本誌特約ライター・文君=文
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プロフィール |
徐里(Xu Li ジョリ)
1961年福建省生まれ、福建師範大学美術学部卒業。現在は中国美術家協会秘書長、「中華文明に関する歴史を題材とする美術創作プロジェクト」実行委員会事務室副主任兼創作指導委員会事務室副主任。2007年中国油絵画家50人に選出、2011年中国油絵2010年度10人に入選、2012年ウクライナ大使賞受賞。 |
冷たく光る月や蒼茫たる山、筆遣いはいささか粗野だが優雅な味わいを持つ仏画、それに文人画の小品……2014年3月に北京で開かれた「徐里水墨芸術展」には多彩な水墨画が展示された。これら30数点の作品は、徐里氏の絵画芸術の全体像を表すと同時に、油絵と水墨画、つまり西洋美術と中国美術の融合についての独自の考えも示している。
西洋画から中国画に
徐氏は非常にレベルの高い油絵の基礎を持っている。28歳にして油絵『天長地久』で第7回中国美術展銅賞を受賞、その後もたびたび中国美術展に入選し、民族文化を油絵に取り入れることに熱心に取り組んできた。このように油絵ですでに実績のあった彼は、なぜ中国画に転じたのだろうか。
実は徐氏は、中国の画家である者が自国文化の研究に力を入れなければ、伝統文化の発展にとって遺憾なことだと考えたのだという。彼が学んだのは油絵だったが、中国の伝統文人画から養分を吸収し、飛躍の糸口を見つけようとしたのだった。そのため、彼は中国画の巨匠・呉悦石氏に師事した。2004年のことだった。
文人画は、彼にとって簡単そうに見えて実に奥が深いものだ。例えば書道の研さんが必要で、そこでは線に対する理解、筆遣いの把握、個人の素養などが求められる。そこで彼は長期にわたって書道を学び、絵画に書道を取り入れる伝統を堅持してきた。
徐氏の中国画に描かれる人物は造形が簡潔で、筆遣いが洗練されている。彼の考えでは、中国画に含まれるいくつかの要素は、数本の線で表すことが非常に難しいものだ。線に対する認識だけでなく、墨や水の使い方にもこだわらなければならない。どんなに大きな絵でも、描き終わった時に筆洗の水はきれいでなくてはならない。
中国文化の粋を伝える
初期の作品「吉祥雪域」チベットシリーズから、「永恒的輝煌(永遠の輝き)」西域の旅シリーズ、「蔵密仏像(チベット仏教の仏像)」シリーズ、現在の「中国山水」シリーズまで、徐氏の作品は数年ごとにイメージを一新させ、人々の注目を集めてきた。異なった画種やスタイルを試みてきたが、彼はすべての変化は不変のテーマをめぐるもので、すなわち中華文化の立場をしっかりと守り、中国の心と風格を受け継いでいると話している。
もし中国の油絵画家が永遠に西洋美術の学生、模倣者であり続け、西洋の芸術各派の影響下に甘んじているなら、中国の油絵には将来性がないと徐氏は感じている。いかに油絵という言語を通じて中国の文化と中国人の見聞や思想、とりわけ中国の美意識と文化の真髄を表現するかが、彼が考え続けているテーマだ。
画家の董良達氏は徐氏の作品を次のように評価している。「油絵の筆のタッチから水墨画の線の表現まで、いずれも円熟の極致に達しており、中国的特色を持つ山水画の新境地を切り開いた点が素晴らしい」。
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『永恒的輝煌』
180cm×180cm 2014年 |
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