開幕式物語り(上)  
 

文=何晶

1851年にイギリスで行われた第1回国際博覧会を皮切りに、159年もの間、各国で開催されてきた万国博覧会(万博)のすべてに共通して言えることは、それぞれに興味深い特色があり、ほとんどの万博は知識、科学技術、環境保護などの理念をテーマに開催されてきた。これらは、はっきりと開会式でも表現されてきた。そして、上海万博の開会式から、歴代の万博開会式での素晴らしい場面がよみがえり感慨深いものが連想される。

もっとも悲哀に包まれた開会式——1862年のイギリスロンドン万博

「万博の父」と呼ばれたアルバート公

イギリス万博の前年にあたる1861年12月14日、42歳のアルバート公は腸チフスで帰らぬ人となった。アルバート公は第一回万博開催に多大なる貢献をし、「万博の父」と呼ばれた人物。当時は、ヴィクトリア女王をはじめすべての英国人が深い悲しみに覆われた。翌年の1862年5月1日には、ロンドン万博が予定通りに開催されたが、悲しみ冷めやらぬ女王は出席することができなかった。そのため、欠席した王族の席に女王夫妻の半身の銅像が置かれていたという。開会式に出席した関係者はスピーチの中でアルバート公に触れ、公が如何に万博に貢献したかについて語った。また、イギリス王室によって任命された詩人テニスンは涙を流しながら、詩によってアルバート公への追憶の気持ちを表現した。

もっとも「盛大」な開会式——1876年アメリカフィラデルフィア万博

蒸気機関からスタートした「アメリカショー」

フィラデルフィア万博は、アメリカ独立100周年記念の年に開催された。それまでの米国は農業国として知られていたが、当時は同国における蒸気機関の開発もあり、一転して新時代の工業先進国に仲間入りした。当時開催された万博は、まさにアメリカが工業先進国であることをアピールするための大きなチャンスとなった。それは、万博の開会式でも知ることができた。開会式当日は雨天にもかかわらず、十数万人の参加者が出席した。なかには、すべてのアメリカ国会議員、37の参加国の役人及び随行者、ブラジル国王ペドロ2世、そして特別に5000ドルの出場料で招請したドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーもそれに含まれた。

このフィラデルフィア万博には、中国政府が初めて自ら代表を派遣し、国家として参加した初の万博だった。派遣された李圭という人は、当時の中国商工業界の代表として中国代表団の中で唯一の中国人であった。李圭は、本人が書き記したとされる「地球旅行新録」の中で開会式の盛況をこう書き残している。「すべての展示物を見ようとすれば、曲がりくねったところや大きな通りも合わせると少なくとも28キロ以上を2日かけなければならない。ここでは、世界中の宝と呼べるものが集められ、天下における極上の催し物だと言えるだろう!」

当時の開会式で注目されたのは、アメリカ大統領グラントとブラジル国王ペドロ2世が、当時、最大の動力源と呼ばれた総動力数600トンの蒸気機関「コーリス」のスイッチを同時に入れたことだった。李圭もこの機械について詳しく記録している。「機械の中心には大きな機械が設置されており、輪の直径が三丈(およそ9.9メートル)余り。その力は馬1500頭分に相当するという……。これほど大きな機械なのに、動く時にはあまり音がしないのだ。それに、自立して一人だけで運転できるとは不思議なことだ。」

もっとも盛んだった開会式——1889年のフランスパリ万博

フランスのシンボルタワーともいえるエッフェル塔が完成

1889年5月15日、パリのシンボルともいわれるエッフェル塔がフランス万博の開会式に正式に公開されることになった。当時においては、世界一高い建造物としても注目を浴びた。余談だが、設計者であるギュスターヴ・エッフェルは同年3月31日、公式の落成式を前に身内だけでパーティーを開いた。その時、エッフェルは1710段の階段を上り、塔の頂上にフランス国旗を掲げた。そんな彼のフランスとパリに対する貢献を記念し、パリの人々は塔の下にその半身銅像を造った。

もっとも輝きにみちた開会式——1962年アメリカ・シアトル万博

2000個の風船が大空に

当時の米大統領であるケネディは、開催の初日をフロリダで過ごしていた。しかし、そのこと自体は万博の開会式に影響することはなかった。開幕の初日、ケネディは金製の発信機のキーを押し、遠隔操作によって万博式典の開幕を宣した。その後、アメリカが生んだスターが次々に登場し、開会式は一層の盛り上がりを見せる。まずコメディアンのダニーが万博の主旨を説明し、そしてオペラ歌手のマリーがアメリカの国歌を歌った。また、ブロードウェイのスターのジョンが万博のテーマソングを熱唱した。最後に、334年もの歴史を持つスウェーデンの旧戦艦の大砲が礼砲21発を放ち、開会式の盛り上がりはクライマックスに達した。

開会式は午前中に開催され、会場から「シアトルで会おう」とプリントされた2000個のカラフルな風船が、538個の鐘、44個のスピーカーが配備された万博のシンボルとなった「ニードルタワー」の周囲に舞い上がった。また、スタントマンがニードルタワーとグラウンドの間に掛けられたケーブルをオートバイで渡るというデモンストレーションを披露し、空に放たれた風船が人々に向かって小さな旗を投げ、その光景に見学者は思い思いの万博を楽しんだ。

 

人民中国インターネット版 2010年5月10日

 

 
 
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