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【古文化街】と【天后宮】
よみがえった昔日の繁栄

 

天后宮を修復し通りを整備

 

さまざまな老舗の看板が並ぶ天津古文化街

清の乾隆年間(1736~95年)の末頃に、画家の江萱が細密画の技法で描いた絵巻物『潞河督運図巻』が残されている。潞河は北運河とも言い、北京の通州北関閘(現在の通州区)から天津を経て海河に合流し渤海湾に注いでいる。大運河と接続しており、元、明、清代には地方で集められた租税の食糧を北京に運ぶ水運の要衝であり、商業交通の要路だった。この絵巻は清の乾隆年間の潞河の盛んだった水運、経済、商業取引、民俗についての記録でもある。

絵巻の一部には当時の天津天后宮の壮麗な様子や、宮南大街や宮北大街などの通りに商店が軒を連ね、人や車が盛んに往来しにぎわう街頭の様子が描かれている。もともと天后宮前は広々としていたというが、大勢の人や物資が集まるのに伴ってここには「宮前集」と呼ばれる市が生まれて次第に建物が密集していった。明、清代には水運が栄え水の神への信仰も盛んで、宮前集は多くの品物が集まって人の往来が絶えず、天后宮前は次第ににぎやかな大通りになっていった。大小さまざまな店が次々と建てられ、もともとは日の出とともに店を出し日暮れとともに畳んだ市場は、次第に店舗の建物が並ぶ商店街に変わっていった。こうして宮南大街、宮北大街が形成されていったのだった。

春節を前に、飾り付けがされた大通り

1985年、天津市政府は天后宮の修復を決定、同時に宮の南北の宮南大街、宮北大街に古文化街を建設することとした。こうして再開発された古文化街は全長が580メートルある車の乗り入れ禁止の商店街で、南北の入り口に大きな「牌楼」(屋根付きの門)が設けられている。南口の牌楼には「津門故里」の4文字があり、現在の天津市街がもともとこの一帯を中心として次第に発展してきたことを意味している。北口のものには「沽上芸苑」とあり、これはこの街の景観、店舗、商品がみな芸術の香りに満ちているという意味だ。

現在の古文化街には100軒近くの店舗があり、主に骨董や書画、民芸品、伝統的な衣類やアクセサリー類、天津ならではの軽食などを商っている。通りはレンガ舗装で、各店舗はみなレンガ造りの三角屋根という清代の建築スタイルだ。天津の人々は生まれつき伝統に対する強い思いを持っており、この古文化街を歩けば、外来の観光客以外に、多くの地元の天津人がいることに気がつくはずだ。この現象は特に春節(旧正月)の時期に顕著となる。ここでは正月に食べる、着る、使うものをなんでも買い求めることができるだけでなく、天津の特色ある軽食を味わったり民俗的な出し物を鑑賞することもできる。これが生粋の天津っ子にとってここの魅力が今もまったく変わらない理由だ。

天津の民俗伝える場に

 

「春祭」の日は天后宮の境内は線香を上げ願かけをする人で埋め尽くされる

 古文化街の中心にあるのが天后宮だ。この道教寺院はもともと「天妃宮」と言い、俗に「娘娘宮」とも呼ばれるのは、「海神娘娘」つまり媽祖を祭っているからだ。ここは福建省莆田市湄洲島の媽祖廟、台湾地区北港鎮の朝天宮と並んで中国三大媽祖廟に数えられる。媽祖は古くから航海の安全を守る神として信仰されてきた。伝説によると、媽祖はもともと福建莆田の人で林黙と言い、よく船で海に出て海難に遭った人を救ったため、のちの人々から女神として敬われた。

天津の天后宮は元代に創建された。当時は南方の食糧を海運で北方に運んでいたが、時折海難事故も発生した。天津は海運の終着点であり、また内陸水運の出発点でもあったため、皇帝が指示して海河が三つまたになった船着場付近に天后宮を建立させ、人々に信奉させたのだった。船頭や官吏らは海に出る場合や南からの食糧が到着した時に、安全無事を祈って参拝したのだった。

旧暦の3月23日は媽祖の誕生日とされている。清の康煕年間(1662~1722年)から、毎年この日には天后宮で伝統的な祭りである「娘娘会」が行われる。大勢の人が海神娘娘の像を担いで街を巡り歩き、人々から線香や参詣を受ける。これと同時に、「踩高蹺」(竹馬踊り)、「跑旱船」(張り子の船の中で歌いながら練り歩く)、獅子舞などの民俗芸能が行われ大変にぎわう。言い伝えによると、清の乾隆帝(在位1735~96年)が江南への行幸の途中でこれらの出し物を見て激賞したため、この娘娘会の評判は大いに高まり、「皇会」と呼ばれるようになったという。

「春祭」で伝統芸能の踩高蹺を舞う出演者

中国では、毎年旧暦の12月23日は伝統的に「小年」と呼ばれる。この小年になると、天津の天后宮では年に一度の「春祭」が開催される。この元代からの祭りは中断を経て2007年に復活した。春祭の日には、天后宮に太鼓を交えた音楽が響き渡り大変にぎやかだ。作物にとって天候が順調であること、国家が安泰で人々が平穏であることを媽祖に祈るほかに、踩高蹺や跑旱船などが演じられる。この日は天后宮を訪れ線香を上げて願いを託す人が非常に多く、天后宮から遠く離れた場所まで線香の香りが漂う。天津人にとっては、この日から年越しが始まるのだ。その後、「廟会(正月の縁日)」、「灯会(旧暦1月15日に行われる灯籠祭り)」などの伝統行事が次々と行われ、天后宮と古文化街は1年で最もにぎやかな時期を迎える。

 

 

 

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