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中日の産学官の力を結集し、都市化と環境問題の解決に道筋を

 

基調講演を受けて、マスタープラン作成に参加した専門家が補足説明をした。森本章倫・宇都宮大学教授はマスタープランの中の交通戦略について、①交通計画に合わせた土地利用で街づくりをする、②都市間の移動は地下鉄などによる高速移動、地区間はバリアフリーの路面電車(LRT)による低速移動と役割分担をする、③街の成長に合わせた交通ネットワークの拡張をはかることを土台とし、「人が自由に徒歩で楽しめる街づくりを目指す」と述べた。

迫慶一郎・SAKO建築設計工社社長は、ニューシティの具体的な街づくりプランについて紹介。PM2.5の発生を始めとする中国の大気汚染深刻化の実情を踏まえ、「都市化にはエコが必須」「人が主役の街づくり」の観点から、①原則としてLRT沿線の500m圏を開発範囲とする、②緑と水を隅々まで行き渡せる、などマスタープランの方向性を紹介した。

宇田川燿平・雲河ジャパン社長は、都市のIT化について提言した。情報収集基盤整備によって得た膨大なデータの集積と解析をもとに、「ニューシティ内の交通、エネルギー、購買、医療などさまざまなサービスの迅速化、高度化をはかり、さらにライフスタイルの設計に活かす。また、新しい企業戦略、販売戦略、ビジネスモデルが創出できる」とし、ニューシティのIT化により「人々にやさしい都市開発モデルを目指す」と強調した。

パネルディスカッションでは、鎮江生態ニューシティプロジェクトへの賛同が日中欧のパネラーから一致して得られた。

今年4月に訪中し、鎮江を視察した南川秀樹日本環境事務次官は、①環境、資源問題の解決を目指す②環境保全に関する国際秩序形成に貢献するため、両国の日常的な対話を重視する③進展目覚ましい新しいグリーン経済などの分野で、日中双方向の経済、技術交流を行うなど、日本と中国の協力目標を提示した上で、2011年3月の東日本大震災後の人々の意識の変化について触れ、「人と人、地域と地域のつながり、何よりも命の尊さを実感できる社会づくりへの方向性は日中共通である」と力説、「アジアの二国としての協力が世界のプラスとなるように、進めていこう」と呼びかけた。

袁喜禄・中国国家発展和改革委員会発展計画司副司長は、都市化に伴う資源消耗、環境への圧力、エネルギー不足などの課題への対応が緊急かつ重要であるとの視点から「環境と都市化の分野での日中協力の取り組みが、マクロ、ミクロで不可欠である」と提起した。

その上で省エネ型建築、分散型エネルギーシステム、モジュール化、機能集中型デザインで際立つ鎮江生態ニューシティは、「日本とヨーロッパの専門家による理念や技術が盛り込まれながら、同時に江南の自然の特色を活かした、中国の未来の発展モデルとなりうるプロジェクトである」と高く評価した。

山本和彦・森ビル副社長執行役員は、第二次大戦後50年にわたり東京都心部の再開発を手がけた森ビルの経験を踏まえながら、鎮江ニューシティプロジェクトのモジュール型都市発展モデルが、環境と都市化の両立を目指したアジアの全く新しいガーデンシティモデルであると高く評価した。その上、プロジェクトの実現に向けて①都市開発ビジネスモデル作り、②車社会突入前の交通基盤整備、③多様な人々の居住を念頭に入れた都市づくり、④都市のリーディング産業と仕事場づくり、⑤35%の農地保存に向けた具体策づくりなどについて提案した。

藤野純一・国立環境研究所持続可能社会システム研究室主任研究員は、東日本大震災被災都市の現地での復興支援の経験を踏まえながら、ニューシティの建設には、「街の自主性の尊重と人々の“オラが街”という感覚、予測される高齢化など住民の暮らしをトータルで考えて行く視点が欠かせない」との見解を述べた。

イタリアの著名な建築家、Mario Bellini氏は、鎮江ニューシティのマスタープランについて、「美しい緑の地域と、農業用地があり、水の中に5つの花の島が浮かぶ各都市が快適な職住空間を作っている」と評価、「イタリアのコモ、ルカ、ピサなどの都市が鎮江ニューシティと同様のコンセプトを持ち、人間としての誇りをかき立てる都市の基本的要素を備え、健康的な暮らしぶりが証明されている」と述べた。さらに、試験エリアの都市コンセプト設計を提案し、会場を魅了した。

パネルディスカッションの司会を務めた周教授は、「都市づくりにはイマジネーションが必要であり、これに携わる人々がWinWinできるビジネスモデルづくりがカギとなる。ニューシティプロジェクトへの取り組みを通じてアジアの将来をデザインするメカニズムを作り上げたい」と語った。

総合司会の中井徳太郎・環境省大臣官房会計課長は、鎮江ニューシティをモデルに環境文明都市建設を提唱し、資源と環境の問題に日中が協力して取り組み、「国境無き“地球益”に向けて努力していこう」と締めくくった。

シンポジウム開催後、レセプションが開かれ約150人が来場、多数の来賓が挨拶しシンポジウムの成功を祝った。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年6月13日

 

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