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加藤嘉一:「言語」から未来の中日の実力構図を読む

中国のメディアで活躍する北京大学の「カリスマ留学生」加藤嘉一さんは、初の中文著書となる『以誰為師』を発表した。同書は「体験編」「感受編」「観察編」「思考編」「探索編」に収めた125の文章を通して、加藤さんの中日両国の関係、交流などに対する見方を伝えている。この中で、中国語ができる日本人が、日本語ができる中国人と交流する際、双方が日本語を用いる点に注目。こうした状況が中日関係の未来における実力構図を決定し、日本が文化面で下位に置かれる可能性があると、以下のように指摘している。

中国語と日本語はいずれも習得困難

中国と日本はいずれも東方文化圏に属する。文化面からみて、中国と日本は同じ流れを汲む一衣帯水の隣国同士だ。現在、私達は政治、経済、貿易、金融、軍事、外交関係を絶えず注目しているが、文化関係を軽視すべきではない。中日両国が現在、良好な文化関係を築く中で、言語コミュニケーションが非常に大きな推進力を有している。まず、言語コミュニケーションを行うことで、相手側の文化をより深く理解することができる。

私が中国に来て3年が経った頃、ある予感が少しずつ湧き始めた。それは「言語」が中日関係の未来における実力構図を決定する可能性があるということだ。

まず、中国人が日本語を話し日本人が中国語を話す点から考えてみよう。中国人と日本人いずれにとっても、1つの外国語を習得するのは容易なことではなく、精通レベルに至るのは更に困難である。まして、中国語と日本語はいずれも豊かな表現性を持つ奥深い言語であるが、複雑な文法体系、文字構造、発音体系、表現方法、文化要素を有している。中国語と日本語は英語よりもはるかに習得困難な言語だとは言わないが、英語よりもはるかに複雑で、奥深いと断言できる。

現在、中国人が日本語を、日本人が中国語を話す状況を見て、私は比較的ダイレクトでリアルな感想を持った。率直に言えば、人口比を考慮しても、中国人の日本語習得・精通率に比べ、日本人の中国語習得・精通率が非常に低いのは明らかだ。私の知る限りでは、東京、北京、大阪、上海のいずれにおいても、日本語ができる中国人と中国語ができる日本人が会した時、ほとんどの場合、日本語を話すことになる。これは私が5年間、中日交流活動に携わり身をもって実感したことだ。

日本人は中国語を話す努力をすべき

もちろん、こうした状況から「日本人の中国語のレベルが低い」と結論を下すことはできない。このような現象の背後にも両国の国民性から生じる原因がある。だが、中国人を前にして、日本人はなぜいつも積極的に中国語を話そうとしないのか。中国語を勉強しているのに、こうした姿勢を恥ずかしいと思わないのだろうか。多くの日本語を学んでいる中国人の友人は、中学生、大学生、「社会人」を問わず、様々な手を尽くし日本語を話す機会を得て、全力を傾け日本語レベルを向上させようとする。彼らの目には進取の勇気に満ちた輝きがある。では日本人はどうか。なぜ彼らと競おうとしないのか。多少なりとも中国語を習得すれば、必ず直接的あるいは間接的に未来の中日両国の交流に結びつくのだが……。

私はどのようにしても、ある憂慮を振り払えないままでいる。つまり、上述の状況が続けば、日本は中日関係、中日交流の中で劣勢に置かれるのではないだろうか。中国は近隣の最大の貿易相手国であるため、日本が中国語を習得しこれに精通した人材を育成する必要性は差し迫っている。言語コミュニケーションは相互的である。このため、効果、利便性、合理性などの角度から、日本人と中国人が交流する際、どちらかの言語を選び、どちらかが母国語でない言語を話すことになるのは当然である。だが、ほとんどの場合、中国語ではなく、日本語で話すことになる。

中国人と日本人が英語で交流するのも非現実的

相対的な角度から述べてきたが、中日関係が対等であることを心から望む日本人として、まず、中日両国間において「言語」レベルで、バランスのとれた構図を整える必要があると私は考える。さもないと、文化交流で本当の対等な関係を築くことはできないだろう。

中日両国民は英語で交流すればよいのではないかと提案する人もいるかもしれない。こうした考えも道理に適っているが、中国人と日本人は英語という中国語でも日本語でもない「第三の言語」を使い、あらゆる問題を解決することはできないと私は思う。これには2つの原因がある。1つ目は、日本人の英語のレベルが中国人よりもはるかに低い点。2つ目は、東方文化に属し、思考方式が非常に独特である中国人と日本人にとって、完全に西洋言語の英語で相互交流と相互理解を進めるのは非現実的である点だ。

要するに、相手を理解し信頼するようになるには、相手の言語を習得し、それを用いて交流しなければならない。言語は2つの国が交流する重要なツールであり、交流によって生産的な力が生み出されるのである。

 

「チャイナネット」 2009年7月21日

 

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