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東郷和彦氏:中日は対話を通じて理解を深め、膠着状態の打開を

 

昨年9月以来、中日関係は膠着状態に陥っている。両国の有識者は知恵を出し合い、膠着状態の打開策を探っている。第9回北京-東京フォーラムの開幕を前に、中国日報社は京都産業大学世界問題研究所長の東郷和彦教授に単独インタビューを行った。東郷先生は日本外務省条約局長を務めた経歴を持つ。

--中日関係の現状がこれほど良くない中、膠着局面をどう打開するのか。

もちろん難題は数多くある。だが、今は釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題だ。私は一刻の猶予もならないと考えている。(両国は)現在のこの危険な状態からできるだけ早く抜け出すべきだ。そのために、われわれは何をすべきか。結局のところは、やはり対話だ。今回の北京-東京フォーラムで、まずわれわれ学者のレベルで対話に努める。こうした交流によって、双方は相手に対する理解をゆっくりと、少しずつ深めることができる。(交流が)両国の政策決定者のレベル、つまり政府間の対話にまでできるだけ早く発展することを希望する。

--安倍首相は2006年の第1次安倍政権期、中日関係の改善に積極的に取り組んだ。だが現在の安倍首相は非常に断固たる姿勢を取っている。それでも安倍首相は(中日関係を)好転させることをできると思うか。

2006年から2007年までの1年間は安倍政権期で、この時期に(日中関係は)急激に好転した。この突然の好転には安倍首相が関係している。安倍首相が良い政策を行ったからだ。一方、昨年の(両国関係の)悪化は安倍(政権下で発生したもの)ではなく、前(野田)政権下のものだ。安倍政権は12月になってようやく発足した。中日関係改善の潜在的エネルギーが安倍首相にはあると思う。

--だが安倍首相は同時に軍事面などで別の事もしており、中国に不安を抱かせる恐れがある。中日間には事実上、信頼感がない。どうすれば信頼感を構築できるか。

対話しかない。中国は2つの事を懸念しているのだろう。1つは(日本の)憲法9条に対する解釈、もう1つは日本が沖縄周辺で海上自衛隊の力を強化することだ。もちろんこの2つが無関係だとは言わない。関係がある。日本がある程度力を強化するのは、やむを得ないことだ。もちろん、これを大声で宣伝し、中国を挑発するのは余り良くない。だが、この政策は中国と戦争を発動するためではない。日本は中国との戦争を発生させないために、こうしているのだ。だから、こうした事は相手国、つまり中国と対話を行い、知ってもらわなければならない。そして相手国に知ってもらう唯一の方法が対話だ。今おっしゃったように、(日中両国には)現在信頼関係がない。(両国は)小さな事から始め(ることができ)、双方共にそうすれば、信頼感は深まる。

--多くの学者は、中国と日本との意思疎通のパイプがどんどん減っていると考えている。以前は何か起きても意思疎通のパイプが多くあり、問題を比較的うまく管理、コントロール、解決できた。だが今では減っている。これは両国関係にとって危険なことではないだろうか。問題にぶつかっても解決が難しい。

私もそう考えている。これは両国関係が現在の状態にまでなった1つの大きな原因だ。以前は両国関係が異常をきたすと、それ以上悪化しないよう、多くの予備パイプ(人または団体)があり、悪化を抑制できた。このような一種のメカニズムが以前はあった。

--では、こうしたパイプが減った理由は何か。

もちろん、中日双方に原因がある。日本は1989年の冷戦終結まで国力が伸び続けた。その後、各方面で余り順調にいかなくなった。このため、だんだん考えに力が及ばなくなり、中国に対する注目度も下がった。これは大まかな説明に過ぎない。中国は1992年のトウ小平氏による南巡講和後、だんだん強大化してきた。中国は経済力も、政治力も、軍事力も次第に強まってきた。したがって日本は下降し、中国は上昇している。中国の対日依存度も下がっており、日本は中国以外の国に注目し始めた。

だがそのために、ここで戦争を発動するだろうか?余りにも馬鹿げている!現在と比べ、特に1970年代、80年代の20年間は双方共に懸命に努力していた。したがって、構造的に言って、中日双方はこのようになった(距離が開いた)が、これは仕方のないことだ。だがこれは両国関係が現在のようにまずい状態になったことの理由にはならない。

--日本は現在、東南アジア諸国との協力が非常に多い。こうした協力は中国を牽制するためだとの認識が日本国内にもある。これをどう見るか。

日本にとって最も重要な政策はやはり対中政策だと思う。現状に基づくと、中国に対しては現在2つの戦術しかない。最も重要な2つでもあるが、1つは封じ込め、1つは対話だ。これは日本外交最大の課題だと思う。だが現在のように中日関係という問題がここまで深刻化すると、日本にとって最重要課題は周辺国との関係をうまくやることだ。日本の周辺国とはどの国か?まず米国、それから韓国、ロシア、東南アジア諸国だ。こうした国々と友好的に付き合うこと。これが今日本がやらねばならないことだ。これはもちろん中国と「けんかをする」ためではなく、中国を脅すためでもない。だが日本の外交力を高めるには、こうした国々と仲良くするほかなく、「けんかをする」わけにはいかない。

--日本は中国との関係が良くなく、韓国との関係も良くない。東アジアで日本は孤独を感じないのか。

現在日本には孤独を感じている時間はなく、やらねばならない事が多くある。まず、中国との関係の立て直しだ。このため、孤独を感じている時間はない。日本は現在、ロシアとの友好関係構築に努力している。だが私は、いずれにせよ日本にとっては中国との関係が絶対的に第1だと考えている。

 

「人民網日本語版」2013年10月25日

 

 

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