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魚と竹を絆に「相互理解」
アーティスト 王伝峰氏

 

絵画の魚が友好の使者に

今までの努力が報われた王氏は2004年に東京国立博物館で個展を開いた。これは100年以上の歴史を持つ東京国立博物館始まって以来初となる存命する芸術家の個展であり、王氏にとって自身の芸術家人生に出された重要な成績書だった。

実際その成績書の内容はどうだったかというと、業界内に広く認められ高い評価を得た。中央美術学院院長で当時中国美術館館長だった范迪安氏は「王氏の絵画世界のテーマは魚と水だ。彼は魚を芸術の創作対象として20年以上一心に打ち込み、追求し続けた。作品からは彼が終始生命の根源について考え続けていることがうかがえる。作品には深い哲学が込められている」と評した。

 『サクラと魚』 2000年 38×18.5cm

中国美術学院の許江院長は「王氏の描く魚はまるで記憶の破片の中から泳ぎ出てきたかのようにメッセージを伝えている。魚に関する文化的意味合いの中から泳ぎ出てきたように化石のようなうろこを持ち、そこには漢字の模様が描かれている。このような魚はまた物事の永続と人々の祈願を連想させる」と評した。

東山魁夷氏はこのように評している。「絵から美術に対する並々ならぬ研究努力が伝わってくるだけではなく、伝統的な絵画技術にも確固とした基礎を持っており、独特な画風が魅力的だ。さらに多くの新しい試みをしてくれることを期待している」

 『水に映る丹魚』 2006年 68×68cm

王氏と合作した平山郁夫氏は王氏の作品をこう評価している。「魚と水は美しい自然と芸術の関係および人々の感情を表しているとともに、日中両国の永遠の友好と平和を祈る願いを表している」 また、王氏はこれまで3回ドイツで個展を開いており、ドイツの美術評論家から「光と影の変化が織り成す芸術だ」と評価されている。

王伝峰美術館の題字を書く平山氏

芸術で大きな成果を収めた王氏は中日両国の文化芸術交流に力を注いだ。

02年の中日国交正常化30周年の際、両国はそれぞれ自国で「中国年」と「日本年」の記念行事を開催した。日本の総務省はこの歴史的出来事を記念する切手を発行するために、特別に日本全国から絵画作品を募集した。中川美術館が中国人画家の鄧林氏の『紫藤花』を推薦し、総務省は政治評論家の三宅久之氏を通じて、王氏に『源遠流長』を切手に使用する許可をもらった。現在の日本人に広く愛されている金魚が中国から日本に伝わったのは500年前といわれている。2匹の金魚がサクラの花びらが漂う川を泳ぐ絵には象徴的な手法が使われており、絵に散りばめられた30枚の花びらは中日国交正常化30周年を隠喩している。記念切手発行を祝い、当時の中国駐日大使の武大偉氏がわざわざ大使館で祝賀イベントを開催した。

 2002年に王氏と鄧氏の作品が共に日中国交正常化30周年記念切手に選ばれた

08年は北京オリンピックと「中日平和友好条約」締結30周年と慶事が立て続けに起きた年だった。総務省が王氏に自分が推薦する日本人画家と合作するよう願い出たところ、王氏の頭には即座に日本に初めて来たときに指導してくれた平山氏の顔が浮かび上がった。平山氏は快く引き受けてくれた。このときの切手セットには王氏の「魚水情 春・夏・秋・冬」という四季を描いた4点の作品が使われた。魚と水、春夏秋冬の四季とウメ、スイレン、モミジ、スイセンの4種類の花は自然と人間の調和と統一、そして中日両国がいつの時代も友好でいられることを望む願いを表している。

 2008年に王氏と平山氏が合作した日中平和友好条約30周年記念切手

1人の中国人画家の作品が2度も中日関係に関する日本の記念切手に採用されるなど、日本の切手の歴史上空前絶後のことになるだろう。2度の記念切手の絵の主役はどちらも水を泳ぐ魚であり、王氏の作品の深い意味や日本での認知度を十分に表している。

10年に王氏の作品は当時の中日友好協会会長の宋健氏によって天皇陛下に贈呈された。傑出した貢献によって王氏は11年に中日友好協会から「中日友好使者」の称号を与えられた。

 

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