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麻生首相の講演(全文)

 

日本の麻生太郎首相が29日に専用機で北京に到着し、2日間の中国訪問が始まった。今回の中国への公式訪問は、去年9月に麻生氏が首相に就任して以来を始めてのことだ。

30日の午前11時10分、麻生首相は北京市の長富宮ホテルで、「日中次世代ビジネスリーダーとの集い」に参加し、省エネ問題や高齢化問題、国際金融危機などについて発言した。

スピーチする麻生首相

日中の次世代ビジネス・リーダーとの集い

昼食を準備しているホテルのスタッフ

意見を交わす中日両国のビジネスリーダーたち

麻生首相の講演(全文)

本日、ここには、日中関係の未来を担う、若手リーダーの方々が、たくさんお集まりです。皆さんの前でお話できることを楽しみにして参りました。

今回は、中国政府のご招待を受け、北京を訪問しております。昨年来、胡錦涛国家主席、温家宝総理との間で、今回を含め、それぞれ4回会談を行うこととなり、緊密に意思疎通を図れていることは、喜ばしい限りです。

もし青年と呼ばれたいならば、自分の理想の現実化に悩むべきであり、決して安易な妥協に流されるべきではない。

若い世代の皆さんを前にして、これは今から30数年前、私が日本青年会議所会頭として述べた言葉を、ふと思い出しました。

いつの時代も、若い世代は、前の世代の経験を活かし前進します。私は、皆さんが、より開かれた、創造的な感性と考え方をもっと活躍されていくことを信じて疑いません。

本日は、日中両国の次世代のリーダーの皆さんに対し、応援歌を歌いたい、そういう想いで話をさせていただきます。

現在、われわれは百年に一度と言われる世界経済、もしくは世界金融危機に直面しています。この危機はこれまでの経済学の教科書では確実な解決方法が見つけられない、極めて深刻なものだと思っています。これまで起きたことのないことが起きているのですから。

たとえば、貸出の金利がゼロ、またはほぼゼロでも、経営者は金を借りて設備投資をしない、という前提で書かれた経済学の本はありません。つまり、現在起きている経済現象を説明できる経済学の本はないということです。しかし、今回の危機を教訓として、この困難を乗り越えた先にはより強い経済とガバナンスの接点の構築ができるというチャンスに直面している、とわれわれは前向きにとらえていかなければならないと思っています。この危機に関し、世界第二、第三の経済大国であり、世界経済に大きな影響力を持つ日中両国が足並みをそろえるということは極めて重要だと思っています。

具体的には、金融市場の対策として、流動性の確保、金融機関への資本注入、不良債権の処理を行います。また、大規模な財政支出を行い景気を刺激し、1929年の世界恐慌を学び、断固として保護主義に反対します。これらの政策の実施が必要です。その意味で中国が昨年以降、約4兆元規模の経済対策を実施しようとしていることをわれわれは高く評価します。日本もこれまで真水で総額12兆円、利用規模で75兆円、3日前には新たに真水で15兆円、利用規模で57兆円の経済対策を打ち出し、実施に取り掛かりつつあります。

次に、経済危機を克服した後、アジアの経済をいかに成長させるか、いかなる社会を創造していくかという問題に触れていきます。アジアは世界の中で最も潜在力を持ち、21世紀の開かれた経済の成長センターで、その潜在力を十分に生かせる環境を整える必要があります。そのためにはアジアの経済をリードする日中両国は協力することが大前提となると思います。まずアジアの地域協力、対話の枠組みを力強く進める必要があると思います。

例を3つ挙げます。

第一の例は、東アジア域内における通貨危機を防止するための二国間通貨スワップ取極のネットワークである、「チェンマイ・イニシアティブ」というものがあります。この枠組みは、地域の金融システムの安定化に大きく貢献してきました。今後、この力を更に高めるために、この枠組みのマルチ化を早急に実現したいと考えます。

第二の例は、広域インフラ整備を進め、人と物の流れを加速することです。これは、経済、社会に大きな影響を与えます。たとえば、現在、ベトナムのホーチミンからインドのチェンナイまで、マラッカ海峡を経由して、海路で2週間かかります。これをホーチミンからアンダマン海までの、ベトナム、カンボジア、タイの3カ国を通る陸路を整備し、通関などの国境通過にかかる時間を短縮すれば、8日で運ぶことが可能となります。

第三の例は、日中韓サミットです。昨年12月に、福岡で始めて独立して開催された3カ国のサミットは、歴史的な会議でした。日中韓を合わせた経済規模は、英独仏を合わせたものよりも大きく、三国間の協力の行方は、世界も注目しています。本年、中国で開催される会議を成功させ、三国間の協力を更に推し進める考えです。

 

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