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作家の毛丹青氏が都立高校で講演

 

東京都高等学校総合学科教育研究会と公益財団法人国際文化フォーラムの主催による「世界の言語と文化を知ろう!」シリーズの第2回として、6月11日に作家で神戸国際大学の教授である毛丹青氏を講師に迎え、「日本が好きな、中国を知ろう!」をテーマに、東京都立杉並総合高等学校で講演とディスカッションを行った。

 

 隣語(隣国の言語)の習得は、今後の高校教育にとって大切と語る若林直司・杉並総合高等学校長

このシリーズは昨年度から行われているもので、都立総合高校関係者を主な対象に、外国語学習の理解促進と学習環境整備を促すのが狙い。講演のあとに生徒、保護者、教育関係者の三者が、おのおのの立場から自由に意見交換を行う形式で進められる。

 

自ら描いたイラストを使って講演を行う毛丹青氏

会場の杉並総合高等学校は都立高校初の試みとして、来年度から1年生を対象に中国語か韓国語を第二外国語として必修選択にすることが決定しており、同校校長の若林直司氏は、「国際理解がさらに重要な今、隣国の中国や韓国との理解と交流は特に大切と考えている」と決定の理由を語った。また、毛丹青氏の起用について水口景子・国際文化フォーラム事務局長は、「毛先生は、中国で発行されている日本文化を紹介する雑誌『知日』の主筆として創刊から昨年まで関わったことで、中国の若者の日本に対する関心の高まりを感じると同時に、日本の若者の中国に対する関心の低さを実感し、そのギャップを懸念していた。日中両国語で執筆活動を行う先生なら、日中2つの視点で両国関係を見ることができる。先生の講演を聞いてディスカッションを行うことで、日本人が『中国を知る』ことの必要性を参加者と共に考えたいと思った」と語る。

 

講演終了後、テーマに沿って各自の発言を自由に紙に書いていく。グループごとにまとめ方も様々だ

毛丹青氏は講演で手描きのイラストを使い、両国関係を海に例えて「中国人観光客激増などはあくまで『海面』に見える現象でしかない。『海底』、つまり日本人特有の道徳、規範、宗教観などの見えない文化を知ろうとする動きが今中国では確実に起こり始めている。これは彼らの『知への渇望』からくるものだが、今の日本人は中国に対する『知への渇望』がほとんどないことが気にかかる」と問題を指摘し、かつてのアメリカが『フジヤマ・ゲイシャ』といったステレオタイプの日本感から脱却できず、『知の渇望』からアメリカ文化を貪欲に吸収した日本に経済面で追い越されたことを例に、同様の現象が今の日中間に起きていると分析。その上で、「日本も『海面』に見える現象に頼らず『知の渇望』をもって中国の深層を見るべきだろう」と提言した。

 

「まとめ」として各テーブルを自由に回って意見交換を行う際には毛丹青氏も参加

毛氏は「今の中国人は日本を知ることで、自宅の居間に床からリモコンで立ち上がる電動式掘りごたつを採り入れてみたり、寿司屋のカウンター越しに見る職人のみごとな包丁さばきに『寿司は包丁の芸術ですね』と感嘆したりと、日本人にはない視点で日本文化の良さを数多く発見し、生活を豊かにしている。日本人の視点で新たな中国を発見することは、同様に日本人の生活を豊かにするはずだ」と、「知日」による意外な発見が中国人の生活を豊かにしていると指摘、引っ越せない隣国だからこそなお、日本人にとって中国を『知る』ことは大切なはず、と「知中」の重要性に言及した。

 

講演のあとに行われたディスカッションでは、「望ましい未来を考える」「知中を考える」の2つのテーマについて、教師、保護者、高校生の三者が入り交じるグループで闊達な意見が交わされ、「ネガティブな報道に頼らず、自分から情報を得ることが大切」「文化を通じて理解を深めることが効果的」など、相互理解に向けた具体的な提案が多く寄せられた。

 

資料:平成25年度高等学校等における国際交流等の状況について(文部科学省初等中等教育局国際教育課)

文部科学省初等中等教育局国際教育課による「平成25年度高等学校等における国際交流等の状況について」の「言語別の開設学校数の推移」によると、中国語を科目開設している学校は他言語に比べて格段に多い。中日関係悪化に伴いやや減少傾向にあるものの大幅な減少ではなく、日本社会が依然中国語の必要性を感じていることが証明されている。総合学科高校は国語、数学などの一般教科以外に、生徒の関心や進路希望に応じて商業、情報、美術などの専門教科など多数の選択科目から、個人に合った時間割を作成できるのが大きな特徴で、杉並総合高等学校のように、今後は必修選択の第二外国語に中国語を採用する総合学科高校が増えることが期待される。

 

人民中国インターネット版 2016年6月27日

 

 

 

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