現在位置: 文化
レトロ博物館を開いた「80後」

 

 1980年代初期に中国で人気を集めた日本のドラマ『排球女将(燃えろアタック)』の連環画本がどういう経緯で彼女の手元に来たか、熱心に説明する王小佳さん

 

オールド上海を再現 

上海と言えば、「モダン」と「精緻」という二つのキーワードが中国の人々の頭には浮かぶ。蓄音機や「雪花膏」と呼ばれるバニシングクリーム、「大白兎」ミルクあめ、「上海」腕時計、「鳳凰」自転車、「英雄」万年筆など上海のオールド・ブランドは、どれも一世を風靡し、かつて中国の文化生活トレンドをけん引したものだ。しかしながら、都市の目覚ましい進歩と変化、人々の生活水準の高まりに伴って、かつておしゃれだったこれらの品々はもう流行することがなく、次第に人々の暮らしの舞台から姿を消しつつある。しかし上海でこれらの古い品物は、何代もの人々にとって一種の集合的記憶を形成しており、忘れ去られてはいない。そして、ある「80後(1980年代生まれ)」の女性は、それらに対する気持ちを行動に結びつけ、レトロ博物館をオープンさせオールド上海の記憶を保存することにしたのだった。  

王小佳さんはスタイリストで、石庫門に暮らす上海知識人の家庭に育った。家族の影響で、彼女は幼い頃からさまざまなオールド上海の品々を集めるのが好きだった。コレクションは次第に増え、大学卒業後、家族の協力と励ましの下、廃業した倉庫を借りてコレクションを種類別に分類して展示し、ミニ博物館としてオープンさせた。  

彼女の博物館のレトロな品々は、普通の博物館のようにガラスケースに入れられ厳重に保管されているわけではない。年代ごとにテーマ化されたリアルな生活シーンの中に配置されているのだ。柔らかな照明の下には、古い蓄音機から人を酔わせる音楽が流れ、レトロな品々で在りし日の場面が再現されており、まるでオールド上海にタイムスリップしたかのようだ。  

館内には、清代末・民国初期から改革開放まで約100年間のレトロな品物が1000点余り陳列されている。倉庫にはさらに8000点以上のコレクションがあるという。王さんは期間を区切って展示を刷新し、より多くの収蔵品を来館者と分かち合えるようにしている。

保管するのは「思い出」 

これだけ多くのコレクションはいったいどこから集めて来たのだろう? 「家族が残していたものもあれば、探してきたものもあります。市民から提供されたものもあれば、多くの廃墟から私が救い出したものまであります」と王さん。例えば、博物館内にはかつてのユダヤ人酒場が再現されているが、そのドアは彼女が工事現場から拾ってきたものだ。「ある日、内装工事の現場を通りかかると、ちょうど作業員がこのドアを取り外しているところでした。私は見た瞬間に慌てて、ブルドーザーに向かって『待って!このドア、私がもらうわ』と叫んだのです」と彼女は当時を振り返る。  

コレクションの中で最も好きなものはという質問をしてみると、王さんは、「どれも好きで、一つ一つが宝物です。なぜなら皆それぞれに物語を持っているからです」と答え、2台のピアノを例に説明してくれた。1台は1870年代にドイツで作られた古いピアノで、鍵盤には象牙が使われている。かつて上海の教会学校で使われたもので、現在ではかなりの値打ちがある。もう1台のピアノは彼女が1歳の時に家族が買ってくれたものだ。「私にとって、2台のピアノは同じように貴重なものです。なぜなら、何ものにも代えがたい思い出があるからです」  

コレクションの中には市民から寄贈されたものもある。王さんは、ある老「知識青年」(1950年代から70年代にかけて農山村に下放された生徒)から贈られたアコーディオンについて、感慨深げに話し始めた。「つらく苦しい11年という歳月を、彼はこのアコーディオンを相棒に過ごしたのです。引っ越しで置く場所がなくなったため、老人は名残惜しそうに寄贈に来ました。その後、仲間たちと一緒にここを訪れるたびに、アコーディオンを見ては思わず涙を流すのです。その老知識青年のことを思うたび、私は重い物を背負っているのを感じます。なぜなら、私は彼らの貴重な思い出を保管しているのですから」  

博物館がオープンしてすでに7年になる。この7年間をどう思うかと尋ねると、「私はとても幸福だと思います。気を使い疲れますが、とても楽しいですね」との答え。個人博物館の運営は、チケットや飲料、スナックなどの売り上げを除いて、大部分が王さんの給与で賄われている。「給料の大部分はこの博物館の運営費を補うために使っています」という王さんは、何年も地域の街道弁事処(町内会事務所)に協力して、地域の一人暮らしの老人たちを参観に招く活動も続けている。老人たちが往時を振り返るのを手助けし、入場料を取らないばかりか飲料やスナックを無償提供しているのだ。  

博物館は今ではかなり有名になり、多くの外国人もやって来るようになった。外国人では日本人が最も多いそうで、王さんはすでに多くの日本人と親しく付き合っている。「ある日本の友人は上海を訪れるたび、必ず博物館に立ち寄ってくれるばかりか、自分がコレクションしていた古い品物も寄贈してくれました」  

実は、この建物は引き続き借りることができなくなっており、博物館は引っ越しを迫られている。それでも、彼女は力強い決意を次のように語っている。「新しい場所を探しているところですが、どうあっても博物館は続けていきます。『80後』は上の世代から受けたものを次に受け渡す世代です。上海の歴史と文化を伝えていくのは、私たちにとって道義的にも返上できない責任なのです」

 

上海往事1937ミニ民俗博物館

所在地/上海市虹口区臨潼路110号

電話/021-65350498  13611671227

アクセス/地下鉄4号線楊樹浦路駅下車、4番口を出て西に行き臨潼路を北に、徒歩5分/12号線堤籃橋駅下車、2番口を出て東へ行き臨潼路を北に、徒歩10分

開館時間/13:00~17:00 19:30~22:30(要予約/月曜休館)

入館料/午後100元(飲料・スナック付)/夜200元(飲料・スナック付/アルコール類は別料金)

 
人民中国インターネット版 2015年10月26日

 

1   2   3   4   5   >>  

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850