世界に向けて発信する

世界への窓を開くと同時に、翻訳者たちは積極的に中国の優秀な作品を外国語に翻訳し、外国の読者が中国を理解するための橋をかけた。中でも『紅楼夢』の英訳は、際立った成果と見なされている。訳者である楊憲益と戴乃迭(グラディス・ヤン)夫妻は、そのロマンチックな国際結婚と豊富な翻訳作品で知られている。

1940年、イギリスのオックスフォード大学を卒業した楊は婚約者――21歳のイギリス女性のグラディスを連れて帰国。その後60年間、二人は中国で仲睦まじく「東西融合」の生活を送った。

1953年、楊夫婦は外文出版社の雑誌である英語版『中国文学』の仕事に従事するようになった。彼らは驚くべきスピードで、数々の作品を翻訳。『離騒』『儒林外史』『宋元話本選』『唐宋詩歌散文選』『魏晋南北朝小説選』『魯迅選集』など百万字以上に及ぶ文学作品を英訳した。

1970年代末、二人は『紅楼夢』の翻訳に着手。楊の妹の記憶によると、当時の二人は毎日10時間以上翻訳に取り組んだ。楊がワープロで中国語を英語に下訳し、グラディスがそれを手直しした。翻訳や思考に忙しく、余計なおしゃべりはあまりせず、疲れるとグラディスは散歩や、庭で縄跳びをし、楊は空を仰ぎながら一服し、再び黙々と仕事を続けたという。

『紅楼夢』の英語版は、『A Dream of Red Mansions』というタイトルで1978~80年に3巻にわけて外文出版社から出版された。イギリス人によるものは中国文学研究者ホークスの『The story of the stone(石頭記)』があるが、今日でも中国人による唯一の『紅楼夢』の英語完全翻訳版である。

二人は古典文学のほか、中国の現代文学も西洋に紹介した。楊の提案による英語版の中国文学シリーズ『パンダ叢書』は、もっぱら中国文学の代表作品を紹介するものであった。百冊以上刊行されたこの叢書には『聊斎志異』『老残遊記』などの古典文学もあれば、『辺城』『芙蓉鎮』など20年代から80年代までの作品も含まれている。

翻訳について話し合う楊憲益、グラディス・ヤン夫妻
楊夫妻が在籍した外文出版社は、早くは対外出版機構で、現在でも中国で唯一の外国語図書を専門に出版する出版社である。今日では中国外文出版発行事業局(中国国際出版グループ)に発展し、中国の対外伝播事業を展開する新聞出版機構となっている。出版、印刷、発行を一括して行い、25の言語に及ぶ数百名の翻訳専門者を擁し、毎年出版される外国語図書は、政治、経済、文学、外交などの分類に及ぶ。外国語の図書を出版すると同時に、『北京週報』『今日中国』『中国画報』『人民中国』などの週刊及び月刊雑誌を22の言語版で制作、182の国や地域で発行している。2007年の外国語定期刊行物の発行部数は641万冊、図書は3217万冊であった。第59回フランクフルトブックフェアでは706点の外国語図書を紹介、中国の展示ブースの外国語図書の85%を占めた。

中国外文局同様、対外伝播の翻訳に携わる機構に、新華社、中国国際放送局、『チャイナデイリー』、中央テレビ局英語チャンネル(CCTV9)、スペイン語チャンネル(CCTV–E)、フランス語チャンネル(CCTV–F)などがある。

新華社は、7つの言語で130以上の国や地域に向けて、24時間ニュース原稿及び特別原稿を提供している。

中国国際放送局は、毎日43の言語(38の外国語、中国語標準語、4つの少数民族の言葉)で、200以上の国や地域に向けて放送している。

『チャイナデイリー』は英字全国紙で、150の国や地域で発行され、外国人が中国の政治、経済、社会、文化を理解するための主要な情報源となっている。

中央テレビ局の英語チャンネル、スペイン語チャンネル、フランス語チャンネルは、衛星でほぼ世界中をカバーし、北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、大洋州及び中南米の100以上の国や地域で受信可能である。

インターネット技術の発展とともに、ネットメディアも無視できない存在となった。外国語でニュースを発表する主なネットメディアは、人民ネット(6つの言語)、新華ネット(5つの言語)、チャイナネット(9つの言語)、CRIオンライン(43の言語)と『チャイナデイリー』のネットがあり、毎日1000本以上の外国語情報を更新している。

 

人民中国インターネット版 2008年7月17日

 

 
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