互恵互利が尽きぬ原動力

 唐首席委員の先ほどのご発言から、両国の経済、貿易関係の発展は中日関係で最も重要な成果の1つだと言えると思います。

魏委員、あなたのおられる中国遠洋運輸グループは中日間の経済、貿易往来に比較的早く加わった企業の1つで、中日の経済、貿易関係の発展を直に目撃してきただけにとどまらず、中日の経済、貿易関係に大きな貢献をされてきました。ご自身の経験から、中日の経済、貿易関係の発展について、どのように理解しておられますか。

 私自身が中遠グループで実際に体験したことを結びつけて、3点の認識をお話ししたいと思います。

その1。中国の大きな需要は日本の製造業に広大な市場を提供し、日本の先進技術が中国企業の産業アップグレードを促進しました。

魏家福

中遠グループが1978年以来、購入した日本製の中古船と新造船は200隻を超え、積載重量は1000万トン余、投資総額は50億ドル、そのうち2000年以降、日本での新造船舶は36隻、投資総額はほぼ13億ドルでした。日本の造船企業は中遠グループのような顧客に心から感謝しており、2001年、私の率いた代表団が訪日した際にも、大島造船所の熱い歓迎を受けました。大島造船所の従業員とその家族は沿道の両側で両国国旗を振って歓迎してくれました。昼食の時、同社の管理職が中遠グループの歌を合唱し、われわれを大いに感激させ、このことは中遠代表団に深い印象を残しました。

中遠グループの造船業務を発展させるために、1997年、中遠は日本の川崎重工との合弁造船企業として南通中遠川崎船舶工程有限公司を設立しました。この造船所は日本の技術、設計、マネジメントのノウハウを利用し、ハイテク船舶建造、鋼板使用効率、引渡し時間遵守率の面でも中国の造船企業をリードし、多項目の主要な指標は国際的に一流であることを示しています。これはわれわれが日本の造船技術とマネジメントのノウハウを利用し、中遠の造船業を発展させ、産業アップグレードを実現した典型的な例です。

その2。中国の豊富な労働力を日本の産業移転のための支えとして提供し、日本の企業マネジメントの成功体験が中国企業を強化する上で、有力な手本となりました。

大まかな統計によると、2011年末の時点で、日本の対中投資は803億1700万ドルに達し、投資プロジェクトは4万件を超えました。パナソニック、トヨタ、ソニーなどを含む日本の大手企業はすべて中国に出先機関を持っています。中国の豊富な労働力は日本産業の中国移転を可能にし、また中国の労働力コストが相対的に低いことが日本の在中企業の国際競争力を強化しています。

日本企業の在中投資の開拓、発展にともなって、日本企業の先進的なマネジメントのノウハウと、トヨタのムダを省き改善する「精益管理」は中国企業が研究、学習すべき重要なコンテンツになっており、中遠グループも「精益管理」の理念を積極的に運用しています。

その3。中国企業と日本企業の業務での協力は相互理解を深めました。日本各界は中国企業の日本における発展に貴重な支援を提供しています。

中遠グループは川崎汽船と長らくパートナー関係にあります。2009年、世界的に定期船業が低迷していた時、中遠は青島で開催された国際海運年次大会で「定期船減速」という計画を発表しました。市場における輸送力過剰の解消を実現し、省エネと排出炭酸ガス削減の目標を達成するためです。同計画について川崎汽船はただちに賛同を示しました。長い間に、中遠は日本の船会社と相互信頼と相互理解に基づく協力の基礎を築いてきました。

中遠グループは日本にも子会社を持ち、われわれは日本各界の援助と支持を得ていますし、日本人スタッフの愛社精神とプロ意識には大いに感心させられます。

 ありがとうございました。中遠グループと日本側との具体的な協力事業や自らの体験を踏まえた感想を通じて、中日の経済、貿易関係が双方にメリットと利益をもたらしていることが分かりました。さて、時代の進展にともなって、また新しい歴史的時代を前に、中日経済、貿易協力の分野でどのような新たなコンテンツがあり、それらはわれわれの期待に沿うものでしょうか。

 グリーン・エコノミーの発展は、世界の経済発展の潮流に合致し、また中日両国の未来の経済発展が主に目指す方向でもあります。中国は「第12次5カ年規画」の中で、大いに循環経済を発展させ、低炭素経済を推進し、持続可能な発展の道を歩むことを提起しました。日本もまたグリーンの循環経済と、被災地の再建を今後10年の経済成長戦略の重要な内容としています。中日両国の発展戦略には共通点があるのです。日本はこの面で、先進的な技術と成熟した経験をもっており、中国には広い市場があります。

唐家璇

2015年までに、中国の省エネ・環境保護産業は、生産総額が4兆5000億元に達する見込みです。環境対策に関する中国の旺盛な需要は、中日がその関連する分野で協力を展開するのに大きなビジネスチャンスを提供するでしょう。双方は完全に、それぞれの優位を互いに補完し、相互利益と「ウイン・ウイン」を図ることができます。双方は中日省エネ・環境保護総合フォーラムやグリーン博覧会などの舞台をうまく利用するとともに、大きな協力プロジェクトを積極的につくらなければなりません。

この2年来、唐山曹妃甸中日エコ工業パークと中日連雲港生態科学技術産業パークという2つのプロジェクトが両国の関心を集めました。私は日本経団連の御手洗冨士夫前会長と米倉弘昌現会長に同行して曹妃甸を視察しましたが、当地の立地条件は非常に優れ、前途有望であると深く感じました。日本の企業について言えば、最近、1人の友人が私に、日本企業が広東と湖北で、中日両国で新エネルギー自動車の協力を展開しようとしていると語り、これに私は大いに啓発されました。中国はすでに世界最大の自動車生産・販売国となり、日本は世界屈指の自動車産業強国です。両国が新エネルギー自動車で協力することは、時宜にかなったものであり、前途は無限に広がっています。この話を通じて、私はまた、中日両国はグリーン・エコノミーの面で大きく協力できる潜在能力があり、分野が広いので、協力できる事柄は多いと考えました

 周知のように、中日経済貿易の往来は、両国関係の基礎を固め、発展を推進する上で、重要な役割を果たしました。唐首席委員におうかがいしますが、今後、中日経済貿易関係は両国の政治的相互信頼の分野でどのようなより大きな役割を果すのでしょうか。

 中国の改革開放は30数年来、注目すべき発展の成果を勝ち得ました。日本は中国の改革開放の重要な参加者であり、主要な受益者でもあります。中国の改革開放後、日本政府が中国側に政府開発援助(ODA)の借款を提供し、われわれの当時のインフラ建設に重要な役割を果たしました。このことを中国側は忘れることはできません。今日、中国は、日本の最大の貿易相手国であり、対中貿易は日本の輸出入総額の20%以上を占めています。多くの日本の経済人は、対中経済貿易はすでに日本経済回復の重要な推進力になっていると強調しています。

1985年12月15日、円借款を一部利用した北京―秦皇島複線電化鉄道が開通した。写真は作業車を使って、架線を点検する作業員(新華社)

将来を展望すれば、中国の社会と経済は引き続き安定的で、比較的速い発展を保つでしょう。中国が現在実施している「第12次5カ年規画」では、これからの5年で、輸出入の規模は8兆ドルを超す見込みです。2015年には、中国社会の消費財市場の規模は5兆ドルに近づき、これは、日本を含む国際社会に巨大なビジネスチャンスをもたらし、中日関係にも絶えることのない原動力を提供することになるでしょう。

 ただいま言及されたように中国の発展は日本に巨大なビジネスチャンスを創出しましたが、逆に、日本は発展中の中国に何をもたらすでしょうか。

 日本は戦後、平和的発展の道を歩み、1950年代初め、「軽軍備、経済重視」の国家発展戦略を確立し、これによって日本は急速に経済を飛躍させ、巨大な発展を成し遂げ、アジアの発展と繁栄をももたらしました。長期間、日本経済は安定的で急速な成長を保ち、1990年代以後、いわゆる「失われた20年」を経たにもかかわらず、日本の経済と社会の発展は、「泥沼に陥った」わけではなく、かえって経済の動き全体は依然として比較的平穏で、全国の社会秩序は安定し、調和がとれており、都市と農村は比較的バランスが取れた発展を保ち、貧富の格差は比較的小さいのです。

昨年3月11日の東日本大震災後、世界には、日本はすでに大きなダメージを受け、再起は難しいという見方が出ましたが、私はそうとは思いません。地震から1年が過ぎ、日本は被災後の再建がすでに重要な進展を見せ、経済は復活を呈し、社会は安定を保ち、強い自己復元能力を示しています。私は日本が長年蓄積してきた経済的・科学技術的な実力と民衆の堅忍不抜の意志に依拠し、その上、国際社会の支持と支援を加えれば、必ず困難を克服し、被災地の再建と経済の振興、発展を実現すると信じています。

2010年の上海万博における、旧江南造船所跡の巨大産業遺産を再利用した日本産業館(写真・馮進)

国交正常化から40年、とくに中国の改革開放から30数年、日本は資金、技術その他の多くの分野で中国に貴重な支援を提供してきました。現在、日本が中国に設立した企業は2万社を超え、対中投資プロジェクトの累計は4万5000件を超え、投資金額は800億ドルに達し、毎年、中国を訪れる日本の観光客は延べ400万人に近いのです。こうしたことは両国にも、重要な利益をもたらしています。現在、日本は中国の貿易パートナーとしては4番目であり、外資の供給源としては3番目、海外から来る観光客の数では2番目の国です。日本の繁栄と発展は、中国の発展にとって積極的な促進効果をもっていると言えるでしょう。

現在、中国経済のグロスはすでに日本を超え、中国に対する日本の重要性は下降しつつあるという人がいます。われわれは、中国の人口は日本の10倍を超えていることを意識しなければなりません。ということは中国の国民1人当たりの国内総生産(GDP)は日本の10分の1だということです。このほか、日本は、工業の製造水準やマネジメント、金融、教育、科学技術、生態系・環境保護、国民の資質などの面で依然、中国の先を行っており、中国が全面的に日本に追い付き、追い越すにはなお長い道のりを歩まなければなりません。従って、われわれは、中国の発展の前途に確信を持つのみならず、中国の経済、社会の発展水準には日本となおかなり大きな差があることを認識しなければならず、長期にわたって虚心に日本の長所と経験を参考にする必要があるのです。

 

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