「匠の心の極致――日本伝統工芸展」が北京で開催

2019-11-05 17:18:08
                                    蔡夢瑤=文/写真

匠の心の極致――日本伝統工芸展

 日本伝統工芸展実行委員会が共催する「匠の心の極致――日本伝統工芸展」が1031113、北京市内の嘉徳芸術センターで開催された。能作や黒田陶苑、宝満堂、柳博、清雅堂、宮津商店など工芸品メーカーが出展し、明治時代から現代までのよりすぐりの工芸品400点以上がお目見えした。以下では、その中からいくつかを紹介する。


高橋純一氏『りんご』

 写真を見て「普通のりんごじゃないか」と思われた方もいるかもしれないが、実はそうではない。銅で作られたこの「りんご」は、鍛金の芸術家・高橋純一氏(70歳)の作品。最も驚くべきは、この色付けには塗料が一切使われていないことだ。銅を加熱すると変色するという特性を利用し、精密な実験を繰り返し、表面の均一で自然な赤色を作り上げたのだという。


塩澤正信氏作桜組子の屏風

 「桜組子」は伝統木工技術「組子」細工の職人・塩澤正信氏(45歳)が伝統的な組子技術を発展させた新たな技術。厚さ1mm前後の薄い木を接着剤を使わずに緻密に組み上げさまざまな模様を表現する「組子」。細くひき割った木に切り目を入れて曲げていくことにより、花びらの輪郭を作る。角度は切る回数によって変わっていくので、作品の大きさに合わせて角度を調整することができる。


能作の『かんばせ』シリーズ

 「かんばせ」とは「顔」のこと。人の顔には表情が、自然の顔には景色が、モノの顔には意匠がある。能作の『かんばせ』シリーズの発想は、そこから生まれたという。写真の作品は、違う角度から見ると色が変わっていく。そこに人間の多様な表情や日本の変化に富む自然が表れているのだろう。

 同展を訪れた中国魯迅博物館の館長・楊陽氏はすばらしい作品の数々を見て、「以前の中国は、経済発展が遅れていたので、こうした伝統的な職人精神が反映された日本の工芸品を取り入れる機会はあまりありませんでした。今こそ偏狭な民族主義を捨て、われわれが日本から良いものを学ぶ時です」と感想を述べた。

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