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7000万人の 貧困脱却作戦

 

「5年のうちに7000万人の貧困脱却を実現する」ということは、つまり中国は貧困人口を毎年平均で1000万人以上削減し、毎月少なくとも100万人の貧困脱却任務を達成することを意味する。これは世界のいずれの国にとっても、ほとんどミッション・インポッシブルだ。しかし、中国はこの難題に挑戦しようとしているだけでなく、すでに行動を開始しているのだ。

どれだけ難しいか

中国政府は1980年代に貧困との戦いを宣言し、すでに7億人の貧困人口削減を実現してきたが、貧困対策の任務は依然として困難なものだ。国家統計局のデータでは、2014年末時点で中国の農村貧困人口は7014万人となっており、これは英国、あるいはフランスの総人口をも上回っている。

「中国の貧困人口規模は膨大で、より深刻なのはそうした人々が主に中西部、とりわけ山岳地域や辺境地域に暮らしていることです」と、貧困対策調査研究に参画している中国社会科学院農村発展研究所の李国祥研究員は話している。「これらの地域は基礎的条件が悪く、開発コストがかさみます。このため、貧困脱却の難度がかなり高くなっているのです」。これらの貧困層は一貫して中国政府の貧困対策事業の中で最も噛み砕きづらい「硬い骨」(難事)となっている。これらの貧困にあえぐ人々は生産・生活条件が整わない、生態的にぜい弱な地域に暮らしており、大きな代価を支払って貧困援助を行っても、一時的な効果しかもたらさず、彼らはすぐにまた貧困状態に戻って(1)しまうと、国務院貧困対策開発指導グループ弁公室の劉永富主任は指摘している。

困難はそれだけでない。国の貧困認定基準も変化しており、一部地域の貧困対策効果は、社会の発展の歩みに常に追いつかない状態だ。1985年には年間所得が150元以下の農民が貧困人口とされていたが、94年にはこの基準が400元に引き上げられた。2008年から10年にかけては、貧困ラインは1067元に引かれていた。「最近では、貧困基準がひんぱんに更新されており、11年には2300元以下が貧困層となり、14年にはこれが2800元に改められました。もし全国各地のその年の物価に照らして計算すると、15年の貧困基準は2900元になるばすです。基準がほとんど毎年上昇するため、貧困対策の現場で働く幹部は、大きな努力を払っても効果が限定的だと感じています」と劉主任は説明する。「もし現行の物価指数で計算すると、20年に全面的な貧困脱却が実現した時には、貧困基準は4000元前後になっているはずです。貧困対策事業を担当するほとんどの幹部にとって、難度は小さくありません」

このほか、国が以前行っていた貧困対策措置も批判の対象だ。過去、中国は習慣的に中央財政と地方財政が「貧困対策費」を貧困地域に振り向け、貧困層に対して頭割りで給付していた。このような湛水灌漑(2)(耕作地全体を水没させる灌漑)式の貧困対策措置は、一部の人々の貧困脱却の助けにはなっても、生産能力欠如の貧困者にとっては、隔靴搔痒に過ぎず、資金が底をつくと、彼らはまた貧困状態に戻ってしまっていた。「輸血」が一時的に人の命を救うことができても、それだけでは独り立ちできないのと同じだ。

人が多く、条件が悪く、基準が高く、政策が大ざっぱ、これが「7000万人貧困脱却事業」に立ちはだかる四つの難関となっている。

上から下まで厳粛に誓約

「貧困対策事業の道では、1戸の貧困家庭、1人の貧困者も漏らしてはならない」、今年2月3日、習近平国家主席は江西省井崗山地区で貧困村を視察した際に強調した。習主席はこれで4年続けて春節の直前に貧困地域を視察したことになり、そこからも貧困援助、貧困脱却が習主席の最も気にかける問題の一つであることが見て取れる。

李克強国務院総理はたびたび視察、調査・研究のため貧困地域を訪れており、15年、16年と連続で「政府活動報告」の中で、毎年1000万人以上の貧困削減を政府の年度目標に入れている。今年1月、汪洋国務院副総理が国務院貧困対策開発指導グループのグループリーダーに就任し、副総理の立場で自ら貧困対策事業中の各問題について調整と解決に乗り出した。「力の入れ方は、前代未聞のものです」と、劉主任は指摘している。「党中央、国務院が貧困対策事業に対して格別の関心を示していることは各級の党委員会、政府、職能別部署に伝わっています。これは強大な貧困対策パワーを集中し、貧困対策事業を強力に推し進めるものです」

15年11月27日、中央貧困対策開発事業会議が北京で招集されたが、これは「史上最も高規格」の貧困対策会議と呼ばれた。習近平主席をはじめとする7人の中央政治局常務委員全員が出席したばかりでなく、中西部地区22の省・自治区・直轄市の党と政府の主要責任者が中央に対して貧困脱却堅塁攻略戦の責任承諾書を提出した。この会議の席上、現在の貧困削減の難度が客観的に分析され、過去の「扶貧開発(貧困対策の開発)」が「脱貧攻堅(貧困脱却の堅塁攻略戦)」に改められた。習主席は、貧困地域は発奮して貧困を抜け出すという志と内生的原動力を引き出す必要があると指摘した。また、「貧困支援にはまず志を支援し、貧困を治めるにはまず無知を治す」「各地方には産業が必要で、労働力があり、内外が結び付いてこそ発展が可能だ。最終的にはやはり自分自身を養えることだ」と強調した。救済式の「輸血」から自身を奮い立たせる「造血」へというのが今後の中国の貧困対策に対する重要な発想転換だ。

会議は今回の貧困対策の「超通例的動員」「超通例的責任追及」「超通例的資金投入」「超通例的鼓舞」「超通例的撤退」という特徴を明らかにさせた。中央から地方まで、各級の党委員会と政府は貧困脱却の堅塁攻略戦を第一の民生事業として押さえ、各級の幹部に貧困脱却の責任承諾書に署名させた。また、年ごとの貧困脱却の堅塁攻略戦報告と監督・査察制度を打ち立て、貧困脱却堅塁攻略戦の実績を幹部選抜、評価の重要なよりどころとするとした。

現在、各級政府が貧困村に12万5000人の作業チームを派遣しており、村に駐在する幹部は43万人に達している。全国全ての貧困県、貧困者の具体的状況を網羅する全国ネットのオンライン・ファイルがすでに出来上がっている。

北京師範大学所得分配研究院の李実執行院長は、各級幹部が貧困脱却堅塁攻略戦の責任承諾書に署名したことは、中国政府の必ず行わなければならないという決心、勇気を表すものだと考えている。李院長は「貧困脱却堅塁攻略戦責任承諾書への署名はまさに軍令状によって誓いを立てたのと同じで、非常に重要なプロセスです。この先5年のマクロ経済情勢にはある程度の変化が考えられ、貧困脱却の有利な条件は以前ほどではないかもしれません。その上、最後になるほど、貧困削減効果はてい減していき、事業はより困難になるかもしれません。軍令状で誓いを立て、監督・査察と責任追及を実行するというのは、つまり今後不利な条件下であっても、貧困対策事業の各段階が着実に実施されるのを保証できるということです」

精密・正確な対策

勇気と決心があっても、「硬い骨」を噛み砕くためにはさらに知恵も必要だ。中央貧困対策開発事業会議で、習主席は「精密かつ正確な貧困対策」という理念を提起した。習主席が述べたところによれば、これはかつての湛水灌漑式を精密・正確な点滴灌漑(3)式に改めるというもので、それぞれの貧困地域や貧困者について貧困の根源を正しく探し出し、指向性の強い方法を採用して彼らの貧困脱却を手助けすることでもある。習主席はこれを「五つの集団」事業に概括した。すなわち生産を発展させ貧困脱却する集団、移住で場所を変え貧困脱却する集団、生態補償で貧困脱却する集団、教育の発展で貧困脱却する集団、社会保障で貧困脱却する集団だ。習主席は次のように計算している。「2020年までに、産業支援で3000万人の貧困脱却を解決することができる。雇用の移転を通じて1000万人を貧困脱却させられる。移住によって1000万人を貧困脱却させられる。この合計で5000万人前後となる。残りの2000万人は完全にあるいは部分的に労働能力を喪失した貧困人口であり、全て生活保護のカバー範囲に組み入れられ、社会保障によって貧困脱却を実現できる」

「五つの集団」事業の鍵は「精密・正確」にある。習主席は「貧困対策開発は精密・正確が貴く、精密・正確が重く、成否は精密・正確にある」と強調している。また、各地はいずれも支援対象を精密・正確に把握し、プロジェクトの手配を精密・正確に行い、資金を精密・正確に使用し、措置を精密・正確に各家庭に行き渡らせ、村に応じた人の派遣を精密・正確に行い、貧困脱却の成果を精密・正確に挙げる方法を考え、実際的な手段で行い、現実的効果を出すよう求めている。

先駆けて作られた貧困情報ファイルは、「精密・正確な貧困対策」を実施する中で基礎的な役割を果たしている。各貧困家庭の「病根」ははっきりと政府の貧困対策サイトに表れている。そして、貧困村に駐在する43万人の幹部は現地の民衆の貧困脱却支援の中で「先導者」と「主力軍」の役割をよりいっそう果たしている。もちろん、「貧困脱却の堅塁攻略戦」はすでに政府の職責であるばかりでなく、社会全体の義務となっており、企業、病院、学校などもこぞって貧困層に向かって手を差し伸べている。

湖南省洞口県双聯村は、村民2768人のうち約3分の1が貧困家庭だ。地元政府はこの村で産業による貧困対策のモデル事業を実施した。洞口県肉類冷凍有限責任公司が村内に養殖専門の協同組合を設立し、162の貧困家庭の450人がこれに参加した。県政府は会社と提携契約を結び、政策、資金面で支援を提供し、会社は規定に基づいて速やかに貧困農家が飼育したブタを買い取るようにした。この、産業による貧困対策を通じて、双聯村の15年の1人当たり年間所得は初めて2400元に達した。

広西チワン族自治区隆林各族自治県徳峨郷常麽村に駐在する貧困対策作業チームは、現地の状況をはっきりと理解した後、村の各家庭のためにメタン発酵槽を建設、現地の人畜排泄物の清潔な処理問題を解決しただけでなく、現地の農業のために有機肥料を提供し、さらに各農家の家庭に安価なメタンガス燃料を提供している。「今、私はブタを飼って年に1万2000元前後かせいでおり、クルミの木は1本につき1000元かせげます。平均して計算すると、家族1人当たりの年間所得は5000元になります」と、村人の陳啓貴さんは笑顔で話す。これについて作業チーム責任者の張建軍さんは「私たちは人々の増産、増収を図ると同時に、彼らの立ち遅れた生産、生活方式を改めたいと考えています。これこそが、われわれ広西の実効性あるメタンガス貧困対策プロジェクトを導入した理由です」と話す。

「精密・正確な貧困対策」は貧困層の衣食問題を解決するばかりではない。今年1月、汪副総理は湖南省で中央の貧困脱却堅塁攻略戦の精神について説明した際に、貧困層の衣食問題を重点的に解決する以外に、義務教育、基本的医療、住居、安全など多方面の問題があることを強調した。このため、中央政府が制定した一連の貧困脱却措置の中では、交通、水利、電力、情報など重要なインフラ整備事業と重要な生態事業をこれらの地域で重点的に行うことが提起されている。貧困家庭高校生の授業料や雑費を完全免除とし、重点大学の貧困地域に向けた特定学生募集計画を拡大する。高額医療保険の全面的カバーを推進する。完全にあるいは部分的に労働能力を喪失した貧困者を全て農村最低生活保護の対象に組み入れる。農村貧困家庭の幼児、特に留守児童に対して特殊な思いやりを与えるなどの内容だ。

中国の「精密・正確な貧困対策」は、スタートでは「精密・正確」を掌握し、過程では「実際的」であることを重んじ、結果では「実効性」に注意を払うということが見て取れる。

世界に対し責任を果たす

今年7月、習主席は寧夏回族自治区で現地の貧困対策状況を視察、調査・研究した際に「全国にはまだ5000万という貧困人口があり、2020年には必ず全てを貧困脱却させるという目標を実現させなければならない。これは私が目下最も関心を持っていることだ」と述べた。

この言葉の中からわれわれは、7000万人の貧困人口から5000万人に減らすのに中国は1年半しかかからなかったことを見ることができ、「精密・正確な貧困対策」戦略が明らかに効果を挙げていることも見て取ることができる。一方で、中国の指導者が「貧困脱却の堅塁攻略戦」任務に強烈な責任感を持っていることが感じ取れる。なぜなら、習主席はかつて中国政府を代表して「全面的小康とは中国人民全ての小康であり、1人も列から遅れることがあってはならない」と誓約をしているからだ。

この誓約は政府の中国を建設する目標であるだけでなく、世界の発展に対する責任でもある。1949年に成立した新中国は、当時世界で最も貧しい国の一つだった。国連アジア・太平洋経済社会委員会の統計によれば、その年、中国の国民1人当たり年間平均所得は27㌦で、44㌦というアジア平均の3分の2に満たなかった。78年まで、中国には7億7000万人の貧困人口があった。

改革開放以来、中国は大規模な開発式の貧困対策を実施してきた。その後の37年間に、中国は累計で7億人余りの貧困削減を達成し、世界の貧困削減に対する寄与率は70%を上回り、世界に先駆けて国連の「ミレニアム開発目標」を達成した国になった。まさに国連の潘基文事務総長が評価しているように「ミレニアム開発目標は成功裏に全世界の10億人を極端な貧困から脱却させたが、中国はこの分野で世界の注目を集める成果を挙げた。その達成は世界の貧困削減任務の4分の3を占めている」のだ。

現在、中国は引き続き「精密・正確な貧困対策」を通じて、2020年に14億人近い中国人全てが貧困を脱却するよう力を入れている。もし目標を達成すれば、中国は自身の力によって全世界の5分の1近い人々を貧困の苦しみから救ったことになる。これは中国の全人類の貧困削減事業に対するもう一つの貢献となる。

中国の貧困には複雑さ、多様性が存在し、貧困削減の過程で生み出した「中国モデル」は世界の他の国と分かち合うことができる。それだけでなく、中国は自国の貧困削減と同時に、積極的に国際的な貧困削減の責任も引き受けている。新中国成立後60年余りにわたって、中国は166の国と国際機関に4000億元近い人民元援助を提供しており、60万人余りの援助スタッフを派遣してきた。中国は前後7度にわたり、債務がかさんだ貧しい国や最も発展が遅れた国の中国に対する満期政府無利息借款債務を無条件で免除した。またアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ海地域、オセアニアの69カ国に医療援助を提供し、120の途上国がミレニアム開発目標を達成するために前後して援助を提供した。

中国のこうしたやり方は、中国の世界発展観から発している。習主席が言うように「みんなが一緒に発展してこそ本当の発展であり、持続的に発展してこそ良い発展」なのだ。

 

 

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