対外投資に向かう中国の企業

 

M&Aと産業再編への影響

 

2006年7月、上海のモーターショーに展示された南京汽車のMGTFスポーツカー

 この提携劇の役者は、南京汽車と上海汽車だけではありません。脇役が多数登場しています。例えば、奇瑞汽車とイタリアのフィアット社です。

 

 南京汽車はフィアット社と合弁で南京フィアット社を設立し、先ごろ、それぞれ30億ドルの追加投資を決定しています。そのフィアット社は、中国の自社ブランドメーカーで海外生産や輸出を積極的に展開している奇瑞汽車と昨年10月、年間10万台のエンジン供給契約を結んでいます。

 

 世界の自動車メーカーとの合弁や提携で成長してきた中国の自動車メーカーは、今や生産台数と販売台数で世界をリードするまでになりました。こうした状況下で、中国企業が海外企業をM&Aした結果、中国国内で外資企業を含め、意図していなかった複数の連携関係が構築されつつあるのです。

 

 こうした新たな展開は、中国企業の海外進出が活発化している今日、自動車業界に限られたことではありません。中国企業の海外投資が、中国国内の産業地図を塗り替えつつあるのです。

 

還流する対外投資

 

 また、2007年には、全く新しいタイプの海外投資が生まれました。今年5月、中国政府は、米国の投資ファンド大手の「ブラックストーン・グループ」(BSグループ)に30億ドルを出資し、無議決権株を購入すると決定しました。

 

 中国は、世界一の外貨準備(20073月末時点で12000億ドル超)を有していますが、米ドルが下落すれば、その資産的価値が目減りしてしまいます。BSグループへの出資は外貨準備運用の一つの手段であり、その第一弾と位置づけられるわけですが、今後は「中国外国為替投資公司」(目下設立準備中)が2000億ドルともいわれる運用資金をもとに、対外投資を行うといわれています。

 

 現在、話題となっているのは、今後、BSグループが、中国企業の買収など対中投資をどうするかという点です。

 

 2005年、カーライル社(米国の投資ファンド)が中国最大の建設機械メーカーである徐工機械の株式の85%を取得してM&Aしようとしたとき、中国から「待った」がかけられ、今なお最終決着を見ていません。現在、中国はM&A方式での投資を奨励する一方、外資企業による市場の独占(独占禁止法は未成立)や国有資産の海外流出を懸念し、外資企業による中国企業のM&Aに慎重でもあります。

 

 2006年末時点で、海外投資ファンドによる対中投資額は117億七千万ドルで、アジア最大に達しており、BSグループにとって対中投資は避けて通れない道といえるでしょう。実際、BSグループは、ある中国企業の株式をM&Aする準備をしているとの報道もあります。

 

 MSグループが、徐工機械のような業界を代表する企業を買収しようとしたとき、同グループの株主となった中国外国為替投資公司は、これにどう向き合うのかが注目されます。

 

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