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日本は再び安倍時代に

 

年末を迎え、日本政界の新旧交代劇もクライマックスに突入した。26日招集の特別国会で、自民党の安倍晋三総裁が第96代首相に就任する。一方民主党は25日午後の両院議員総会で、衆議院選挙での惨敗を受けて引責辞任した野田佳彦氏に代わり、海江田万里氏を党代表に選出した。

■政権担当能力が試される政治・経済の難題

日本の民衆は走馬燈のような首相交代劇にとっくに慣れている。今回の総選挙での自民党の勝利は実力によるものと言うよりも、民主党政治への人々の大きな失望によるものと言った方がいい。

安倍氏が今回首相に就任して直面する難題は、数年前と比べて少しも減っていない。日本内閣府の調査によると、日本の景気指数は7カ月連続で下落し、経済は衰退に直面している。政治構造にも深い変化が生じている。日本では自民党の一党優勢が長期間続いたが、今回の総選挙では12党が争いを繰り広げた。特に「第三勢力」の台頭は急速で、日本政界は「戦国時代」に突入したと指摘するメディアもある。安倍氏が信任に堪え、日本の未来のために長期的で安定した戦略を定められるかどうか、その政権担当能力が大きく試される。

安部政権は政権パートナーの公明党との関係もうまく調整しなければならない。「環太平洋経済連携協定」(TPP)交渉、原発の存廃プロセス、平和憲法改正といった重要な議題において、公明党と自民党の主張は完全に一致するわけではない。公明党の山口那津男代表も、自民党が憲法改正問題で独断専行に走った場合は牽制すると表明している。

■近隣諸国に緩和のシグナル

安倍氏は最初に首相に就任した2006年に中日関係の「氷を砕く旅」を行った。だが今回の総選挙中は平和憲法改正などの強硬発言を繰り返し、近隣諸国に日本「右傾化」への懸念を引き起こした。安倍氏は日米同盟を強固なものにすることを外交の最重要目標としている。衆議院選勝利後のオバマ米大統領との電話会談では「日米同盟は日本の外交および安全保障の基礎であり核心だ」と再び強調。「日米両国は平和で安定したアジアを協力して構築する。日本も各極・勢力間の均衡をできる限り維持して、中国のたゆまぬ発展・強大化に対処する」とも述べた。

一方で安倍氏は、近隣諸国との関係緩和と見なされるシグナルも発している。自民党が政府主催の「竹島(韓国名・独島)の日」記念行事を来年は開催せず、韓国に特使を派遣することを決定したことなどだ。安倍氏はまた、選挙戦時に打ち出した釣魚島(日本名・尖閣諸島)への公務員駐在の先送りを発表し、「日中関係は極めて重要な2国間関係の1つだ。戦略的互恵関係の出発点に戻るべく努力する」と強調した。25日に北京に着任する木寺昌人駐中国大使も先日の本紙(人民日報)の取材に、日中関係改善を最重要任務とする姿勢を表明した。日本メディアは、安倍氏は首相就任後、選挙中の「タカ派」発言を改め、より実務的な政策をとって対中関係を改善すると考えている。

■「安倍効果」はまだ観察が必要

現在安倍氏が最も重視しているのは、日本銀行を説き伏せて金融緩和政策を講じさせ、2%のインフレターゲットを実現することだ。総選挙後間もなく、安倍氏は日銀の白川方明総裁と会談し、「無制限、無期限」の金融緩和政策を実行すると表明し、歩調を合わせるよう日銀に求めた。だが白川総裁は日銀の考えでは日本が耐えられるインフレ率は最大でも1%だとして、これを受け入れなかったようだ。安倍氏は、受け入れられない場合、就任後に日本銀行法を改正すると脅した。現行の日本銀行法では、日本銀行は強い独立性を有し、金融政策は総裁、副総裁など9人で構成される政策決定委員会の投票によって決める。金融政策への安倍氏の大仰な介入は、日本国内で議論を呼んでいる。安倍氏への妥協なのか、日本銀行は20日、資産買い入れ基金を91兆円から101兆円に拡大すると発表した。

市場は安倍氏の経済政策を強く支持している。安倍氏の勝利以来、日本円は続落し、対ドルで18カ月ぶりの安値を付けた。25日の東京株式市場の日経平均株価は140円高の終値1万0080円(1.41%上昇)をつけ、再び1万円台を回復した。

だがある専門家は、財政支出拡大と大幅緩和という安倍氏の経済政策は円安促進にはプラスだが、日本の経済問題は構造的なものだと指摘する。日本は人口減少と高齢化が進行し続け、国債残高がすでに対国内総生産(GDP)で200%に達しているため、この政策の実施には大きなリスクが伴う。紙幣増刷というやり方は、潜在的成長力を高めたり、債務が制御不能になることを回避するといった後続措置を伴わない場合、短期的な刺激効果を果たすのがせいぜいだ。従って「安倍効果」が続き、日本経済の回復の活力を促すかどうかは、まだ観察が必要だ。

【論評】王屏・中国社会科学院日本研究所政治室研究員

安倍氏が就任後直面する最初の難関は「ねじれ国会」への対応だ。自民党は衆議院で安定多数の294議席を獲得したが、参議院では242議席中83議席しかなく、過半数に達しないだけでなく、第一党ですらない。このため来年の参議院選までは、自民党は慎重に政権を運営しなければならない。

「安倍政治」の核心は「戦後レジームからの脱却」だ。党内では持続可能な「新しい自民党」を構築。国内では憲法改正、教育の見直しを通じて、日本民族の誇りを取り戻す。国外では、日本を戦争のできる国にしようとしている。先日、安倍氏は父の墓前で「今度はしっかりとやり、歴史の与えた重責を果たす」と改めて誓った。

この他、安倍内閣の政策主張と他の各党間との相互作用が、総選挙後の政界再編の構造的特徴を決定づける。日本政界の「第三次右傾化」態勢が徐々に形成されるに伴い、自民党の政権運営に右傾勢力がどのような影響を与えるかが注目されている。これと同時に、保守の自民党内部では新保守と旧保守との争いや、若手・中堅派と重鎮派との違いもある。これらも自民党が政権運営にあたり真剣に扱わなければならない政治課題だ。

安倍氏の中国観はその著書『美しい国へ』にある程度示されている。安倍氏は「隣国である中国と友好関係を保つことは日本にとって、経済面からも安全保障面からも大変重要だ。中国経済の発展は日本経済の成長と緊密に関係する」としている。安倍氏は日中関係は「政経分離」原則に従うべきであり、政治問題によって両国の経済的互恵関係が損なわれることがあってはならないと主張している。だが政治と経済が思い通りに分割できるものなのか?

 

「人民網日本語版」 2012年12月26日

 

 

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