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多面的な中国を日本に発信

文=段非平

「私は1993年に中国に来て、今年でちょうど20年目を迎えました。中国に暮らしたことで、自分の本を出版するという小さい頃からの夢が実現でき、いろんな体験で人生が豊かになり、お互いに支える友達がたくさんできて、本当に有意義で楽しかった20年でした」と、北京に在住するフリーライター、原口純子さんは語る。

国家無形文化財の伝統劇――目連劇を取材する原口純子さん(右から1人目)

1980、90年代の日本では、中国に関する報道は、政治、経済が中心で、家族の転勤で中国に暮らし始めた原口さんは、これまでまったく知らなかった中国の素敵さと面白さを感じ、これらを日本に紹介しないともったいないと思い、もっと多面的な中国を日本に発信していこうとチャレンジを始めた。日本で出版社の編集者や映画会社の宣伝ウーマンとして働いていた経験を生かし、出版界の知り合いに中国に関する様々な記事の企画を持ち込むところから仕事を始め、当時の日本ではあまり紹介されていなかった「美しい」「楽しい」「おいしい」といった視点で中国の良さを探し、様々な特集記事や書籍などを制作、瞬く間に20年が過ぎた。

しかし、中日関係の戦後最悪時期といわれる2012年から、PM2.5や領土問題などの影響で、日本では中国のマイナス面のニュースばかりが目立つようになり、日本人が中国に抱くイメージは悪化している。これまで社会問題以外の楽しく、面白い中国に視線をむけチャレンジしてきた原口さんにとってはとても残念なことでもある。「こういう厳しい状況に直面しているからこそ、中日関係のために何か貢献できれば、という気持ちが強くなります。どこの国も同じ、中国も社会問題だけがすべてであるはずがない。中国の多面性をいまだからこそ紹介したい」と原口さんは考えている。

このもっとも厳しい1年間、中国で、中国の人たちと隣り合わせながら生きている日本人はいったいどんなふうに中国を見たのか、なぜ中国に住み続けるのか。こんな思いから、原口さんは7人の仲間たちとともに「在中日本人108人」プロジェクトを立ち上げ、18都市から108人の在中日本人の声を集め、『それでも私たちが中国に住む理由』という本を編集した。

8月30日に出版する『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ)

わずか3ヶ月で108人の声を集めるのは大変だが、メディアで報道されるニュース画像の極端な中国と実際に暮らしている中国とのギャップにとまどい、自分の感じた中国の姿を伝えたいと思う人も多く、寄稿者の積極的な協力により、本の編集も順調に進んだ。

約5万人の日本人が住んでいる上海から20人しか暮らしていない寧夏まで、10代の高校生から70代まで、日系企業の駐在員、日本語教師、ジャーナリスト、主婦、アーティストなど幅広い領域で活動している人がこのプロジェクトに参加した。この本の編集により、いろんな日本人がいろんなところで中国人と交流し、お互いに支え合っていることが改めて分かったと原口さんはいう。そして、このような日本のメディアがなかなか伝えられない人の声を今回届けられることもとてもうれしいという。

原口さんは中国のライフスタイルの関連記事がほとんどなかったという時期から始めたチャレンジは、誰も踏んでいない雪原を踏んでいけるような喜びが実感できたという。そして、20年住んでも、中国は広く深く、発見は次々にあり、まだまだ取材に終わりはないと感じている。中国という多面的な国で、未知の世界に触れていく喜びが原口さんの「住む理由」になっている。

 

人民中国インターネット版 2013年8月13日

 

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