どのように各民族を協和させてきたか?

 

中国共産党中央党校党史研究室教授 謝春濤 氏

謝春濤(しゃしゅんとう)
1963年2月生まれ。山東省臨沭県出身。1988年から中国共産党中央党校で党史と理論の教育、研究に従事している。現在、同校党史研究部副主任、教授、博士課程指導教官。浙江省金華市副市長を兼任。主な編著に『中国の特色ある社会主義史』『転換する中国-1976-1982』『歴史的軌跡 中国共産党はなぜできるのか?』など。
民族問題と宗教問題は国際政治における二大難点、論点である。多民族と多宗教が併存している中国で、中国共産党はどのようにして、民族の団結、宗教間の調和、社会の安定、国家統一を成し遂げてきたのだろうか?

歴史と現実の両方を尊重

中国は各民族が共同で創建した多民族統一国である。中国には56民族が居住し、そのうち漢族が91.51%を占め、ほかの55民族の人口が漢族に比べて少ないことから、習慣的に「少数民族」と呼ばれている。長い長い歴史の流れの中で、各民族は密接に往来し、交流融合、相互依存しながら、中華民族という多元的で一体的な構造をつくりあげてきた。

秦(紀元前221~同206年)が多民族統一国家の基本的な構造を創始して以来、国家として、統一的な構造を維持しつつ、しかも絶えず発展、強化されてきた。「中央集権の統一国家」の長期的な存続は、各民族間の経済、文化、政治的な交流を最大限に促進し、各民族間の相互依存関係を強化し、強大な団結力と求心力を形成した。孫文がかつて指摘したように、「中国がひとつの統一国家だというこの一点は、すでにわが国の歴史意識にしっかり刻印されており、まさにこの意識によって、われわれは中国を一つの国家として存続させていくことができる」

中国共産党が誕生した時、初めての綱領で明確に次のように規定した。「民族を問わず、等しく党員として受け入れるべきである」。これは、中国共産党の神聖な使命が、各民族を団結させ、共同で奮闘し、中華民族全体の利益を図ることにあることを表明している。

「歴史上前例のない試み」

1949年、新中国の準備段階で、一つの際立った問題が中国共産党中央委員会の眼前に突き付けられた。それは、どのような国家構造を採用すれば、国内の民族問題を長期的かつ有効に解決できるかということだった。中国共産党は最終的に民族区域自治制度を創造的に確立し、新中国を多民族による統一的なひとつの人民共和国と確定した。周恩来総理はこれを「史上前例のない試み」と、称した。

それから、民族区域自治制度は中国が民族問題を解決する基本的な政策となり、また中国の基本的な政治制度の一つともなり、しかも絶えず整備され、発展してきた。1955年10月、新疆ウイグル自治区が成立し、続いて、1958年3月に広西チワン族自治区、同年10月に寧夏回族自治区、1965年9月にチベット自治区が成立した。2008年末現在で、五つの民族自治区、30の民族自治州、120の民族自治県(旗)を設立した。民族自治区域の面積は全国土の64%に達している。

中国の民族区域自治制度とは、国家の統一的な指導の下で、各少数民族の居住区域で自治を行い、自治機関を設立し、自治権を行使するということを指している。60数年を経て、中国経済社会の発展が実践的に証明しているように、この制度は、歴史を尊重し、国情に合致した中国共産党の的確な選択だった。

進歩的な民族政策が奏功

米国の有名な未来学者であるジョン・ネイスビッツは自著『中国のメガトレンド―新社会の八大支柱』の中でこう書いている。「1959年、封建農奴制統治下のチベットでは、チベット族人口は百万人をわずかに超える程度だったが、今では400万人以上に増加している。1950年以前、チベット族の平均寿命はわずか36歳だったが、65歳になっている。また、チベット族全員が教育を受けることができるようになった。全国人民代表大会(全人代)もチベット族に一定の議席を留保している」

チベットの変遷は中国少数民族地区の変化の縮図だと言える。統計によると、2008年末現在で、全国の各行政クラス、それぞれの少数民族の就学児童生徒数は2200万人に近づき、少数民族出身の幹部は290万人以上に達している。また、少数民族地区の経済総量は1952年の57億9千万元から3兆元以上に増え、貧困人口は1985年の4千万人余から770万人に減った。進歩的な民族政策によって、各民族人民は自由平等、協和共存、共同発展を享受している。

宗教に向き合う無神論者

新中国成立後、唯物論的なマルクス主義が中国社会の主流のイデオロギーとなった。執政党としての中国共産党は、行政命令によって宗教を消滅させたことはなく、全国的に宗教信仰の自由を推進した。毛沢東は「共産党は宗教に対し保護政策をとる」と、明確に述べた。

1982年、中国共産党中央委員会が発表した文書で、宗教が社会主義社会で長期的に合法的な存在だと認め、「真摯に宗教の信仰自由政策を貫徹しなければならない」と強調した。中国共産党第16回全国代表大会(党大会)で、党の宗教に関する方針を正式に打ち出し、全面的に信仰自由政策を貫徹し、法に基づき宗教事務を管理し、自主独立、自己運営の原則を堅持し、宗教が社会主義に相応しいように積極的に導く、と明記した。さらに第17回党大会で、改定された党規約にこの方針を盛り込んだ。

党の宗教方針の指導の下で、現在、中国で宗教を信仰する人口は一億人余、宗教関係職員は約36万人、宗教関連施設は約13万カ所、宗教団体は5500近く、宗教学校は110校余となっている。また、各宗教は大量の経典、書籍を出版している。

 

人民中国インターネット版 2012年9月4日

 

 

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