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素顔の中国を伝えるイベントは「小さなインバウンド」
豪雪の新潟で3回目の春節祭開催

 

文・写真=広岡今日子

3年目を迎えた「新潟春節祭」。今年の開幕は2月11日で、ちょうど旧暦1月15日の元宵節に当たった。中国人にとってはにぎやかに迎えた新年の終わりを締めくくるちょっと寂しい元宵節も、当地の日本人にとっては同時開催の“にいがた 冬 食の陣「当日座」”(以下「食の陣」)と共に、異国の美食と文化を満喫できる心躍る日々となり、ツイッターでは春節祭を満喫した人々の書き込みが、当日の盛り上がりを物語っていた。今回は写真とツイートから、会場のにぎわいを伝える。

 

 

 

現在日本の各地で行われている春節祭は、それぞれの特色を前面に打ち出して妍を競っているが、新潟では2015年の第1回から、新潟を中心とした様々な美食が振る舞われる「食の陣」とコラボし、共に祭りを盛り上げてきた。「食の陣」が行われる古町会場は、中町で行われる春節祭会場から徒歩3分程度と近く、両国の文化を行ったり来たりで楽しめるのが最大の魅力と言えるだろう。

 
  10時半開始から始まったオープニングセレモニーでは、おそろいの唐装に身を包んだ主催者や来賓による祝辞、テープカットについで、太鼓と獅子舞が華々しく幕開けを告げた。

獅子にお年玉をふるまう惠京仔・新潟春節祭実行委員長 

 

 

 

【ステージ】

  今年は上海市、重慶市、黒龍江省から約70名のアーティストと美食がやってきた。ステージで繰り広げられる数々のパフォーマンスに、観客は歓声やため息で応えたが、一番盛り上がったのはやはり変面。瞬時に変わる隈取に、会場からは大きなどよめきが上がっていた。

 
 
 観客参加型のパフォーマンスに思わずつられてノリまくる
 
 
 
 
 
 
【工芸品】

  中国の文化を一番わかりやすく伝えるもとのいえば、やはり手工芸品。中国書画はもちろんのこと、昔の日本ではお祭りの屋台の常連だった「面人」(しん粉細工)や匂い袋を思わせる香嚢など、日本との意外な共通点を見つけた来場者も多かったようだ。

 

 

 

 日本では今やすっかり少なくなったしん粉細工に、思わず足を止めて見つめるお年寄りも多かった

 

どれにしよう…香嚢ひとつ買うのにも真剣そのもの 

 

 

 

 

【食】

しかし来場者にとって最大の関心はやはり「食」。今回は特に日本人にもなじみ深い担々麺と小籠包が出るとあって、ピーク時には行列待ちが2時間を超える盛況ぶりだった。春節祭は2度めという長岡から来た男性は、同僚2人と一緒に朝一から来場、並ばずにお目当ての担々麺を手に入れた。日本の担々麺とは見た目からして違うと大満足。初めて食べたという香菜(パクチー)も、本場の担々麺には欠かせない香りだと絶賛しきりだ。

テーブルにずらりと戦利品を並べ、出来たてのワンタンに舌鼓を打つのは、はるばる山形からやってきた女性2人連れ。大学で中国語を学んでいるという。1時間半の行列でようやく生煎包をゲットしたが、「今日は朝一で家を出ました。まだまだ食べます!買いたいものもたくさんあります!」と、ワンタンを平らげるや鮮肉月餅(中国風ミートパイ)の列に走っていた。

 美味しいものを食べれば、人は自然と笑顔になる

 

 極寒の中でもこの行列

 

 「現做現売」(その場で作ってその場で売る)は中国人にとって「当たり前」のこと。しかし便利になりすぎた日本では、生地作りから出来上がりまでをその場で見られることなど滅多になく、全てが手作りの小吃(軽食)などもはや「ぜいたく品」になってしまった。手作りの小吃が気軽に食べられる中国の食文化を、豊かに感じた来場者も多かったはずだ。日本人にとって春節祭は、中国の食文化を肌で感じることができる貴重な機会なのだ。

 

 
 
 

 昨年行われた中国国際出版集団と言論NPOによる共同世論調査では、日本人の中国に対する「良くない印象」が9割を超えるという結果が出た。しかし新潟春節祭ではそのような雰囲気はみじんも感じられなかった。純粋に中国の文化を楽しみ、驚き、味わっている来場者の姿からは、「理屈はいらない、良いものは良い」という当たり前の答えが見えてくる。 春節祭は日本人が中国を知り、より広く受け入れるための入り口で、その先に広がる中国の大きな世界へと誘う、いわば「小さなインバウンド」だと言えよう。来場者の楽しげな姿から、その試みが成功であったことがうかがわれた。

 

 程永華・中国駐日本大使

  旧暦の15日、中国では提灯を提げ、爆竹を鳴らしてお祝いをします。この日に新潟春節祭が開催されたのは意義あることと言えるでしょう。今年は新潟出身の田中角栄元総理が成し遂げた中日国交正常化45周年です。中日関係にはまだ複雑な要素も残りますが、隣国で共通の文化を多く持つ両国にとって、文化交流、民間交流を通じて一層両国関係を深めることはまたとない機会です。

 

 米山隆一・新潟県知事

  私の故郷の魚沼市で旧正月に「鳥追い」をする習慣があるように、日本にも旧正月を過ごす習慣がありました。人と人とは気持ちを共有することができます。新潟の春節祭を体感することで、日本も中国も同じように旧正月を過ごし、同じ文化のもとに育っていると感じていただけるでしょう。

 

 孫大剛・中国駐新潟総領事

  今年の代表団には、有名なアーティストや日本の人間国宝に相当する方、老舗や伝統料理の継承者も参加しています。中華民族の歴史ある文明や特色あふれる地方の風習、春節の楽しい雰囲気を来場者の心に届けることができると思っています。

 

 

人民中国インターネット版 2017年2月16日

 

 

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