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魚と竹を絆に「相互理解」
アーティスト 王伝峰氏

 

東洋哲学の表れたる魚と竹

魚に対するこだわりについて王氏は、伝統的な文化の影響を受け、幼いころから「魚」が縁起の良い象徴だったからだと語る。王氏が熱海のMOA美術館で尾形光琳の『紅白梅図屏風』をつぶさに観察していたときのこと。びょうぶは全体を見れば太極図のようなデザイン、細かく見れば流れの中に細かな水流が波打ち、絵の中にウメが花をつけている。白黒陰陽の太極図はまるで2匹の魚が互いを追いかけているような模様であり、これによって王氏は魚をテーマにする絵のインスピレーションが湧き、それから20年以上魚の絵を描き続けている。こうして魚は王氏の芸術シンボルのようになった。

『荘子・秋水篇』には荘子が恵子と「魚の楽しみ」について話し合う故事がある。この道教の代表的な人物は天の道理に従い、「人為」を排し、自由を求め、自然に沿うことを説いた。王氏の絵画の芸術理念もまさにこのような伝統的な哲学的思想から来ていて、自分の絵画を魚と水の世界に例えている。「中日両国の友好関係が私の生きる大海原だとすれば、中国がルーツで、体を日本に寄せる私はさしずめ中日の文化交流を泳ぐ『魚』です」と王氏は語る。

東日本大震災で王氏が長年集めた多くの陶器が壊れたが、家にあった二つの竹籠だけは全く無傷だった。そのとき王氏は竹の偉大な生命力を知った。

隈研吾氏と王氏は仲の良い友人だ。隈氏はかつて王氏に「簡素な建築デザインを追求するということは、最もシンプルな線と最も自然な材料で簡素な雰囲気をつくることだ。子どものころ、段ボールに砂と石ころだけを敷いて庭園を作ったのと同じだ」と言った。

 篠山氏(左)と隈氏(右)との記念写真

地震による芸術的刺激と隈氏の啓発を受けて、王氏は新たな試みに取り組んだ。それは古い竹籠に花を生けるというもので、「古今の同居」を意味するそれには伝統文化と現代アートの融合が込められていると考えた。古い竹籠に生き生きとした花が飾られている様子は人間と自然の調和と統一を表し、生命の連続性を象徴している。

インスタレーションと絵画はさまざまな要素が絡み合って関係しているが異なる箇所や矛盾する箇所もある。だが芸術の創作や表現方法、そして最後に現れる印象と感想にはどれも極めて不思議な似通った箇所がある。インスタレーションが現実の需要を直視しているのならば、伝統的な絵画は芸術の伝承と精神の回想だ。規則的かつ多元的で立体的な文化構造から見て、両者は社会精神文化の発展の産物であり、共存し調和的発展を遂げなければならない。王氏の試みは両者の境界線を突破するという越境的チャレンジであった。王氏は「インスタレーションと伝統絵画芸術はともに独自の世界と境界があり、その中のいかなる観点に対する論述はみな無力で無意味だ。両者の世界を規定する他、さらに融合する中間地帯が必要だ」と考えている。

 (写真・篠山紀信)

篠山氏との会話中、王氏はふと最近ジャンルを超えて、古い竹籠を研究したり、生け花を練習したりしていることを話した。王氏の作品を見た篠山氏は大変興味を示した。王氏は篠山氏に境界を超えるパートナーになって人ではなく静物を撮り、竹籠の生け花の撮影に協力してくれないかと話した。「そんな面白そうなことをどうして断れるんだ」と篠山氏は即座に答えた。

こうしてできた王氏と篠山氏の合作である生け花は光と影が共存し、竹材と花が組み合わさり、東洋哲学の境地を完璧に体現した。

 インスタレーション作品『餘香』:春夏秋冬をイメージしている。作品は隈氏がデザインした建築物の前で撮影され、古い竹籠と王氏の生け花が融和している。これも伝統と現代の融合だ(写真・篠山紀信)

東洋哲学には「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ」という考えがある。芸術家人生で水を泳ぐ魚と山に生える竹の二つのテーマに固執してきた王氏は、東洋哲学の本質をつかんだ。竹は山で育ち、魚は水の中で生きる。山と竹の交わりや水と魚の交わりは画家の東洋哲学に対するイメージを結集したものだ。これもまた王氏の芸術家人生の喜びをより増やし、永遠に続くものにするだろう。古人もこのように述べている。「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しみ、知者は楽しみ多く、仁者は命長し」と。

 

   王伝峰(Wang Chuanfeng)

  1967年山東省生まれ。88年に中国美術学院中国画学部で花鳥画を専攻。92年に来日し、2004年に東京国立博物館で個展を開催。画集『王伝峰画魚水情』(人民美術出版社)、作品集『餘香―王伝峰挿花芸術』(講談社)を出版。11年に中日友好協会より「中日友好使者」の称号を授与。

(写真・篠山紀信)

 

人民中国インターネット版 2017年8月29日

 

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