拍手喝采はTPOを考えて

京劇を観るとき、中国人は、素晴らしい場面になると一斉に、「好!」と喝采の声を上げる。すると舞台上の役者と観客の気持ちがたちまちつながって、公演の成功の喜びをいっしょに分かち合うのだ。

しかし西洋の国では、ポップスや軽音楽の公演で一つの曲が終わったときや公演全体が終わった時、観客の一部が「ブラボー!」と叫ぶだけだ。この「ブラボー!」という言葉は、スペイン人に言わせるとイタリア語から来たと言い、イタリア人はスペイン語から来たと言う。

一般に、シンフォニーなどの音楽会では、喝采の声をあげる観客はごく少ない。とくに楽章と楽章の間に拍手をしてはならない。だからよく知らない曲の場合、どこで曲が終るかがわからないときは、率先して拍手をしてはいけない。

スポーツ競技でも、拍手や喝采はTPO(時・所・場合)に注意しなければならない。とくにバドミントンやテニスの試合では、ボールをサーブするとき、拍手や叫び声が選手のサーブの正確さに大きな影響を与える。ドーハで開かれたアジア大会の女子テニスの試合では、会場の拍手と叫び声でひどく騒がしく、中国の選手、李娜は、試合放棄せざるを得なくなった。李娜は「だめ!心が落ち着けない」と言った。

2007年初め、英国のウェンブリーで開かれた有名なビリヤードのスヌーカー・マスターズの決勝戦で、中国の選手、丁俊暉は涙を呑んだ。試合後、丁俊暉は、英国のファンの罵声が自分の心理に影響を及ぼしたとこう言った。

「私の後ろにいた一人のファンが、僕を罵り続け、僕は怖くて仕方がなかった。中国ではファンは外国選手を歓迎するのにね。僕はこれ以上、試合に没頭することができないと感じた」

丁俊暉の対戦相手で、世界最強といわれるオサリバンも、そのとき、もう我慢できなくなっていた。彼は観客席に向かって大声で叫んだ。「試合を見たくなかったらさっさと帰ってください!」

その後、審判は、一人のファンを会場から追い出したのだった。

趙啓正

 

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 

 2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

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