13億人の幸せのために

 

食の問題を解決した中国

穀物栽培の専業農家である郭全保さん(50)は、河南省偃師市岳灘鎮の干村で大規模な穀物生産に従事している。浅黒くつやつやした顔にはいつも微笑みが絶えない。郭さんが住む3階建ての家は、きれいで広く、室内の家具調度も都市の一般家庭と少しも変わらない。テレビ、冷蔵庫、コンピューターなどもそろっている。「家も家電もここ数年のうちに買い求めたものなんです。どれも食糧を売って得た収入で買ったものばかりです」と郭さんの奥さんが教えてくれた。

農業税廃止などの政策は、農民のいっそうのやる気をかき立てた
郭さん一家はもともと農民だったが、以前に、穀物栽培はコストが高くて割に合わないと思い、農業を見限って、村で鍛造工場を立ち上げた。大したもうけにはならないが、農作業をするよりはずっといいと考えたからだ。

2006年1月1日、国家は農業税を廃止し、さらに穀物栽培農家には直接の補助金や良種購入、農業機械購入のための補助金を交付するという政策を打ち出した。この政策を知った郭さんは農業に希望を見出し、その年、鍛造工場をたたみ、岳灘鎮の塔村で、ある植林公司から400ムー余り(1ムーは667平方メートル)の土地を請け負った。苗木を植え育てるのが仕事だが、郭さんは家族とともに苗木のうねの間に、冬小麦と大豆を間作した。一年後、郭さんの400ムー余りの土地からは20万キロ以上もの小麦が収穫できた。

ここ数年の収入について郭さんに聞くと、「現在、食糧の値上がりと各種の補助金のおかげで、純収入が大幅に増えましてね。そのうえ、農業税の廃止によって毎年の支出はさらに数千元も節約できるようになった。400ムー余りの土地に小麦を植えていますが、収入は14、5万元で、種の購入費や灌漑、化学肥料、人を雇った際の手間賃などにかかるコストを差し引いても、純収入が6、7万元もあります。小麦を刈り取ったあと植える大豆からの純収入も3、4万元に上る。毎年10万元ほどのもうけがあるんですよ」との答え。

この400ムー余りの土地を丹念に耕すため、郭さんは2008年に大型刈り取り機2台と東方紅80型トラクター二台を購入した。自分の土地を耕し、小麦を刈り取るほか、彼はこの刈り取り機を毎年河北省などの小麦栽培地に運び込んで、刈り取りを請け負っている。刈り取り機2台で純収入は毎年5万元にもなるという。2台のトラクターを使ってほかの農家の耕作も請け負い、こちらでも年に約2万元の収入がある。「今は請け負う土地が少ないことが残念でなりません。千ムーを請け負うことができれば、もっと満足なんですけれどね」と郭さん。

需要が供給を上回る───

「家に食べる食糧がある限り、安心していられる」というのが、中国人の古来からの重要な信条だ。しかし、新中国が成立した当初、食の問題は中国全土の共通した大きな問題だったのだ。

ブドウの収穫をする果樹栽培農民

1949年8月、当時の米国国務長官アチソンは『中国白書――米国の対華関係』の中で次のように述べた。「1949年以前、いずれの政府も中国人民の食の問題を解決することはできなかった。現にこの年、中国全土の食糧総生産量は1億1300万トンであるが、一人当たりにすれば、わずか209キロにすぎない」

新中国成立後、中国全土で土地改革が行われ、耕地を得たそれまで無耕地であるか耕地の少なかった農民のやる気が高まり、農業生産力は大いに解放された。四年間の努力を通じ、1953年には中国の食糧総生産量は1億6683万トンに達し、1936年の1億5千万トンの中国過去最高記録を更新した。1976年、中国の食糧総生産量は2億8631万トンを記録し、1949年の生産量の倍以上になった。しかし、食糧の生産量の増加は人口の急激な増加によって相殺されてしまったのだ。

衣食の問題を解決するために、中国共産党も中国の農民も活路を模索していた。1978年、安徽省の鳳陽県小崗村の18人の農民が、秘密裏に「生死契約」(生死をかけた契約)を結び、農地の各戸請負制を始めた。その後、安徽省の他、四川省、貴州省などの農村でも小崗村で行われたのと同じような改革が進められた。こうした農家各戸が生産高リンク請負責任制を行うことを、中央政府は直ちに認めた。

1980年代の前半、中国共産党中央委員会(中共中央)は年頭に発表し、その年の最重要課題を取り上げる「1号文件」に連続五年、農業経営改革に関する政策を取り上げ、農村での改革を強力に推し進めた。こうして生産高リンク請負責任制が中国の全土に瞬く間に広がったのだ。

生産・経営方式の転換は、農業生産に目覚ましい変化をもたらした。1984年、全国の食糧総生産量は一挙に4億トンを突破した。世界中が思いもしなかったことだが、この年、中国には食糧の供給が需要を上回るという局面が出現したのだった。

健康で文化的な生活を───

胡錦濤氏が中国共産党と国家の最高指導者に就任して以来、党と政府は食糧問題をさらに重視し、中国はすでに「工業が農業を支える」時代に入ったとの観点から、「都市と農村のことがらを統一的に計画し、都市が農村の発展を促す」というスローガンを提唱した。中央政府は、「三農」(農業・農村・農民)に対する投資を大幅に増やし、毎年三千億元以上を予算に組み入れた。「三農」関連の予算は2008年には、さらに8000億元以上に増加した。中共中央は相前後して六つの「1号文件」を公布し、農村改革を大いに推し進めてきた。

農民がより多くの穀物を生産するよう励ます目的から、中央政府は2006年、中国で2600年以上も存在し続けた農業税を廃止した。ここ数年、政府はまた各種の食糧生産補助金を交付することを決め、農民の穀物生産における意欲を大いに高めた。

農業部(省)が提供したデータによると、2008年の全国一人当たりの食糧保有量は404キロに達し、世界の平均レベルを超え、1949年に比べると倍近くの195キロも増加した。数十年の発展を経て、中国の食糧総生産量は世界一を誇るまでになった。13億人の食の問題をほぼ解決し、国内の食糧安全保障問題を解決しただけでなく、世界の食糧安全保障の促進に貢献するまでになっている。

食の問題が解決されただけでなく、人々の日常生活のさまざまな面で天地を覆すような大きな変化が起きた。街をちょっと歩いてみれば、マイカーがどれほど増えたかは一目瞭然だ。地味で色も限られていた服装も今ではすっかり変わり、若い世代を中心に人々は思い思いのファッションを楽しんでいる。住まいは、暗くて狭かった平屋から広くて明るいマンションになった。そして、人々は従来の衣食住という基本的な需要が満たされたことには満足できず、生活の質の向上に関心をはらうようになり、より健康で文化的なライフスタイルを追求するようになっている。

 

人民中国インターネット版 2011年7月

 

 

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