「四喜丸子(肉団子のスープ煮)」が「Four glad meat balls(4つの嬉しいミートボール)」、「木須肉(豚肉・卵・キクラゲの炒め物)」が「Wood mustache meat(木の髭の肉)」、「醉蟹(カニの酒漬け)」が「Drunk crab(酔っ払ったカニ)」--。思わず笑わずにいられないこのような中華料理名の「珍訳」が、まもなく北京から姿を消すかもしれない。市の外事弁公室と市民講外語弁公室はこのほど「中華料理メニュー英訳法」を共同出版し、2158種類の中華料理に正式な「英語名」をつけた。北京日報が報じた。
▽中華料理の統一規範に
国際化が進むにつれ、中国でも英語版メニューや中英2ヶ国語のメニューを出すレストランが増えてきた。しかし、これまでは固定訳がなかったため、中国語をそのまま英語に直訳した「誤訳珍訳」が頻出していた。例えばあるレストランでは「火爆腰花(豚の腎臓の炒め物)」を「Pork flower(豚肉の花)」と訳し、外国人観光客を大いに悩ませた。
外事弁公室の責任者は「中国の料理名には材料だけでなく、文化や歴史、人名など、多くの意味が込められており、とても独特だ。レストランの英語のメニューはおかしなものばかりで、外国人に理解されないのはもちろん、『チャイニーズイングリッシュ』に慣れた英語教師ですらちんぷんかんぷんだ」と語る。
出版された「中華料理メニュー英訳法」では、家庭料理から高級料理にいたるまで中国8大料理の主な料理名が、外国人が理解できる英語名に翻訳されている。外事弁公室の責任者は「北京のレストランは、この本に基づきメニューを作成することができる。ただしこれは強制ではない」と語る。
▽一部の訳に疑問も 童子鶏がスプリング・チキンに?
中華料理の名前は数多く、独特な由来を持つものも多い。基準となる英訳を決定するにあたり、編集委員会・専門家チームの間で議論が起きた料理名もあった。例えば、「童子鶏(交尾したことのないオスの若鶏)」はこれまで「Chicken without sex」と訳されていたが、正式訳名は「Spring chicken(春鶏)」とされた。この訳はネット上でも物議を醸した。
北京外国語大学の陳琳教授はこれについて、「英語では動物の年齢を春夏秋冬で表すため、Spring chicken は英語の特徴に合致する。童子鶏は交尾したことがないオスの若鶏を指すが、生まれてから成熟するまでの鶏は一般的に英語でSpring chickenと言う」と語る。
陳教授はまた、「紅焼獅子頭(肉団子の醤油煮)は今回、正式訳名がBraised pork ball in brown sauceとなった。これまではRed burned lion head(赤く焼けたライオンの頭)などと訳されていたが、メニューにライオンの頭などと書いてあったら、外国人は動物保護組織に訴えかねない」と笑いながら語った。
この他、上述の「四喜丸子」は「Braised pork balls in gravy」、「魚香肉絲(魚香味の肉の細切り炒め)」は「Yuxiang shredded pork」、これまで「Tofu made by woman with freckles(そばかす面の女性が作った豆腐)」と訳されていた麻婆豆腐は音訳で「Mapo tofu」となった。
▽7つのルールにそって料理名を英訳
中華料理名は様々な由来があり、翻訳方法もそれぞれ異なる。陳教授によると、専門家チームは意訳を中心とした7つの翻訳ルールに従い、全く中国文化を知らない外国人旅行者にも一目で意味が分かるように英訳を行ったという。
具体的には、▽メイン材料とサブ材料の名前を羅列した料理名(例:「百霊菇扣鴨掌」→「Mushrooms with duck webs」)▽料理方法と、その材料名を羅列した料理名(例:「火爆腰花」→「Sauteed pig kidney」)▽料理の形や口当りと、その材料名を羅列した料理名(例:「脆皮鶏」→「Crispy chicken」)--といった具合だ。
また、料理名に人名や地名が入っている場合は特徴として残された。(例:「麻婆豆腐」→「Mapo tofu」、「北京炸醤面(ジャージャー麺)」→「Noodles with soy bean paste Beijing style」)
中国独特の食品は、漢字のピンインや音訳がそのまま採用された。例えば「餃子」はこれまで「dumpling」と訳されてきたが、正式訳名は「Jiaozi」となった。同様に、包子はBaozi、豆腐はTofuなど。このほか、直訳できない、または翻訳しても原材料が説明できないものもピンインでそのまま訳された(佛跳牆、驢打滾、豆汁など)。これらの料理名には、主な材料などの注釈がつけられた。
「人民網日本語版」より 2012年3月14日
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