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学問の道には終点がない── 一般市民向けの「楽しく学ぼう会」

 

文=葉紅

昨秋、お茶の水女子大名誉教授の中山時子先生主宰の「楽しく学ぼう会」に一日講師として招かれた。昨年の『人民中国』6月号に私の寄稿「文学から中国を感じる」を載せていただいたことがきっかけとなって、中山先生の活動を知るようになった。先生は研究者や一般市民に向けて、「老舎を読む会」などの活動を半世紀以上にわたって続けてこられた。そのたゆまぬ努力には頭が下がる思いである。

楽しく学ぼう会では私は『中国現代文学』5号(ひつじ書房 http://www.hituzi.co.jp)に載せてもらった翻訳作品にまつわる話をした。中国の雑誌『小説月報』で発表された上海の作家陳丹燕の短編小説「M ON THE BUND」(原題 「X在外灘」)である。当日の参加者は長年にわたり、熱心に中国語を学んできた方から現役の大学生に至るまでさまざまであった。それぞれの道の先達も多く、質疑の時間には多くの質問をいただいた。

「M ON THE BUND」は《外灘 影像与伝奇》(作家出版社、二〇〇八年一月)の一節に手を加え、短編小説として発表された。陳丹燕の多くの作品と同じく、この作品の主人公のMは実在の人物であり、外灘(ワイタン)=バンド(BUND)を見下ろすレストランM on the bundも日本の旅行ガイド本にたびたび掲載されている実在の店である。

オーストラリア出身の女性Mは上海の外灘でオープンしたレストランに、かつての租界時代を思い起こさせるM on the bundの名をつけた。さらに店の予約から接客まで英語を公用語にしている。分かりやすくシンプルに言えば、これだけのことだが、上海の近、現代の歴史の特性からか、物事はシンプルに進まなかった顛末を描いたのがこの小説である。

作品の中のMは文化的で歴史的に由緒のある建物でレストラン経営をしたい。異国の香りがする料理を提供し、客をもてなしてあげたい。そのために選んだのが上海であった。それに先立ち香港で店舗を構え、2009年には北京でもCapital M という店をオープンさせたことを紹介すると、仕事に留学に旅行にとさまざまな形で中国を訪れたことのある参加者たちは非常に興味を覚え、原作を読み、一度はその描かれた空間に身を委ねてみたいようだった。

「楽しく学ぼう会」は発足してまもないが、月に一回中国語、中国文化、歴史、文学などさまざまな分野について、講師に自由に語ってもらう会である。今年に入り、二月は陳力衛氏(成城大学教授)が「中国と日本―行きかう翻訳語」について話され、三月には門田昌子氏の「私の心の故郷・北京」が予定されている。会場費や資料代を含めた会費として千円を支払うが、誰でも自由に参加できる会である(問い合わせは電話03―5387―9081まで)。

中国では「学無止境」という言葉があるが、真剣なまなざしで講師のレクチャーに耳を傾けている参加者の姿を見て、まさにこの言葉の通りに実践されていることを感じたのであった。

 

人民中国インターネット版 2011年3月7日

 

 

 

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