世界の扉を開く鍵

上海外国語大学 徐丹

 「日本」、とても友好的な人たちが住む豊かな国。これは今私が「日本」という言葉を聞いたとき想像することです。

日本語を勉強する前、私は日本は中国にとても近い島国であることしか知りませんでした。日本は私にとってただ数多くある国名の一つにすぎませんでした。それどころか、「日本人」というと想像される言葉は「侵略」や「凶悪残忍」などでした。しかし、日本語の勉強のおかげで今は日本についていろいろなことを知っています。日本の年中行事や名所旧跡や自然風物や歴史上の有名な人などです。たくさんの中日両国の風習の違いや文化の細かい差異に心が惹かれれたり驚いたりしています。日本語を勉強しているというよりも、日本という国のことを勉強しているといってもいいと思います。さらに日本語は交流の媒介として私に日本人を見直させてくれました。

私が日本語を勉強して始めて2年目の春こんなことがありました。神奈川総合高校の生徒たちがわが校に「姉妹校の交流」をしに来ました。その時、引率の潮田先生が私たちにとても面白い日本語の授業をしてくれました。先生はとてもユーモアのある人です。自己紹介をするときだけでも面白い話し方で、私たちを何回も笑わせてくれました。

そんな笑いのあふれた授業の途中に私は先生にある質問を出しました。「では、先生の給料はいくらですか。」私は単純に日本のサラリーマンの生活を知りたかっただけです。しかしあとで気がついて、なんと失礼な質問をしたのだろうと後悔しました。自分が知りたいと思うだけで、先生の気持ちも考えずに急に聞くなんて情けないなと思いました。

先生は少しびっくりして、「ええと、私の給料は低いですよ。たった20万ぐらいで妻よりも低いです。ですから、妻に対してはいつも頭が下がります。」といいながら、頭を下げる素振りをしました。その答えは大きく私の心を揺さぶりました。先生は嘘をついてもいいのに、正直に本当のことを言ってくれました。彼は答えを終えると失礼な質問を出した私にやさしく微笑んでくれました。あの時、笑顔がこぼれている先生の姿が輝いて見えました。これこそ本当の今の日本人です。素直で友好的な民族です。自分の目で本当の日本人を見てはじめて既成のイメージが打ち破られ、凶悪で嫌われる日本人のイメージは本当ではないと分かりました。日本語を媒介としての交流がなかったら、私は今の日本人を認識できず、一生既成のイメージを持っていたかもしれません。

このように、私にとって日本語はただの仮名を組み合わせた紙上だけの言語ではなく、生活の中での自分と日本人の交流の手段なのです。交流から得たものは日本語が一種の言語としての存在そのものよりも、ずっと大切だと思っています。

日本語は金色の鍵みたいに私に真新しい世界へのドアを開いてくれました。幼くて無知な私に日本はどういう国なのか、どんな風習を持っているのか、日本人はどういう人なのか、どんな考えをしているのか、想像ではなく、確実に認識させてくれました。日本語のおかげで私の視野が広がりました。これからの勉強の中で、この「鍵」はどんどん未知の世界の扉を開いてくれて、今まで知らなかった何かを発見させてくれると思います。日中友好を深めるために、私がまずレベルの高い日本語を目指して、一歩一歩進んでいこうと思います。

「日本語」、今の私になくてはならない存在。

創作のインスピレーション

日本語は私にとってただ一種の言語だけでなく、交流の媒介だと思います。日本人とコミュニケーションしたり、日本語で書いてある本を読んだりして、日本という国の文化を学び、日本人のことを理解できるようになりました。日本人の優しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと思って、この文章を書きました。今、私は日本の早稲田大学に留学しています。留学の毎日をうまく利用して、もっとたくさんの日本人と交流し、お互いを理解しあおうと思って、中日友好を深めるために、自分なりに頑張りたいと思います

 

人民中国インターネット版 2008年12月4日

 

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