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アニメ『十万個冷笑話』が興収1億突破で話題に!

 

王焱=文

昨年末12月31日に公開されたアニメ映画『十万個冷笑話』(数えきれないほどのスベるギャグ、という意味)が、今年1月10日時点で1億元を突破するヒットとなり、話題を呼んでいる。

 

公開前はそれほど注目されていなかった同作だが、公開当初から予想以上の観客が詰めかけ、座席稼働率は70%に達したため、多くの映画館で上映会数を増やしたり大きなホールに変更するなどの措置が取られた。元旦には並み居る大作を相手に興行収入第2位に食い込む健闘ぶりを見せ、正月興行のダークホースとなった。ローバジェットで宣伝も小規模、さらにスターも登場しないアニメ映画が大きな収益を上げたのだ。

これ以前、中国では子ども向けアニメに『喜羊羊與灰太郎』などのヒット作はあったものの、オールエージ向けアニメ映画はふるわなかった。最も評判の良かった『魁拔』(クィーバ)『秦時明月』などでも最高で6000万元止まりだったのだ。ところが、この作品が大ヒットしたため、業界内外で議論が沸騰している。

『十万個冷笑話』は、寒舞というペンネームの作家が2010年からマンガ専門サイト「有妖気」(u17.com)に連載しているもの。日本の『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』にヒントを得て腕試しのつもりでスタート、当初は下書き程度のものが多かったという。ところが2011年末になると、累計読者数が500万を突破したため、同サイトでは2012年に短編アニメ化して連載を開始、広範なユーザーに知られるようになった。劇場アニメ制作決定時には、なんと延べ10億人が見たことが明らかにされた。

同作品では、マンガからアニメ化、映画化に至るステップは、マンガ雑誌を買った読者がテレビアニメも見て、劇場にも足を運ぶようにするという日本のマンガ・アニメ市場の展開方式を学んで進められた。日本との違いは、現在の中国ではインターネットがマンガ雑誌など他のメディアに取って代わり、唯一のコンテンツ供給メディアとなっていることだ。

ネット検索サイト「百度」のデータ分析によると、『十万個冷笑話』と『魁拔』(クィーバ)『秦時明月』などには決定的な違いがあるという。つまり、アニメ化の段階で、これまでの作品はまずテレビに作品提供をしていたが、『十万個冷笑話』ではこの伝統的メディアがもたらす小さな利益を捨て、直接インターネットにコンテンツを配給、最大限に観衆によるインターネット上での話題提供を引き出してきたのだ。

また同作では、題材に高い芸術性のラッピングを施しているわけではない。エンターテインメント性を得ることだけが制作側、配給元の共通認識であり、多くの観客が劇場に足を運ぶのは、ただ日頃の疲れから解放されるためだけで、金銭を使って自ら笑い声を上げる力を買うためだけだということだ。

この作品を元旦に劇場で見たという人民中国の日本人専門家井上俊彦は「これまでの中国アニメにありがちだったお行儀の良さ、説教っぽさがまったくなく、一段階突き抜けた感じがする。上映中は日本でも通用しそうな“寒い”ギャグが若い観客に大受けで、スクリーンに向けて“ツッコミ”を入れている女性客さえいて驚いた(笑)」と話している。

 

人民中国インターネット版

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