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木の葉に刻まれた経文と多彩なマンダラ

 

貢献は最高の修行

チャルムチャイ氏は、タイの著名な画家である。両親は故郷のチェンライ県の村で雑貨店を経営していた。かつて、マッチは売れ筋の商品で、マッチ箱には竜の模様が描かれていた。そのマッチ箱を見て育った彼は、絵を描くことが好きになった。子どものころには、よくマッチ箱上の竜を描いた。また、たびたび寺の境内で遊んでいたため、大人たちが寺のためにボランティアで働いている情景に感動を覚えていた。

17歳のとき、バンコクの芸術学校に合格。その後作品が国家のコンクールで金賞を受賞すると、たちまち有名になった。作品のインスピレーションは、子どものころに見た寺のイメージによるものであった。

 敬虔な祈りをささげる僧侶 チャルムチャイ氏が1997年に建設を始めたワット・ロン・クン

それから、彼は栄誉に浮かれ、寺で遊んでいたころの心を次第に忘れてしまった。

しかし、ある日のこと、ある寺の壁画を見学した際、にわかに仏様に対する畏敬の心が蘇り、仏様のために功徳を施したいという強い願いが再燃した。  チャルムチャイ氏は、そのとき自分が手にしていたすべてをなげうって、イギリスのあるお寺にボランティアで壁画を描くことを決意した。この巨大なプロジェクトには、まる4年の歳月を費やした。壁画が完成したときには、チャルムチャイ氏は貯金をすべて使い果たしてしまい、一文なしになって故郷に戻った。

故郷に戻った彼は、かつてよく遊んでいた寺に足を運んだ。そこで荒れ果てた寺を目の当たりにする。彼は正殿に足を踏み入れると、仏像に向かってひそかに願をかけた。

数年後、チャルムチャイ氏は天才的なクリエーティブな才能を発揮した宗教作品によって津々浦々に知れ渡る画家となり、再び巨額の財産を手にした。

ある日、彼は妻に尋ねた。「一生暮らしてゆくのに必要なお金はどのくらいだと思う?」

そして決して多くはないお金を妻に残すと、かねてからの願いを実現するために、残りの貯金をすべてつぎ込むことにした。それは、故郷の寺のあった場所に壮大な新しい寺を修築することである。それこそが彼の最大の精神的な拠りどころであった。

お寺の工事現場での仕事が、彼の生活になった。家にはほとんど帰らない。奇想天外な発想と絵描きとしての天賦の才を存分に発揮し、竜の模様にかける情熱を、伝統を突き破る形で、永遠なる建物に融合してゆく。長い歳月をかけ、すべてをつぎ込んだこの大いなる貢献は、仏教信者として最高の修行でもあると彼は信じている。

マンダラの完成とは

再びスムツェンリン寺にもどり、僧侶たちが一心に築いた成果を見てみよう。彩り豊かな美しいマンダラが、ようやく人々の目の前に姿を現した。

スムツェンリン寺の僧侶と話す筆者(左)(写真は筆者提供)

法会は時間通りに開かれ、僧侶たちは9日間毎日集まって、経文を唱える。各種の儀式が執り行われ、すべてが順調に進んでゆく。最後に、高僧のあとについて僧侶たちは多彩なマンダラを取り囲み、最後の儀式を完成させる。

高僧は経文を唱えながらマンダラの石粉に手を添えると、そっとそれを押して、その配置を崩してしまった。秩序は乱れ、色彩も混じり合ってしまう。続いて、大師が東西南北の四方から、外から内へと石粉をそれぞれ崩してゆく。周りを取り囲んでいる若い僧侶たちが、色とりどりの石粉を一カ所に積み上げる。

これは世の中の万物が衰えて死んだのちに、再び本来の混沌の状態に戻ることを象徴する。最終的に、これらの石粉の一部は信者に渡されて祀られるが、残りは寺のそばの川に撒かれ、水とともに広い未知の世界へ流される。

世の中のあらゆる栄華は、空であり、無であり、寂滅するのである。(李暁山=文・写真)

 

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