現在位置: 文化
【風箏魏】  小さなたこに大きな知恵

 

平面から立体へ

天津は中国でもたこづくりの盛んな場所だ。そして、天津でたこについて語る時、人々はまず2008年に国家無形文化遺産の指定を受けた「風箏魏」(魏式たこ)を思い浮かべる。

風箏魏の五代目を継ぎたいと語る

魏博文さん

 

風箏魏の名は天津の有名なたこづくり職人魏元泰(1872~1961年)から来ている。彼は16歳からたこづくりを始めた。たこに対する造詣を深めるため繰り返し鳥類や昆虫の飛ぶ姿を研究し、またそれらの身体各部の比率などの関係を研究していった。数年の試行錯誤の末に出来上がった風箏魏の作品は、その造形の美しさ、真に迫った形状、仕上がりぐあいの見事さでよく知られるようになった。1915年、風箏魏はサンフランシスコで行われたパナマ・太平洋万国博覧会で金賞を受賞し、天津におけるたこ業界のリーダーとしての地位をさらに確固としたものにした。

今日では、風箏魏の技術はすでに四代目の魏国秋さん(54)に伝えられている。材料には樹齢2年以上の福建産モウソウチクを主に使う。絵は絹や不織布、丈夫な紙など破れにくく、色落ちしにくいものに描かれる。骨組みの制作には独特の、穴をうがちほぞを組む構造を採用しており、これによって3メートルもの大きなたこも、折り畳んで小さな箱に入れることができ、携帯と収納に便利になっている。

形状面でも、風箏魏は大きな技術革新を成し遂げた。魏国秋さんの息子の魏博文さん(21)によれば「以前のたこの多くは平面的でしたが、現在のものは中間が膨らんでおり、より美しく、本物そっくりで、立体的です。例えば私たちのタカの形のたこは、骨組みが立体的なためより真に迫った形をしています。そして一定の高度で空中で旋回させることができます。私の父はちょうど『世界平和』というたこを完成させたところですが、それもこれに類する作品です」と紹介している。

「私の代で途絶えさせない」

風箏魏の取材時、魏国秋さんは新作「世界平和」を手にフランスの文化センターで行われるたこの展示交流イベントに参加しているところだった。将来五代目を継ぐという魏博文さんは冬休みの時間を利用して父の工作室の管理と作業の手伝いをしていた。

風箏魏の代表作 「龍晴魚」(デメキン)
 大学3年生の博文さんは、福建農林大学でコンピューターを専攻している。学業はとても忙しいが、時間がありさえすれば、紙を取り出してスケッチを描き、たこの図案とデザインを構想しているという。毎年学園内で行われるたこ揚げ大会では、クラスの主力メンバーとしての役割を進んで果たし、たこの設計から制作、たこ揚げまで一手に引き受けている。クラスメートたちは彼の優れた技術と腕前に感心しきりだが、同じ宿舎の天津人のルームメート以外、控えめな彼が実は風箏魏の跡継ぎだと知る人はほとんどいない。

現在の中国では、コンピューター専攻の学生は引く手あまたで、一般に高収入の仕事を見つけることができる。しかし、将来の身の振り方について尋ねると、彼はまずこの家伝の工芸の伝承を考えていると答えた。「子どもの頃、父はたびたび私をたこ揚げに連れて行ってくれました。成長してからは、少しですが家伝のたこづくりの技術を教えてくれます。私の成長はたこと離れたことがないと言えるでしょう」と、博文さんはたこの骨組みづくりを練習しながら語ってくれた。「私が今身に着けている技術はほんの上っ面のものでしかありません。大学を卒業したら、引き続き父からたこづくりを学び、この家伝の技術を継承したいと思います。『風箏魏』は家伝の技術であるばかりでなく、中国の貴重な無形文化遺産なのです。私は一人息子として、この技術を私の代で途絶えさせるわけにはいきません」

 

人民中国インターネット版 2015年4月7日

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850