「両会」焦点の経済問題は?

 

2011年の「両会」(全国人民代表大会と全国政治協商会議)がまもなく開幕する。中国民主建国会の副主席を務める経済学者の辜勝阻氏はこのほど取材に応え、今回の両会の経済面での焦点について語った。「人民日報」海外版が伝えた。

辜氏は主に次のように述べた。

今年は第12次五カ年規画(2011-2015年 以下「十二・五」と略す)の幕開けの年であり、四大経済問題が両会の焦点になるという。四大経済問題とは▽所得分配のあり方を調整し、バランスが取れ、利益をともに享受できる経済成長を達成すること▽物価、不動産、コストの高騰という「三高」への対応▽求人難で迫られる発展モデルの転換▽公共関連製品の不足を解消して公共サービスの均質化を実現すること、などだ。

(1)分配の調整は最難関の攻略戦

所得分配制度の改革は「十二・五」における最難関の攻略戦であり、企業、政府、労働者の関係性にかかわるものでもある。現在みられる「GDP(国内総生産)が一歩進めば、財政収入は二歩進み、個人所得は半歩進む」という深刻な不均衡状態を改め、政府の減税政策や企業の利益分配を通じ、手を取り合って、所得分配の合理化を推進しなければならない。

具体的には、(1)経済発展のペースと個人所得に占める労働所得の割合の上昇ペースとの歩調を合わせ、政府、企業、個人の三者間の所得分配のあり方が、バランスの取れた発展を達成するようにする(2)所得格差を調節し、独占的業界の所得分配制度の改革を深化させる(3)政府と企業とが手を携えて所得倍増計画を推進し、都市部・農村部住民の財産性所得(資産性所得)の引き上げをはかる(4)社会保障、教育、医療など国民生活に関わる予算を増やし、企業と従業員の納入比率を引き下げ、利益を国民に分配し、富を国民に蓄えることを実現する(5)改革の目標を数量化し、所得分配制度改革のタイムテーブルを制定し、改革政策の執行力を高める--ことなどが必要だ。

(2)「中国医学」で「三高」を治療

 不動産価格の高騰、物価の高騰、コストの上昇という「三高」の問題を解決するには、「バランスの術」が必要であり、段階を追って徐々に治療を進める「中国医学」のやり方を見習い、政策をさまざまに組み合わせ、短期的な応急措置の実現と長期的なメカニズムの構築とを結びつけ、マクロ調整の有効性、柔軟性、的確性を強化する必要がある。

 具体的には、需給管理を強化し、市場における有効な供給の保障と不合理な需要の抑制とを同時に進める必要がある。不動産価格高騰の問題を解決するには、不動産調整政策の安定性を維持すると同時に、多層的な住宅供給システムを積極的にうち立て、多様なニーズに対応し、大軍が争って丸木橋をわたるような情況を改めなければならない。住宅は多層的な供給システムを形成する必要があり、多様化を通じて、さまざまな層の多様なニーズに対応しなくてはならない。また国内対策と対外的対策を同時に進め、流動性の回収や誘導を実体経済に結びつけて、過剰な流動性によるダメージを緩和しなくてはならない。

(3)求人難、市場は否応なく経済モデル転換へ

 求人難という発展の曲がり角に到達し、労働力コストが上昇したことが、中国の経済発展モデル転換の重要なエネルギーとなっている。ある資料によると、2010年に国内の多くの都市で最低賃金が引き上げられ、平均で22.8%増加した。ここから、中国の安価な労働力の時代はすでに終わりつつあり、長年にわたる安価な労働力に頼っていた経済発展モデルはもはや維持できなくなったことがわかる。

 具体的にいうと、戦略的な新興産業、サービス産業、インフラ産業の発展に力を入れて、新しい経済の成長源を育成するとともに、ローエンド産業のミドルエンド・ハイエンド産業への転換を達成させ、世界のバリューチェーンにおける競争力向上をはからなくてはならない。

(4)公共関連製品と公共サービスの改善で幸福感をアップ

 公共関連製品と公共サービスの不足という問題の有効な解決には、政府のモデル転換を待たなくてはならない。経済建設型の政府から公共サービス型の政府への転換を進め、基本的な公共関連製品と公共サービスの均質化を推し進め、国民の幸福感の向上を図らなくてはならない。民間資本が公共関連製品・公共サービスの分野に進出することを奨励し、誘導し、市場を通じて資源配分の効率を高めなければならない。

 今必要なことは、公共教育資源を合理的に配置し、国の教育予算の対GDP比を国民経済の発展や財政収入の増加に合わせて徐々に引き上げることや、政府の投資によって合理的なコスト分担メカニズムと利益補償メカニズムを構築し、基層の医療機関のサービス能力、サービス水準を高めることだ。社会保障では、カバー範囲が広いこと、基本を保障すること、多層的であること、持続可能であることを方針として堅持し、都市部・農村部の住民の社会保障システムの建設を加速推進することが必要だ。また引き続き住宅面での社会保障対策としての安居プロジェクトの建設を推進し、家賃の安い賃貸住宅や公共の賃貸住宅の発展をはかることも必要だ。

 

 「人民網日本語版」2011年2月23日

 

 

 
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