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「女形は日本人の美意識のかたまり」
――歌舞伎俳優五代目尾上菊之助さんに聞く

 

 孫雅甜=聞き手 楊振生=写真

 

歌舞伎『春興鏡獅子』。小姓弥生(尾上菊之助さん)の踊りは、

女性らしい優美さが見所

 
 

 ――お小姓弥生の踊りは「女形」として非常に優美に踊られていましたね。「女形」は「男が女を演じる」という点で演劇の中で非常に魅力のある部分ですね。それは日本人のどのような美意識を表しているのでしょうか?

 菊之助 歌舞伎の歴史を見ていくと、最初は女性もやっていたんですね。それから女性の歌舞伎ができなくなってしまい、若い男の子たちが演じるようになりました。それもだめになってしまってから、普通の男性が女形もやり、いろいろな役をやるというふうに歴史が変わって行ったんですね。その頃の男の人が女性を演じるというのは結構大変だったと思いますよ。しかし、江戸時代にそうなりまして、先人たちがさまざまな工夫を加え、女性らしいしぐさなどを何層にも何層にも積み上げてきました。身のこなし、歩き方、言葉遣い、そして物語の中における性格付け。あらゆる点について「女らしさ」を表現するための技術が洗練されてきた結果、今の女形が出来上がっているので、日本人の美意識のかたまりと言ってもいいでしょう。

 

――男性が女性を演じることは女性自身がそれを演じるよりも魅力的だという考え方もあると聞きましたが。

 

菊之助 自然なものにはかなわないと思います。やはり女性が演じたほうがきれいになる場合もあるでしょうし、絵に描いている山より本当の自然の山を見たほうが圧倒されるのと同じように、自然にはかなわない部分にはあると思うんです。ただ、演劇というのはあくまでも作られた虚構の世界なので、そこにリアルなものが出てきてしまうと、現実に戻されてしまう感覚があるのではないでしょうか。俳優たちが芸を磨き築き上げられた「まぼろしの女」や「まぼろしの男」こそ、観客たちに不思議な魅力を感じさせ、舞台の世界を十分楽しんでいただけるのではないかと思います。ですから、女形や作られた美というのが虚構の世界にも大事な存在なんだなと思います。

 

 

人民中国インターネット版 2015年4月8日

 

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