世界が見つめる中米の経済関係

 

現代の「鴻門の会」

 

 SEDの中国代表は呉儀国務院副総理で、米国代表はポールソン財務長官でした。開会式では、ニクソン大統領の訪中をお膳立てし、その後の中米国交正常化の基礎を築いたキッシンジャー氏が基調講演しています。

 

ワシントンで開かれた第2回SEDで握手する中国の呉儀副総理(右)と米国のポールソン財務長官

 呉儀副総理にとってSEDは、楚の項羽に招かれ「鴻門の会」に赴く劉邦に似た心境にあったのではないでしょうか。思惑が秘められた宴会に、そうとわかっても敢えて出て、面子と威信を保つという姿勢でもあります。

 米国のWTO提訴にもかかわらず、中国は第2回SEDに向け、金融、航空分野などの市場開放を表明し、米国の人民元切上げ圧力や対中貿易摩擦を軽減・回避しようとしました。

 

 すなわち、人民元変動幅を0.3%から0.5%へ拡大する、米国製品の買付けミッションを派遣する(300億ドルの買付け契約に合意した)、QFII(有資格外国機関投資家割当)(注3)を百億ドルから300億ドルに増額する、米国のブラック・ストーン集団へ30億ドルを投資するなど、米国にはかなりの手土産を用意したといえます。

 

 ところが、SEDの結果に、米国議会や産業界は満足してないとの報道が目立ちました。人民元切上げ問題や知的財産問題などで意図した思惑が外れたようです。こうした中米貿易摩擦の象徴的な問題に対し、中国はそれ以上の目立った譲歩はしませんでした。

 

 さて、咸陽を落としたという戦功を手土産に「鴻門の会」に出た劉邦は、「剣の舞」で項羽方から命を狙われますが、張良の気転に助けられ、無事脱出します。呉儀副総理が出席したSEDを「鴻門の会」にたとえるのは不謹慎かもしれませんが、SEDでは米国議会や一部米国産業界の「剣の舞」をうまくかわしたようです。

 

 ただ、より短期的な利益を優先するとされる民主党の通商関係者の影響力が増す米国議会で、今後、何らかの対中通商法案が成立する可能性は少なくないようです。第3回SEDは、果たして「四面楚歌」となるのでしょうか。

 

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