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被災地の子どものメッセージ 「希望の絵」展が北京で開催

 

文・写真=孫雅甜

株式会社アーツテックの酒井靖之代表取締役が主催する「希望の絵」絵画展が、8月10~25日、北京国家水泳センター(水立方)で開催中だ。

2011年3月11日に発生した東日本大震災で、家族を失い、家を失った子どもたちがたくさんいるが、彼らは今、大きな困難を乗り越え、立ち上がっている。

今回の展示は日本の被災した子どもたちが、同じ苦しみを体験した中国四川省の子どもたちに向けて、「夢と希望」をテーマに、絵とメッセージを書いたもので、現在約280点の作品が展示されている。

また、今回の絵画展にはスポンサー企業または政治団体が全く参加していない。それは何物にも影響されずに純粋な文化交流の場にしたいという酒井さんの願いがあったからだ。この絵画展の続きとして、四川省の被災地の子どもたちに日本の被災地の子どもたちに向けて絵やメッセージを描いてもらい、日本で絵画展を催したいという。「子どもたちの純粋な絵は、きっと国境を越えて、日中両国の友好の懸け橋になると信じています」と酒井さんは語った。

酒井靖之さん
演出家、映像作家、文筆家

 

 

 展示会会場で、絵画展のキュレーター、株式会社アーツテックの酒井靖之代表取締役(以下「酒井」と略)に、「希望の絵」絵画展が開催に至るまでのいきさつについて伺った。

 ――ビジネス系映像製作会社であるアーツテックが、どういったきっかけで、このようなビジネスとはまったく関係のない文化交流イベントをやることになったのでしょうか。

 酒井 20歳の時に中国を旅して、その時にいろいろ感じたこともあって、日中友好のために自分が何かできたらいいなと思うようになりました。最近、映像ディレクターまたは写真家として仕事をしていますが、この仕事とは別のところで、日中友好を本格的に今からの人生のライフワークとしてスタートしていこうという考えが芽生えました。昨年、中国で開いた写真展が第1弾、そして今回の絵画展が第2弾ということで、これからも続けてゆきたいと思っています。

――絵画展の準備で大変だったことは何ですか。

酒井 まず、日本の子どもたちの絵を集めることが、簡単なことではありませんでした。こういうことをビジネスにしようとする人たちがいるもんですから、被災地の子どもたち、先生たちが非常に神経質になっていました。一人一人に私どもの主旨をお伝えして、傷ついている子どもたちの心をさらに傷つけないよう、細心の注意を払いました。中国の子どもたちの絵をもっと集めて、日中が半分半分になる絵画展にしたいと最初は考えていたのですが、どうしても政治的な問題があって、中国側に打診できませんでした。このままこの絵画展が先送りになっても困ると思い、とにかく1回中国で日本の子どもたちの絵を見てもらうことにしました。民間交流ですから、これに感動して、日本の子どもたちに絵を描きたいと思ってくれる人が絶対にいると信じて、とにかく今回の絵画展を開催したのです。

――今回の絵画展にはどのような効果があるとお考えですか。

酒井 この絵画展1回だけで、そんなに急に友好が広がるとは思っていません。ただ誰かがこういうことをやり始めていかないと、誰もやらない。日中友好のために、いろいろ尽力してくださった先輩たちがいっぱいいますから、その人たちに私も続いてゆかねばならないと思いました。今回の絵画展の主旨は文化交流です。文化の力は、国境を越えて活きてゆく力であり、そして日中友好には民間交流が一番効果的だと私は思っています。

――中国に対して特別な感情があるとお見受けしますが、それはどんなきっかけから生まれたものなのでしょうか。

酒井 20歳の時、私は中国を一人で旅しました。その時、私の知らなかった日本の歴史も知ることができました。その時に出会って、一緒に旅をした同世代の中国の青年がいました。酒を飲みながら彼と話し合ったのが、私の「開国」となったのです。その時、将来お互いが交流できたらいいなぁと語り合い、さらに彼と誓い合ったことが原点になっています。また40歳過ぎの時には、あるテレビ番組の取材で大連へ行きました。こうしたことで、私は北京にたくさんの非常に素晴らしい友人たちがいます。彼らのおかげで、もっともっと中国と仲良くなりたいという気持ちが生まれてきたのではないでしょうか。

 

人民中国インターネット版 2013年8月14日

 

 

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