商売上手で知られるユダヤ人の言葉を借りれば、女性と子どものビジネスに最大の商機がある。中でも化粧品は重要な分野だ。中国の化粧品市場では、急速な経済成長を背景に需要がこれまでになく拡大しており、化粧品大手ひいては化粧品と全く関係のない企業までもが中国進出に躍起になっている。富士フィルムはこのほど、中国の化粧品市場に本格進出することを発表した。中国紙、北京青年報が伝えた。
▽写真フィルム大手、化粧品市場に参入
中国のフィルム市場で米のフィルム・映像機器大手コダックと激しい市場争いを過去に繰り広げた富士フィルムが10日、中国の化粧品市場に参入することを発表、上海コンサートホールでメディア向けのブリーフィングを盛大に行った。自社開発した高級スキンケア商品「アスタリフト」シリーズを中国市場で本格的に販売するという。
同社は2010年9月から、中国最大の通販サイト「淘宝商城(タオバオ・モール)」でプロモーション活動を開始した。同サイトに設けられたオンラインショップが現在、中国で唯一の販売ルート。ラインナップは美容液、乳液、メイク落とし、洗顔料、ベース・クリームなど計8商品で、価格は240元(約3千円)から770元(約9600円)。サイトに表示されている数字を見る限りでは、売れ行きは芳しくないようだ。
「フィルムと化粧品はつながりが全くないというわけではない」----。化粧品市場への参入に踏み切った理由について、富士フィルムの横田孝二総裁はこう語る。化粧品の原料に使われるコラーゲンは、富士フィルムがフィルムを製造する過程で必要不可欠な成分であるほか、フィルム製造で用いられるフィルムの色あせを防ぐ防酸化技術も、肌のしみなどを防ぐアンチ・エイジング(抗加齢)に不可欠な技術という。同社のスキンケア商品には、1934年の設立以降培われてきた抗酸化技術や、世界をリードするナノテクノロジーが応用されており、強力な抗酸化効果が備わっている。
富士フィルムは2006年から、日本国内でスキンケア商品の販売に乗り出した。自社のスキンケア・ブランド「アスタリフト」は国内4千店舗以上で取り扱っている。2009年には香港にも直営店をオープンした。
報告書によると、低い市場浸透率と巨大な購買層が、世界の化粧品メーカーを引き付ける中国の2大要素という。急成長する中国市場をめぐり業界各社が争奪戦を繰り広げる中、他業界からも商機をねらって新規参入が相次いでいる。
国内企業では、漢方薬の老舗がこの分野で成功を収めている。例えば痔の塗り薬が主力製品の老舗「馬応龍」だ。この漢方薬メーカーは2008年6月に目もとのくま取りクリームを発売。市場に投入してすぐに「予想以上に好調な売れ行き」と発表した。「片仔コウ」(コウはやまいだれに黄)や「同仁堂」も、自社の漢方化粧品ブランドを立ち上げ、にきびケア用品やフェイスケアマスク、目もとのくま取りクリームなどを発売している。