壺」(急須)に、日本の政治家や書画家がメッセージを書き入れた後、焼き上げ、展示するという中日共同プロジェクト。
中国側では、急須の監修に中国紫砂工芸美術大家の束鳳英氏、制作に中国国家級工芸美術師の万亜鈞氏、書家の何奇耶徒氏などの著名人が関わっている。
その急須に筆で文字を書き入れるのは、程永華駐日中国大使、日本の鳩山由紀夫元首相、海江田万里民主党代表、山口那津男公明党代表、書道家の田中節山氏だ。
本誌では、鳩山由紀夫元首相に、当プロジェクトに対する想いや実際に筆で文字を書き入れた感想などについてお話をうかがった。
――世界で中国・宜興にしかない唯一の特殊な陶土の「紫砂」ですが、日本ではあまり知られていません。先生は以前からご存知だったのでしょうか?
鳩山由紀夫氏(以下鳩山)「紫砂」の茶器や急須を目にしたことはあったと思うのですが、実際に「紫砂」がどういうものか、詳しく知りませんでした。歴史的にも素晴らしく、採掘が難しく、高価なものだと聞き、勉強させていただきました。
また「紫砂」の急須はとても手触りがよく、このざらざら感がおいしいお茶を飲むための秘訣だという話を聞き、興味深く感じました。仕上がりを楽しみにしています。
――筆で「紫砂」陶器に文字を書き入れるのは初めてだったと思いますが、実際どうでしたか?
鳩山 今まで平面の紙にしか文字を書いたことがなかったので、カーブのある陶芸作品に小さな筆で文字を入れるのはとても難しかったですね。昔の人は、上手に描いたものだなと感心しました。
事前練習をせず、3つの急須に順番に書き入れましたが、慣れれば慣れるだけ上手に描けるというものではなく、とても難しいものだと感じました。次第に字が大きくなってしまうなど大変苦しみましたが、楽しい企画に参加できたことに感謝しています。
――鳩山先生は急須に「日中友好」ではなく「友愛」と書いて下さいました。どのようなお考えだったのでしょうか。
鳩山 「友好」より「友愛」のほうが、距離感がなく、2人の人間が完全に愛し合い、強い絆で結ばれている、そういった温かさを強く感じることができると思います。
中国にしろ、日本にしろ、自立を目指すとお互いの間に「違い」が生まれます。しかしその違いを認め合い、尊敬し合い、助け合おうという心が大切です。
「友愛」には、その意味が強く含まれていると思っています。
――先日、鳩山先生は北京や河南省を訪問されましたが、どのような印象でしたでしょうか?
鳩山 河南省鄭州市の少林寺で知られる嵩山(すうざん)に2日間うかがいましたが、皆さんとてもやさしく接してくださいました。
日本語で「食わず嫌い」という言葉があります。食べないうちから嫌いだと決めつけるという意味ですが、日本人も中国人も食わず嫌いにならずに、一歩ずつ歩み寄っていければと思っています。実際、日本に観光にいらっしゃる中国の方は、みなさん日本を好きになって帰国されますよね。
日中間の政治家レベルではさまざまな問題があってぎくしゃくしていても、民間レベルでの相互の感情は悪いものではないと思っています。
日中間の接触をより推し進め、文化的な交流も深めていくべきだと思っています。そうすることで、民間レベルでは良好な関係を築くことができるのではないかと思います。
また、さらにメディアが中立的に、歴史の事実を直視する勇気を持つことも必要だと思っています。
――先生は、先日中国の清華大学で講演されましたが、学生たちの反応はいかがでしたか。
鳩山 過去3年間、清華大学で講演を行ってきましたが、みなさん熱心に聞いてくださいます。
日中関係を学んでいる中国の方の多くは、日中関係をさらに良くしたいと思っており、日本人よりも日中の歴史に詳しく、深く理解しています。だからこそ、日中関係を改善したいという強い気持ちがあるのだと思います。私は中国の若者に期待しています。
――日中関係改善のためには、両国が互いに交流し、文化に触れ合うことが重要です。相互理解を深めることにつながります。
鳩山 日中関係が冷え込んでいる今だからこそ、多くの中国人が日本にいらっしゃって、草の根の交流が進めば、徐々に変わってくるのではないかと思います。
そういう意味で、両国の文化の架け橋としてのこのイベントは大切なものを持ち合わせていると思います。両国間の雪解けに向け、大いに役に立つ文化イベントです。私は参加させていただいたことをありがたく思っています。そして1人でも多くの日本の方に足を運んでいただけるよう祈っています。
(※)中国無形文化遺産・宜興の陶器「紫砂」について
紫砂陶器の唯一の原料である紫砂は宜興市丁蜀鎮の黄龍山、青龍山、趙荘一帯で産する、世界でも唯一の特殊な陶土。陶土の色は主に紫色だが、ほかに赤色と黄色のものもある。砂のように通気性があり、手工陶器に求められる良好な可塑性を備えている。
宜興には6500年余りに及ぶ製陶の歴史があり、2006年に陶制作技術としては初めて中国の無形文化遺産に登録された。
人民中国インターネット版 2014年10月16日
|